北極に行ったことがある人はいますか?

このブログを読んでくださっている方のほとんどは、実際に北極を訪問したことはないのではないかと思います。

北極圏なら、旅行などで行かれたことがあるという方はいらっしゃるかもしれません。

いずれにせよ、ふだんわたしたちが暮らしているところからはちょっと遠いところです。

遠いけれど、シベリアやアラスカ、グリーンランド、アイスランドや北欧の北極圏には長い歴史を持つ先住民が住み、ホッキョクグマやホッキョクギツネ、トナカイ、セイウチ、イッカク、ベルーガ(シロイルカ)といった希少な生きものたちが暮らす場所です。

絶滅が危惧されているホッキョクグマ

その北極に、グリーンピースは定期的に活動船を派遣し、世界中の科学者たちといっしょに海氷の状態を詳しく調べる調査活動をしています。

調査の結果、北極を覆っている海氷は面積も厚さも、過去数十年にわたって一貫して縮小していることがわかっています。

原因は気候変動による地球温暖化です。

海は大気からより多くの熱を吸収し、地球の気温を調整する役目を果たしています。北極の海氷は太陽光を反射することで海水が太陽光の熱を吸収することを防ぐ役割ももっています。

遠い北極で起きていることは、わたしたち日本や世界中に暮らす人や生きものの未来に深く関わっているのです。

これから北極はどうなるの?

北極では、他の地域の倍のスピードで温暖化が進行しています。北極海の海氷はこれまで以上に早く、広範囲にわたって溶けています。汎北極氷海モデリングおよび同化システム(PIOMAS)によると、2017年8月の氷の量は、最大だった1979年の8月の氷の量を70%も下回りました。冬に再び凍る海氷も、少なくなっています。

2012年の調査の様子

このままでは、2030年代には北極にまったく氷がない夏が到来する可能性さえ指摘されています。

そうなれば、この地域の生態系が大きく破壊されてしまうかもしれません。たとえば、一生のほとんどを海氷の上で過ごすホッキョクグマは、餌を獲る場所も子育てをする場所も失うことになります。

北極海の海氷は長い間、人間の産業開発から北極海を守ってきましたが、海氷が小さくなるにつれ、海底資源の採掘や漁業などの乱開発の危機にもさらされています。

気象条件の厳しいこの地域でいったん事故が起これば、その被害による環境破壊はより過酷なものになる危険性が大きくなります。

いま、できること

世界海洋条約ができれば、人間の乱開発から北極をまもることができるようになります。

地球上のどこにも見られない希少な生きものたちのすみかであるにもかかわらず、北極海にはいま、海洋保護区がありません。

ノルウェー・スヴァールバルの海氷の下を泳ぐベルーガの群れ

北極海を含め、海の3分の1を海洋保護区にできれば、海洋生態系の自然な回復を手助けすることもできます。

北極圏に住む生きものや、先住民の人々はすでに、気候変動の影響を受けています。

これ以上の被害をくいとめ、気候危機にさらされるわたしたち自身の未来をまもるためには、世界中のリーダーに行動してもらう必要があります。

それにはまず、わたしたちの声を彼らに届けなくてはなりません。

シベリア・ヌムト湖周辺の先住民族

世界のリーダーがやるべきこと

新型コロナウイルスの大流行により複数の政治会合が延期されましたが、今年の9月30日に開催が予定されている国連生物多様性サミットは、世界のリーダーが自然界が直面している危機のために集まる絶好の機会です。サミットのテーマは「持続可能な開発のための生物多様性への緊急行動」で、2021年に行われる海洋、自然、気候に関する大規模な国際交渉に向け、目標を高める重要な会合です。

国連の報告によると、100万種もの生物が絶滅の危機にあります。地球の生命維持システムが直面している課題の規模と緊急性に見合った行動を実現するためには、よりハイレベルな政治的行動が必要です。海洋、自然、気候に関する主要な国際交渉が来年に延期された今年、この国連サミットではこんな行動を約束してもらう必要があります。

1.  2030年までに世界の海洋の少なくとも3分の1を保護できる世界海洋条約を設立すること

2.  来年に延期になった生物多様性条約COP15(中国・昆明)において、野心的で実施可能な自然の回復計画に同意すること

3.  来年に延期になった国連気候変動会議COP26(英国・グラスゴー)で、気候の緊急事態に取り組む意欲を協調し高めること

アメリカ・アラスカの海氷

グリーンピース といっしょに行動しましょう

グリーンピースはこれまでにも、地球上で起こるあらゆる環境破壊を解決するために行動を続けてきました。

たとえば2015年には多国籍企業ロイヤル・ダッチ・シェルの北極圏での油田調査事業を中止させることに成功しました。この中止によって同社はおよそ8400億円の損害を被ったとされています。

こうした成果は、グリーンピースといっしょに声を上げ、行動してくれた世界中の数百万人の力の賜物です。

まっさきに気候変動の影響を受けるのはいつも、罪のない生きものたちや、辺境に暮らす先住民など、エネルギーの大量消費とは無縁の存在です。

そんな時代を終わらせるために、いま、できることから始めましょう。

グリーンピースは北極から、調査活動の最新情報をお伝えしていきます。