ナミビアが1990年に独立を宣言したとき、アフリカ大陸の植民地支配は正式な終わりを迎えました。しかし、現在までの数十年間にわたり、アフリカ諸国では植民地支配をしていた旧宗主国との間での搾取的な関係が、今なお継続しています。

その1つが「プラスチックごみ」を巡ってというのは、21世紀の悲しい現実です。

南アフリカ・ヨハネスブルグで、プラスチックごみの清掃ボランティアをする子どもたち。2018年8月

1年で10億トンのプラスチックごみがアフリカへ

イギリスの新聞ガーディアンの記事によれば、調査を行ったここ1年で、10億トンのプラスチックが、セネガルやケニアなどの国々に捨てられています。

経済先進国は、自分たちのごみのほとんどを数十年にわたり中国に輸出していました。しかし、2018年に中国がプラスチックごみの受け入れを禁止してから、アフリカへの輸出量は4倍に膨れ上がりました*

先進国は、プラスチックごみの輸出先を、次の「途上国」にその送り先を切り替えたのです。

有害廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約で、プラスチックが有害廃棄物のリストに追加されましたが、それに反対していた、シェルやエクソンなどの石油企業大手が所属するアメリカ化学会(American Chemistry Counsil)は、アメリカ政府に働きかけ、アメリカ・ケニア貿易協定を利用して、プラスチックと化学産業をアフリカに広げようとしています*

アメリカ化学会がトランプ政権(当時)に宛てた書簡には、アメリカ・ケニア貿易協定で、「国内の化学製品やプラスチックの生産と消費を制限することや、素材や原料の取引を規制することを禁止」するようにして欲しいと書かれています。この「原料」には、リサイクルを名目としたプラスチックごみを含む可能性が示唆されています。*

「アフリカはごみ捨て場じゃない」と抗議するケニアの人々。2020年9月

リベリアやチュニジアでもプラスチックごみが不法に輸送され、各国当局はギリシャやイタリアなどのそれぞれの国へ、何百ものコンテナを送り返す外交手続きを使い果たしてしまいました。

アフリカ諸国は、インフラ不足と急速な都市化によって、自国のごみ処理も間に合っていない状況です。ある調査では、アフリカの処理不足のごみの量は、2025年までには、2010年と比べて2倍になるだろうと予測されています。*

ケニアをはじめ、多くのアフリカの国々が、プラスチックの規制に乗り出していますが、経済先進国やプラスチックおよび化学製品に関わる大企業が、自分たちの利益のためにアフリカの国々を搾取しようとしているのです。

「ごみの植民地主義」

グリーンピース・アフリカのアンジェラ・ロウは、いまアフリカと経済先進国の間で起きていることは「ごみの植民地主義」だと訴えます。

「これは以前の植民地主義的な習慣の表れです。アフリカの国々が旧宗主国の利益になるように支えるべき、あるいは旧宗主国の後片付けをすべきというような考え方が継続しているのです」

経済的に貧しい国々には、大量のプラスチックごみが及ぼす人々の暮らしへの影響は非常に大きく、植民地時代に行われていたような略奪や奴隷化と同じくらいの状況をもたらしています。

今年、国連環境計画は、社会的に取り残された地域や国にプラスチック汚染がどのような影響をもたらすのかについての報告書をまとめました。その報告によると、そうした地域では、環境が悪化している割合が高く、有色人種の人々が住んでいる傾向が高いことがわかりました。

こうした地域や国に住む有色人種の人々は、プラスチック汚染による表面的な環境悪化の不快さに耐えなければならないだけでなく、賃金を求めて通う工場からの大気汚染により、病気になる傾向も高まります。そして、Studies in Poverty and Inequality Institute *の研究によると、低賃金労働者は仕事を失う恐れから、仕事を休んで医療を受ける傾向が低くなります。

もし、アフリカの人々がいまだに経済先進国の快適さのために我慢させられているならば、植民地支配と同じ構造ではないでしょうか?

ケニア・ナイロビで人々が暮らす地域に溜まったプラスチックごみを回収するボランティアたち。2019年10月

日本からもアフリカにプラごみを輸出している

2020年の日本からの廃プラ輸出は82万トンで、その内の多くが東南アジアなどの途上国に輸出されていますが、8,100トンはアフリカ地域への輸出でした(財務省統計 HS3915)。アフリカへの輸出は全体から見ると低い割合ですが、2018年、2019年にはアフリカに輸出していたのは2,000~3,000トン程度なので、それに比べると2020年の輸出量は数倍に増えています。

アフリカへの輸出が増えた理由として、日本のプラスチックごみの主な輸出先だった中国やマレーシアが受け入れを禁止したことで、一部がアフリカへ移ったということも考えられます。

バーゼル条約でプラスチックごみが有害廃棄物として輸出入が制限されるようになってから、日本からのプラスチックごみの輸出総量は減っています。しかし、いまも違法にプラごみを輸出し続けている業者もあると報道されています*。こういった輸出は、統計データには入っていない可能性もあります。

セネガルのビーチに散乱するプラスチックごみ。2019年9月

解決策は、ごみを減らすこと

世界中でこれまで作られたすべてのプラスチックのうち、リサイクルされたのはわずか9%です。90%以上は、埋め立てられたり、燃やされたり、自然界に流れ出して海の底に沈んだりしています。

使い捨てごみ問題の解決策は、「次にどこへ持っていくか」ではなく「ごみの総量を減らす」であることは明らかです。

グリーンピースでは、パッケージのない量り売りや繰り返し使えるリユース容器の提供など、ごみを出さないリユースの仕組みを広めるため、世界の大手飲料メーカーや、コンビニやカフェに働きかけを続けています。

みなさんも、日々の暮らしの中で使い捨てプラスチックを減らすための工夫を続けていきましょう。そして、「使い捨て」から「リユース」へ、社会の仕組み自体をシフトしていくために、一緒に声を届けませんか?

[翻訳協力:翻訳ボランティア Yukaさん]

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