今年は、ヨーロッパやここ日本での熱波から、パキスタンでの洪水まで、気候危機の最悪の出来事がいくつか見られました。 私たちは気候を守るために二酸化炭素排出量を早急に削減しなければなりません。

2022年8月ソウルの漢江のそばでは、豪雨の影響で公園や道路が水浸しになっている

二酸化炭素排出量中、世界全体で約20%、日本でも17%(環境省2020年度データ)を占める交通部門の早期脱炭素化は、2050カーボンニュートラルの達成と平均気温1.5度上昇未満に抑えるために必要不可欠です。

温暖化を1.5度上昇未満に抑えるためには、交通システム及びまちのあり方自体の変革が必要であり、車を使わなくても過ごせる社会への移行が求められます。

しかし、それはそれで進めながら、まず2030年時点での排出量を抑制するためにも、現在、交通部門排出量の9割を占める自動車の脱炭素化は急務であり、日本の電気自動車(EV)化を少しでも加速させることが重要です。

プリウスに代表されるように、一時は自動車の効率化と環境負荷低減をリードした日本の自動車産業は、(バッテリー式)電動自動車(BEV)を世界に先駆けて販売したにもかかわらず、現在急成長しているEV市場では存在感はなく、欧米諸国や、中国、韓国に大幅に遅れています。

EV化に遅れることは気候変動対策を遅らせることとなるばかりでなく、世界のEV化に対応できないことで、日本の自動車産業にもマイナスとなります。

日本はゼロエミッション車市場の規模が自動車市場全体の1%と他の先進国に比べて遅れが目立っています
出典:国際クリーン交通委員会 ICCT (The International Council on Clean Transportation) ※1

迅速かつ公正な移行は、日本経済にも人々の生活にもプラスの影響を与えます。グリーンピース・ジャパンが、イギリスの研究機関ケンブリッジ・エコノメトリクスと共同研究・発表した「日本の乗用車の脱炭素化によるマクロ経済および環境への影響」では、2030年までにガソリン車からBEVへ移行すると、2030年までに2.9万人の雇用増、GDPにもプラスの影響と出ています。

ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づくと、現在の電源構成でもガEVの総合排出量がソリン車よりも低く、再生可能エネルギーを導入すればするほど排出量がさらに低くなります。だからこそ、再エネの拡大に合わせて今EVへの置き換えを進めることが重要です

10月末目処に終了見込みとなっている、経済産業省管轄のクリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金(375.0億円)、及びクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(155.0億円)※2は、これまで新車販売台数1%しか占めなかった電気自動車の販売を急成長させるのに重要な役割を果たしました。7月の国内のプラグイン車シェアは3.6%、販売台数1万台を突破しました。そのうちBEVは、2.1%とすでにPHEVを超えています。

技術の社会的受容が大きく進む5%まではあと少しです。現時点での補助金の停止は、国内自動車産業のEV化を支えるのに欠かせない、芽が出てきた国内EV市場の成長を鈍化させ、世界で競争していくためのチャンスを逃すこととなります。

補助金の枯渇がアナウンスされて以来、すでに販売現場では混乱が生じており、EV販売に翳りが出ています※3。早期に補正予算手当をアナウンスするとともに、金額を上乗せし、電気自動車への乗り換え促進を図る必要があります。

政府が掲げる2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%とする目標の達成、さらにはその前倒し達成を追求することは、気温上昇1.5度未満を目指し、自動車関連産業に関わる人々の暮らしを守るために必要です。そのためにも、昨年に補正予算において、クリーンエネルギー車導入促進補助金を延長したように、秋の臨時国会において出される補正予算において再手当することを求めます。

[要望書]

補助金の延長においては、以下の点について考慮する必要があります。

  • ゼロエミッション車とゼロエミッションではない車両とは分類を別にし、ZEV、特にBEVについては配分を大きくすること。
  • クリーンディーゼルの除外:令和3年の補助金では対象ではなかったクリーンディーゼル車は次の補助金においては除外すべきこと。
  • 現在個人向けの充電器導入は認められていないが、家庭における普通充電が電気自動車運用の基本となる。家庭用普通充電器自体はそれほど高額ではないため、戸建住宅に住んでいる購入者向けには充電器の購入を義務とし、車両購入と同程度もしくはそれ以上に割合で補助金を交付すること。
  • 高度な安全運転支援技術を備えた車両の上乗せ支援については、より安全性の高い車両が一般化すべきという観点から、継続すること。

そもそも現在のガソリン車普及に至っては相当程度の税金が投入されていたこと、そして今でもガソリンへの控除という形で実際の価格よりも低い価格で乗れていることを忘れてはいけません。特に価格の高騰した今年は9月末までに1兆9000億円、1日100億円近くを投入してガソリン車社会を維持しています。この多くが、産油国に流れています。この金額を国内の再エネ普及や充電網の整備、バスなどのEV化に投じることができれば、交通部門からの排出量を相当程度抑えられます。

イノベーター理論によれば、新しい技術を需要する人たちについて、最初の2.5%をイノベーター、次の13.5%をアーリーアドプターと呼びます※4。ブルームバーグによれば※5、ノルウェーなどのEV先進国の軌跡から、新車シェア5%を超えると社会が変わるといいます。私たちは、電気自動車が大きく社会を変え、当たり前となる年間新車販売割合16%までは最低でも、補助金を維持し、段階的にガソリン車への総合的な補助を減らすべきだと考えています。

ただし、グリーンピース・ジャパンは、全ての車を電気自動車に置き換えるべきと思っているわけではありません。必要なのは全ての人の移動のニーズを満たす、排出量ゼロの交通網です。そのためにはバスや一部まだ稼働しているディーゼル列車の電動化と、公共交通網を充実させることが必要だと考えています。

以上を踏まえ、グリーンピース・ジャパンでは、以下の要望書の内容を経済産業省に求めていくと同時に、本補助金継続に関わる関係者に対し要望活動を行います。

要望書の内容はこちら>

*1 THE G7 GETS SERIOUS ABOUT DECARBONIZING ROAD TRANSPORTATION
*2 一般社団法人次世代自動車振興センター「電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池自動車等の導入補助事業の予算残高と申請受付終了見込み時期について」
*3 Best car web: 10月中旬に枯渇すると発表されたCEV補助金! 早くも販売現場は大混乱 昨年のように受け取れない「魔の空白」はあるのか?
*4 東大IPC: イノベーター理論をわかりやすく解説!【事例あり】
*5 Bloomberg: US Crosses the Electric-Car Tipping Point for Mass Adoption

電気自動車購入への
補助金の継続を求めます!
日本の脱炭素を加速させよう!