気象予報士の太田絢子さん
2100年には、最高気温が40℃に達する日が全国で増加するーー。このまま温暖化が進めば、日中は外に出られないような夏休みがやってくるかもしれません。

気象予報士の太田絢子さんは、一児の母。妊娠している時から、子どもが大きくなったときにはどんな地球環境になっているんだろうという懸念があったと言います。

取り返しのつかない気候変動を抑えるためには、2030年までに温室効果ガスを半減させなければなりません。太田さんは、気象予報士として気象災害で亡くなる人がゼロになるように気象情報を発信しながら、温暖化を食い止めるためにできることはたくさんあると希望のメッセージを届けています。

太田絢子さん/気象予報士・一児の母

中学生のころから気象に興味をもち、大学在学中に気象予報士試験に合格。卒業後は損害保険会社に就職し、交通事故や自然災害に遭った人へのサービス業務に従事。自然災害が多発するなかで、災害の被害に遭う人をゼロにしたいと思うようになり、気象キャスターへ転身。地元東海地方で活動中。

気象予報士の太田絢子さん

40℃を超える猛暑日が続出する恐れ

最高気温が35℃以上の日を猛暑日と言いますが、猛暑日の頻度は、昔と比べて増えている傾向にあります。猛暑日が増えているのは、やはり地球温暖化の影響が大きいと考えられます。

地球温暖化は、私たちが生活する上で、自動車や飛行機を動かすときなどに排出される、二酸化炭素などの温室効果ガスが原因とされています。

このまま何も対策をせずに温暖化が進んでいくと、2100年には、猛暑日どころか最高気温が40℃を超える日が全国で増えると考えられています。そうなると夏に外に出ること自体も難しくなってしまいます。

さらに海面水温の上昇で、日本に毎年のように猛烈な台風が接近するという予測も出ています。また農作物が育ちにくくなったり、私たちが普段食べている魚介類も獲れなくなったりする可能性があるので、食卓への影響も大きいと感じています。

逃げ遅れる人がいない社会を作りたい

気象予報士を目指したきっかけは、中学生の時に授業で、前線によって雨の降り方が異なることを勉強したことです。

温暖前線ではシトシトと雨が降って、寒冷前線では土砂降りの雨が降るんですが、その仕組みの違いがわかった時に、天気っておもしろいなと思ったんです。

気象予報士の太田絢子さん

今では、気象災害によって亡くなる人をゼロにしていきたいなと思っています。

私が住んでいる東海地方は、北西からの風が入るとフェーン現象によって気温が上がりやすくなり、年によっては40℃以上を観測する年もあるので、かなり暑さは厳しい地域だと思います。

大雨の頻度も過去に比べると増えていて、毎年のように全国のどこかの地域で観測史上1位の雨を観測しています。一人ひとりが気象災害に対して当事者意識を持って、気象庁や自治体から発信される情報を使いこなして、逃げ遅れる人がいない社会を目指していきたいです。

気候変動で激化する豪雨・台風の被害
2020年に豪雨の被害を受けた熊本県人吉市。九州を中心に、東北地方まで、広く記録的な大雨となり、「令和2年7月豪雨」と名付けられた(2020年7月)

「子どもが大きくなったらどんな環境になっているんだろう」

子どもはまだゼロ歳ですが(2022年8月取材時)、妊娠している時から、子どもが大きくなったときにはどんな地球環境になっているんだろうという懸念はありました。

猛暑日や、大雨の頻度も増えているので、安心安全に暮らせる場所がどれくらい残っているんだろうという心配はありますね。

学校に行くようになったら、周りの友達や先生と気候変動について意見を出し合うことも大切だと感じていて、考えを共有したり、学校の先生にも意見を言ったりすることで、学校での環境への取り組みをより進めることにつながるのではないかと期待しています。

私たちが温暖化を止められる最後の世代

二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを自宅に導入したり、車をEV(電気自動車)にかえたりするなど、私たちにできることはたくさんあります。

また二酸化炭素など温室効果ガスの排出の多くは企業活動によるものです。現在、便利な生活を享受していますが、二酸化炭素を出さない、もしくはカーボンニュートラルな製品づくりや、リモートワークの積極的導入など、社会全体にも変化が求められています。

そして、私たち消費者は環境に関心がある人ばかりではないので、関心がない人でも環境にやさしい商品を自然と手に取れるような政策や商品の普及を進めていただければなと思います。例えば電球は、今ではLED電球が(店頭に)ずらっと並ぶようになっていますよね。

地球温暖化を食い止めるには、私たちの世代が最後のチャンスなのかなと思います。普段生活する中で、一つひとつの行動が環境にどのような影響があるのかを今一度考えて、日々の行動を選択していきたいです。(了)

気象予報士の太田絢子さん

猛暑・豪雨の被害を最小限にするために

気象予報士として、猛暑・豪雨で被害を受ける人を1人でも減らすために気象情報の発信を続ける太田さんのメッセージ、みなさんはどう感じましたか?

IPCCは、取り返しのつかない気候危機を抑えるために、2030年までに温室効果ガスを半減させなければならないと警告しています。

各産業で脱炭素化を進める中、重視されているのは温室効果ガス排出の1/4に責任がある交通・運輸分野、特にガソリン車です。IPCCは、2035年までにはガソリン車の製造・販売をやめ、新車販売は100%、ゼロエミッションの電気自動車にしなければならないとしています。

グリーンピースは、55の国と地域で活動する国際的なネットワークを活かして、日本・韓国・ドイツなど、世界の主要な自動車メーカーを有する国と地域を中心に、電気自動車へのシフトを加速させる活動を展開しています。みなさんも、自動車メーカーに一緒に声を届けませんか?

ゼロエミッションの
交通手段を選んで、
日本の脱炭素を加速させよう!