おいしくて安全なものを食べたい。
と消費者が思うのと同じに、生産者も、おいしくて安全なものをつくりたい。
未来の世代に、いまの環境をできるだけ美しいまま残したいと願うのも、同じです。

そのためには現在の集約的な工業的農業から、自然の力を生かした生態系農業への移行は不可欠です。

グリーンピースの活動を支えるサポーターであり、自然栽培でお米を生産する石川県の二組の農家さん─越田秀俊さん・奈央子さん、元屋和則さん─にお話を伺いました。

今日、12月8日「有機農業の日」にお届けします。

自然栽培お米農家の本音トークをお届けします

写真:とても勉強熱心な越田秀俊さん・奈央子さん。お米以外にマコモダケや枝豆も育てている。

環境破壊と気候変動が獣害に?

越田さん:農業を学び始めたのは震災のあった2011年からです。
5年間勉強して、2016年から農家になりました。

奈央子さん:市が自然栽培をひろめましょうって事業を始めて、彼はその事業サイドに関わっていて、私は参加者でした。

元屋さん:僕はサラリーマンだったんですけど2005年に辞めて。
なんで会社員辞めたかっていうと、なんでもかんでも利権なんですよ。2001年にアメリカ同時多発テロ事件が起きて、そこで石油利権ってのがあるんだってわかって。そういう仕事をしてたんです。

グリーンピース:石油関連のお仕事されてたんですか。

元屋さん:うん。戦争だから石油プラントぶっ壊すじゃないですか、ぶっ壊してから新しくつくるプラントは、その時のアメリカの副大統領関連の会社から発注しよるん、そういう仕事しててね、こんなもん辞めようと思って、辞めるわけですよ。

グリーンピース:ぜんぜん違うお仕事ですね。
じゃあ農業をやる、最初から自然栽培でやろうって最初からそう思って始められた。

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写真:オフビートな口調が楽しい元屋和則さんとご家族。お米の他に栗や梨も生産。

元屋さん:それしかない。最初から。

グリーンピース:なるほど。
以前、田んぼの生きもの調査(2017年7月)のときに、獣害のお話をされてたのが印象に残ってるんですけど。

元屋さん:まあまあイノシシやね。ここ10年ぐらい問題になってきてるかな。
(能登半島に)いなかったのが、南の山の方から上がってきた。

グリーンピース:農業やってらっしゃる方、皆さんお困りなんじゃないですか。

元屋さん:そうですね。みんな困ってます。慣行もなにも関係ない。

グリーンピース:何か対策はされてるんですか。

元屋さん:電気柵よね。電気柵はめんどくさい仕事よね。もっといい方法はないのかって。もっとあるでしょいい方法がって思うぐらい、ほんとに大変。

グリーンピース:電気柵を設置して管理するのが大変ってことですか。

元屋さん:除草剤まいてしまえば楽なんです。うちら除草剤まけないので、地獄のような仕事です。

グリーンピース:地獄のようなってその、電気柵が。

元屋さん:草が生えてきて電気柵に触れると漏電して電気柵が効かなくなる。

グリーンピース:じゃあ、ずっと草を刈り続けなきゃいけない。

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写真:越田さんの畑の電気柵

奈央子さん:刈らないでおいたらはいってくるんです。
でも電気柵で100%まもりきれるものでもなくて。行政は電気柵をしっかりやれば大丈夫ですって一点張り。でもこんどは鹿は入ってくる、サルははいってくるで、農家の負担がどんどん大きくなる。要は柵を大きくしなきゃなんないから。

元屋さん:抜本的な対策をしないで、でたとこで電気柵やりなさいよって。結局いま電気柵の総延長がとにかくめちゃくちゃ長いんですよ。

グリーンピース:問題になりはじめたのはどうしてなんですか。

元屋さん:雪が少なくなったっていうのはひとつあるね。

越田さん:それはもう間違いない。30年ぐらい前までは雪けっこう降ってたんですよ。降ってるのが当たり前、積もってるのが当たり前みたいな、毎日雪の中を通学してた記憶があるんですけど、いまはたまに降って、融けて、またたまに降ってって感じ。

奈央子さん:風向きも変わったし、風の強さも変わったし、夕立もなくなったし、30年前と今では、がらっと変わったなって。
かつて能登半島にイノシシがいなかったっていうのは、戦中戦後に一回はげ山になっていなくなったところに、山林が荒れて行き来しやすくなったという面もあるので、気候変動だけではないと聞いてます。

