署名提出に臨むグリーンピーススタッフとコープ自然派事業連合
副理事長の辰巳千嘉子氏(2019年8月23日 農林水産省前)

 

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日8月23日、米の等級に関わる着色粒(斑点米)の規程など、農薬の過剰使用につながる現行の制度を見直すよう求める政策統括官あての署名1万9326筆を、生活協同組合連合会 コープ自然派事業連合、米の検査規格の見直しを求める会、生き物共生農業を進める会とともに農林水産省の穀物課に提出しました。また同日、斑点米についての消費者1200人にアンケート結果を発表し、消費者ニーズと現行の米の規格がずれていることを指摘しました(注1)。

 

■署名:1万9326人の声
本署名は2018年10月30日に開始し、8月22日までに1万9326筆が集まりました。参加者の意見には「子供たちのために見直しをお願いします」「欧米で厳しく制限されている農薬が日本では野放しなのは理が通りません」などがあり、制度の見直しを求める消費者、農家双方の声が見受けられました。(注2)

 

■アンケート結果:消費者ニーズと現行の米の規格にずれ
・農薬(殺虫剤)等を使ってでも斑点米を除去してほしい人は、わずか1割未満だった

・米の等級は外見の検査で決まるが、回答者の65%以上が米の等級は「食味(おいしさ)の目安」だと思うと答え、等級の意味が消費者に正確に理解されていないことが明らかになった

・購入時に1番米に求めるのは「おいしさ」であり、外見で決まる現行の米の等級と消費者の理解やニーズにずれあるがことがわかった

・消費者は斑点米よりも虫や異物混入のほうが困ると答えており、異物より2倍も厳しい斑点米の基準が消費者ニーズとかけ離れていることが明らかになった

・斑点米除去のための農薬を使わない方向を望む農家に対して好意的な意見が多く、さらに、一等米も二等米も混ぜられて消費者に販売されていることを知ったあとでは、等級制度の廃止や緩和に賛成の人は65%にのぼった

 

 

グリーンピースの食と農業担当 関根彩子
「農水省のこれまでの会議では(注3)、消費者や農家の声を反映した議論がなされてきたとはいえません。今後開催される検討会においては、消費者、農家の意見をより丁寧に聞きとり、見直しに反映させることがまず必要です。ネオニコチノイド系農薬は斑点米除去にも使われ、欧州では使用がほぼ全面禁止された農薬です。斑点米を防ぐことよりも農薬を散布しない方がよいとする消費者が多いことを踏まえ、農家が農薬を使わない選択をしやすい制度設計をすべきです」

 

コープ自然派事業連合 副理事長 辰巳千嘉子氏

消費者はネオニコを口にしたくないと思っています。コープ自然派では、カタログにネオニコ不使用・排除中のマークを表示すると、97%もの人がマーク付きの農産物を選んでいます。斑点米対策に使われるネオニコチノイド系農薬については、子どもの脳・神経の発達への影響や胎児への移行が明らかになっています(注4)。子どもたちを守るためにも、健康問題を真摯に考えた農薬規制を望みます



秋田県大潟村の米農家 今野茂樹氏

「現行の農産物検査法の目的を農産物の安全性の向上を図ることに変え、等級制や着色粒規定を廃止するなど、抜本的な見直しが必要と考えています。今回の見直しで着色粒の問題が解消されなければ、今後も長ければ数十年間、日本の水田で無駄な殺虫剤散布が続く可能性があります」

 

 今回の署名提出と調査の目的は、農産物検査や規格を見直す検討会が早ければ8月中にも始まるのに先立ち、これまで十分汲み取られてこなかった消費者や生産者の声を重視した検討を行うよう促すことです。

 

 

注1)アンケート結果
グリーンピースが楽天インサイト株式会社に委託して実施したオンラインアンケート調査
調査期間:2019年3月25日〜27日
回答者:1200人(国内在住の20代〜70代以上各年代の男女各100人)

注2)署名「お米にムダに農薬を使わせる制度を見直してください」

注3)農林水産省農産物規格・検査に関する懇談会 農産物規格・検査に関する懇談会における中間論点整理 (2019年3月)

 注4)ネオニコ、母親から胎児に移行:研究者が初の実証(報道)