グリーンピース・ジャパンは日本におけるエネルギーの考え方を変える重要な役割を担い、化石燃料や原発産業のソーシャル・ライセンスに疑問を呈し、再生可能エネルギーのソーシャル・ライセンスを強化する動きを広げました。こうした活動は、メガバンクによる石炭事業への新規投資の停止、太平洋への放射能汚染水の放出の決定延期、原子炉の再稼働延期につながりました。

新型コロナウイルスからのグリーンで公平な復興を求め、政府に提案書を提出しました。気候危機によって激化した九州の水害や、商船三井が関与するモーリシャスの石油流出事故に対しては、気候変動対策の緊急性を訴え、より安全で持続可能な社会のための新しいビジョンを提案しました。さらに、気候変動問題に関心のある市民や団体とより密接に協力をし、東京をはじめとしたゼロ・エミッション都市のための草の根の動きを作り出しました。

2020年9月、菅義偉首相は2050年までに日本をカーボンニュートラルにすると発表し、12月には「グリーン成長戦略」を発表しました。しかしながら、グリーンとは名ばかりでその道筋は依然として原子力と化石燃料産業に依存したままです。日本は2021年、エネルギー基本計画を決定し、2030年に向けた取り組みを国連に報告する予定ですが、気候危機の悪化を止め、地球上のすべての生命のためにより公正で回復力のある社会を構築するためには、原子力と化石燃料を含まない2050年のネットゼロ計画を政府に約束させることが重要です。

グリーンピース・ジャパンは、日本が2030年までに温室効果ガスを2010年比で少なくとも50%削減することを約束し、2030年までに再生可能エネルギーが少なくとも50%以上となる電源構成となるよう働きかけます。

3メガバンクに気候変動株主提案が実現、大きな一歩

2020年に行った主要キャンペーンの一つでは日本の大手金融機関と石炭産業の関係に着目しました。今後、石炭消費は構造的低下傾向にあると国際エネルギー機関が発表しているにもかかわらず、日本は世界に石炭火力発電所への融資を提供する主要国の一つです。

2019年のCOP25から生じた原動力を活かし、メディアが石炭融資問題、特に日本のメガバンクの行動に着目するよう、ダボスで開催された世界経済フォーラムでバナーアクションを行いました。その後、気候ネットワークなどの他のNGOと協力し、みずほファイナンシャルグループの株主総会で気候関連株主提案を提出しました。日本の大手金融機関でそのような提案が提出されたのは初めてでした。

提案は株主の34%に支持され、正式に採択はされなかったものの、3メガバンク全てがその後に石炭融資方針を改定し、原則として新規の石炭火力発電所計画への融資をなくすことを発表しました。当活動では、クレディ・スイス、ユービーエス AG、ダンスケ銀行を含む複数の法人株主と協力をし、KLP、ストアブランド、ノルデア銀行が株主提案を公に支持しました。

石炭融資と日本の金融機関の役割に関する2つの報告書も発表しました。7月にはグリーンピースが調査に協力した新報告書『Fool’s Gold 』(石炭は黄金にあらず)を 欧州のNGOネットワークEurope Beyond Coalが発表しました。グリーンピース・ジャパンが協力した章では日本の銀行から欧州の大手石炭企業に流れる融資の流れについて調査しました。また9月にはグリーンピース・ジャパンとして『Fool’s Gold 石炭は黄金にあらず 石炭投融資の継続は気候危機を加速させる 日本のメガバンクに関する特別報告書』(日本版)を発表し、日本のメディアを対象としたウェビナーを開催しました。

12月には、菅義偉首相のネットゼロ宣言をうけて、グリーンピース・ジャパンは日本・中国・韓国の東アジア3カ国による海外の再生可能エネルギー市場への投融資転換について分析した調査報告書「脱炭素エネルギー投資が求められる東アジアの『ネット・ゼロ』」を発表しました。この報告書では、化石燃料を中心としてきた東南アジアにおけるエネルギー融資の歴史を分析し、再生可能エネルギー革命の先端にたつ今、日本・中国・韓国の大手金融機関は既存の路線を続けていては、投資機会を逃してしまうことを指摘しています。

市民の声が汚染水海洋放出を止めた

2020年は政府が東京電力福島原発敷地内に溜まりつづける放射能汚染水の処理方法を決定するとしていましたが、市民の声でそれをさせなかった年となりました。
1月に経済産業省の小委員会が海洋放出または水蒸気放出の2案に絞り込み議論を終えたことに対し、声明を発表し、パブリックコメントを広く周知し提出を呼びかけました。提出された4,000件超のうち、2,700件が安全性への懸念を示すものでした。パブリックコメントの期間が3回延期されたことも異例といえます。

これまでもおこなってきた国連特別報告者らへの情報提供を継続し、6月に複数の特別報告者が連名で汚染水放出の決定プロセスについて人権が守られていないと声明を出しました。
10月には他団体と共同で国際署名を開始しました。さらに同月、報告書『東電福島第一原発 汚染水の危機2020』を発行し、汚染水にはトリチウムだけではなく、長寿命の放射性核種も大量に含まれていることを指摘しました。東電の放射性核種除去装置の欠陥を取り上げ、陸上保管を続けながら放射性核種除去技術を開発することを提言しました。さらに、他団体とともに経済産業大臣に、海洋放出をしないよう求める要望書を提出し、共同で記者会見を開きました。