元屋さん:山に杉を植えて、それが放置されて荒れた。

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写真:越田さんの畑のそばのため池

自然栽培と品種

グリーンピース:たとえば有機農業や自然栽培には品種がとても重要といわれてますね。

元屋さん:米はコシヒカリつくってまして、やっぱり自分が好きな味だもんで。誰がなんといおうが僕はコシヒカリ。人のいうこと聞かない人なんで。

越田さん:日本晴れという品種のおこめを僕らつくってるんですけど、初期生育が全然違う。

グリーンピース:しょき?

越田さん:要はあの、ぽんと田植えした、最初の生育の状態が違う。
結局無農薬でやる場合って雑草とも競争なので、初期の生育の差っていうのはものすごい差につながってくる。

グリーンピース:元屋さんはコシヒカリを自然栽培でつくられている。

元屋さん:だから草がすごいですよ。
もういいんです。でたらもう諦める。

グリーンピース:諦める。

元屋さん:無理。

グリーンピース:雑草対策はどんなことをされるんですか。

元屋さん:チェーンひっぱったりするわけですよ。あと除草機ごろごろ転がす。

越田さん:除草機あるんですよね。有機とか自然栽培やってる方、みんなやってらっしゃるんですけど。

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写真:除草機をかける越田さん

元屋さん:たぶん(除草機が)きく草ときかない草があると思うんだよ。だからうちは、きかない草ばっかり増えちゃって。さてどうしよっかなーっと。

越田さん:結局その、品種によってもだいぶん違うって話があるんですよ。
銀坊主って品種を試験的につくってるんですけど、明治時代の北陸でつくられてた品種で、ふつうの稲より30センチぐらい高い。背の高さっていうのは根っこの深さともつながっていて、それだけ無肥料でも育ちやすいといわれてるんですよね。
じゃあなぜ低くなっていったかっていったら、肥料多投と関係があって、当時はお米がとにかく必要だった。質より量です。たくさんとるために肥料を多く入れる、すると長い稲は倒れやすくなる。倒れると減収につながる、これを嫌がった歴史があって。だから昔の品種の方が無肥料栽培とか自然栽培には合うっていわれてるんですよね。
だから品種選びっていうのはものすごく大事で、それだけ差がある。無肥料栽培やってる方はみんないいますよね。

地形と環境と品種と自然栽培

グリーンピース:集約的な農業にするために弱い品種に改良されていってしまってるってことがあるってことなんですか。

越田さん:適応した品種に改良したってことだと思うんですけど、無肥料にすると結果的に弱いってことですよね。
いっぱい収穫したいからいっぱい肥料入れる。いっぱい肥料入れると、病気にも侵されやすくなる。そういう状態でもなるべく耐えてくれるように改良されてきた結果がいまの品種の傾向でもあるので、それをいきなり無農薬とか無肥料にすると厳しい部分がでてくるのが当たり前。
化学肥料使ってるから土が痩せてきてる部分もあるし、そういう状態で無農薬をやると確かに厳しいけど、前提条件が違う品種もあるし、もっと豊かにする方法もある。僕はできないとは思わない。

グリーンピース:自然栽培を始めてから、地域のマーケットや消費者意識に変化を感じたりすることはありますか。

元屋さん:うちの町ではそういう感じはしないですね。

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写真:元屋さんの梨畑。除草剤代わりの下草避けに植えたミントの香りがする。

越田さん:逆にいったら、いま新規就農する人は自然栽培とか有機栽培じゃないと厳しいっていう意見もあるんです。
無農薬・有機栽培・自然栽培とかだったらひとり3町歩〜5町歩ぐらいでもたべていける可能性はある。それは単価が(慣行農法の)三倍だからなんですよ。
10ヘクタールと3ヘクタールやる人だったら、機械の大きさが全然違う。初期投資でも、全然3ヘクタールの方が少なくて済む。

元屋さん:そこが理解されてないね。

越田さん:規模拡大やってけばやってくほど、田舎は過疎化していきますから。結局、人いらないですからね。

グリーンピース:もともとは慣行農法でやってらっしゃった圃場で、自然栽培をしてるうちに土壌って変化したりしますか。単純に生き物が変わったりとか。

元屋さん:ふつうに水生昆虫とか泳いでますから。おたまじゃくしなんか、もう信じられないぐらいいますよ。うっじゃうじゃ。

グリーンピース:バランスがとれてれば、虫も大量発生とかするわけではないんじゃないかなって思ったりもするんですけど。

元屋さん:いなごは最近ふえてる。気になりはするけど、そう収量めちゃくちゃ減ってるわけでもないし。あれ食べてくれる人いないのかな思うぐらい、たくさんいます。

グリーンピース:そんなにいるんですか。

元屋さん:そんなにたくさんいるのに、なんで誰もたべないんだっ。

グリーンピース:いなごはお米に影響ないんですか?