また、1年を通し、日本政府の温暖化対策が原発推進であることから、「原発は温暖化対策にならない」というコミュニケーションを活発におこないました。
2019年におこなった3週間に亘る福島現地調査の結果を『終わらない汚染』として報告書にまとめ、2020年秋にはコロナ禍の影響もあり規模を縮小したものの現地調査を継続しました。

ゼロエミッション東京、2050年脱炭素社会実現へ

本キャンペーンは、政府の「2050年脱炭素化」表明前に始まり、中央政府へ大きな影響力を持つ首都東京に着目し、東京都の「ゼロエミッション東京戦略」を活用しながら、東京のエネルギー移行アジェンダを進めるべく開始しました。まずNGO共同で東京都内自治体の電力調達の状況を調査し、報告書を発行し、報告イベントを開催しました。

また、東京都の目標達成には都内全62市区町村の取り組みが必要なことから、グリーンピースでは2020年9月にSNS上でコミュニティを立ち上げました。そこから20以上の市区町村別グループがうまれ、情報共有、勉強会、議会への陳情提出などを進めています。12月20日には、環境省・東京都・都民の三者の議論の場として「ゼロエミッション東京シンポジウム」をオンラインで開催し、132人が参加しました。

さらに、市民活動と並行して、グローバル市場調査会社イプソスに全国意識調査の実施しを依頼して発表したほか、脱炭素社会実現に向けた具体的なロードマップの策定や、2030年中期削減目標の大幅引き上げ、自然エネルギー産業などにおける雇用創出など、5項目の提言を環境省に提出しました。

モーリシャス燃料流出事故で商船三井の責任を問う

商船三井がチャーターした大型貨物船が、2020年7月にモーリシャス沖で座礁して燃料油流出事故を起こしたことを受け、グリーンピース・ジャパンは、グリーンピース・アフリカやモーリシャスのNGOと協力し、事故当初から、船主である長鋪汽船と商船三井に対して公開書簡を送り、以下の4点を求めました。

  1. 汚染者負担原則にのっとった十分な補償
  2. 第三者による調査の費用負担と公開
  3. 事故を起こした航路の使用中止
  4. 化石燃料からの撤退

併せて、事故を起こした企業として社会的責任を果たすよう求める緊急オンライン署名を開始しました。8月には商船三井本社前で、事故の当事者として社会的責任を徹底するよう求める「企業の責任は法的義務で終わりじゃない」と書かれた横断幕を掲げ、メッセージを送りました。その後、商船三井は、重油流出による長期にわたる汚染と環境や生計の回復について、たとえ傭船者であっても事故の当事者として社会的責任があるとし、10億円の拠出と長期的視点で事故からの回復に向き合うという、注目すべき長期的な方針を打ち出しました。

アマゾンの森を守り、気候危機の加速を止める

牛や大豆などの家畜のエサを育てるために、アマゾンの森に人為的に火が放たれ、森林が切り開かれています。貴重な生態系が脅かされているだけでなく、地中に蓄えられていた炭素が空気中に放出されることで、気候危機を加速させています。
グリーンピースは、藤原しおりさんをナビゲーターにお迎えして、日本の私たちとアマゾンの森林破壊のつながりを解説する動画を制作し、藤原さんと一緒に一般向けの勉強会を開催しました。他にも、このキャンペーンに賛同する水沢アリーさん、海月ダンテさん、未来リナさんの3名が賛同人として、署名に名を連ねてくれました。
工業的に生産された肉や乳製品の大量消費が、どのように私たちの健康、動物たちの命、水資源、そして工業的畜産に関わる労働者の権利に影響を与えているのか情報を発信し、食生活を見直すための問題提起をしました。

また、日々の食生活を見直すことにとどまらず、グリーンピースの国際キャンペーンに参加して、世界中の人々と力を合わせてアマゾンの森を保護する枠組みを求めることを呼びかけ、日本各地から6,000人以上が賛同しました。

日中韓3カ国は今年9〜10月、相次いでCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)を表明しました。ただ、3カ国は海外の石炭火力発電事業に対して世界最大の資金提供を行っており、こうした海外のエネルギー投融資でもネットゼロ目標が反映されなければ、引き続き気候危機を助長することになります。
本報告書では、日本・中国・韓国の公的・民間金融機関の海外投融資をめぐる課題を分析し、化石燃料から再生可能エネルギーへの投融資の転換について提言を行っています。その際、3カ国のエネルギー投融資と強い結びつきがあり、近年再生可能エネルギー市場が大きく成長している東南アジアを、資金の受取国側の事例として取り上げています。

日本のメガバンク、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、欧州の石炭火力発電関連企業に計約19億ユーロの融資を行っています。本報告書では、このような支援が、再生可能エネルギーへの移行の妨げになるだけでなく、石炭需要の低下の加速とともに、化石燃料の座礁資産を生み出す危険性があると指摘しています。

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