元屋さん:多少。葉っぱたべるぐらい。

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写真:越田さんの田んぼ

暮らしが世界と環境に与える影響を日常に

越田さん:僕は先輩農家さんにいわれたのは、自然栽培やってたら、基本的に病気とか虫はあんまり心配しなくていいからって。
肥料を入れすぎてると、虫を呼ぶっていうのは全国いろんな農家さんから聞いて、だから無農薬をやりたいから、できるだけ肥料を使いたくない。

奈央子さん:それ以外にも株間を開けるとかこまかい調整して、うちの場合はつよい品種をとにかくえらぶ。
用水路、側溝が川とつながってるか、山がどうなってるかとか、全体地形といっしょにしないと(田んぼの生態系は)語れないんじゃないかなあ。

越田さん:絶対そう。

奈央子さん:逆におもしろいなと思ったのは、慣行栽培やってる先輩農家が、用水路を替えさえすれば魚道ができて、掃除してくれるんやって。

元屋さん:そっかあ、水ね。

越田さん:だから全体の話だよね。

奈央子さん:そういう意味で環境保護ってすっごいだいじ。

越田さん:だから情報を集約してトータルな視点でかたるっていうことがどうしても必要だと思うんですね。
販売と農法は背中合わせみたいな形になってるから。
大規模流通に出すからモノカルチャー的に同じ品種をいっぱいつくらなきゃいけない。小松菜ばっかりつくる、トマトばっかりつくる。単純に自分で食う分だけだったら、そりゃなんでもちょこちょこちょこって植わっててもいい。
だから対面で農家さんと消費者が直接結びついて、圃場をどうつくるかっていうことと、販売方法の話ってセットなんですよ。どうやって結びつくかってことはぜひ真剣に考えてほしい。生産者のひとりとして、それはちょっと言ってみたい。

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写真:梨畑で袋かけ作業を手伝う元屋さんの長男

グリーンピース:グリーンピースが大手スーパーマーケットに対してはたらきかけをしていくことに、どんなふうに感じられますか。

越田さん:ある程度の広域流通っていうのもあってもそれもいいのかなあ。
ただ、もっとバランス的には、提携とか近しい関係で小さな流通の方が増えていく方が、社会としては適正かなとは思いますけどね。

元屋さん:いいと思います。
それで、大手スーパーに有機のシェアをふやしてくれっていう要望をやるのはいいかもしれないですね。
そうすれば、そっからそのスーパーからお客さんにも広がっていきますもんね。そういう活動もやってもらったらいい。どんどんPRしてもらえばいいと思います。

越田さん:もとめてるのは情報。外国の情報もほんとは論文を自分でよんで解釈するのがいいのは当然なんですが、なかなかそういうことできないし。なので団体の力で、手分けして、いろいろわかりやすい形で提示してくれるというスタイル。

奈央子さん:弱いものは、徒党をくめ。

越田さん:これはほんとにすごく、その通りだなって。当たり前といえば当たり前なんだけど。

元屋さん:数集めるっていうね。

越田さん:みんなで世の中をより良い方向に変えていく力を集めるっていう意味でのセンターにグリーンピースがいれば、すごくいい発展につながってくんじゃないかなって思います。

グリーンピース:ありがとうございます。

奈央子さん:ごはん、生活っていうのが、いかに生き物として環境を変えているか。
一日の暮らしっていうのが世界全体に及ぼしてるんだっていうのを、難しいことじゃなくて日常に頭に入ればなあって思うんですけど。

 

元屋さんのウェブサイト:自然農園もと屋
越田さんのウェブサイト:和波波Quintet

 

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Yearly Harvest at Ecological Rice Farm in Japan. © Viktor Cibulka / Greenpeace
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