多くの小売業者は、使い捨てプラスチックによる汚染への解決策として、プラスチックの容器・包装を生分解性プラスチックに切り替えていますが、これはプラスチック汚染の解決策とはなりません。

台湾では、2023年2月3日、環境保護署が主要施設で生分解性プラスチックの一種であるPLAを使用した使い捨て食器の使用禁止を発表しました。

世界各地で、プラスチックを発生源から減らすために、使い捨てずに繰り返し使える容器包装を使う「リユース」中心の社会への転換を加速させる事例がまた1つ増えました!

台湾が生分解性プラスチックを禁止へ

台湾の環境保護署は、2023年8月から、公共機関、公立・私立学校、百貨店、ショッピングセンター、スーパー、コンビニ、ファストフード店、レストランなどの施設で、PLAの生分解性プラスチックを使用した皿や弁当容器、カップなどの使用を認めないことを発表しました。

PLAとはポリ乳酸のことで、主にトウモロコシやジャガイモなどの植物デンプンをもとに作られ、使い捨ての食器や容器・包装、食品トレーなど、化石燃料由来のプラスチックの代替によく使われます。

生分解性プラスチックとは…

一定の条件の下で、自然に存在する微生物などの働きを利用して、最終的には二酸化炭素と水に分解する性質を持つプラスチックのこと。

自然の環境下で生分解が可能なものと、一般家庭のコンポストで堆肥化可能なもの、工業的な施設で堆肥化が必要なものがある*1

生分解性プラスチックの原料は、動植物の有機資源を利用したバイオマスプラスチックに限らず、化石燃料由来のものや、有機資源由来と化石由来の組み合わせによるものもある。

PLAは、トウモロコシやジャガイモのデンプンを利用したバイオマスプラスチックで、堆肥化には高温多湿な特定の環境が必要*2

なぜ生分解性プラスチックは環境によくないの?

生分解性プラスチックは、一見すると環境にやさしいイメージがありますが、実は必ずしも自然の環境で簡単に分解されるわけではありません

生分解性プラスチックといっても自然環境で分解するとは限らず、一度海や川に流れ出せば、化石燃料由来のプラスチックのように環境を汚染する(2020年7月撮影)

生分解性プラスチックには、土壌や海水、淡水など自然の環境下で生分解が可能なものと、堆肥化が必要なものがあります。堆肥化の中でも、一般家庭にあるようなコンポストで堆肥化可能なものと、工業的な施設での処理が必要なものがあります*1

PLAの場合、土壌や水環境では分解されず、一定の温度と湿度が保たれたコンポスト施設が必要です*2。PLA製品が海や川などに流れ込んだり、森などに捨てられたりしても、化石燃料由来のプラスチックと同様に、自然には分解されないのです。

実際、台湾のグリーンピースが2021年におこなった観察実験では、スーパーで入手したPLAの生分解性プラスチックのドリンクカップ、ストロー、食品トレイは、土や海などの自然環境を再現した場所に60日間置いても、元の状態のままで分解されませんでした(観察実験の動画)。

堆肥化施設で分解することは可能なのですが、現在のところ大量のPLA製品の処理に対応できる十分な処理システムは台湾にはなく、結局焼却炉に送らざるを得ない状況です。

日本も同様に、生分解性プラスチックを普及させたとして、今現在の堆肥化施設では十分に生分解性プラスチックの堆肥化に対応することは難しいでしょう*3

また、PLAはペットボトルなどに利用されるPETと外観が似ているため、分別が難しくなります。分別時に混ざってしまうと、リサイクルの価値を下げることにもなります。

使い捨てる限り、素材を変えても問題は解決しない

欧州議会は早くも2018年に、「生分解性プラスチックはプラスチック汚染の問題を解決できない」と決議しています*4

しかし、世界的なプラスチック削減の流れを受けて、多くの企業が使い捨てのプラスチックパッケージやカトラリーを、PLAなどの生分解性プラスチックに置き換えています。

また、2019年には、世界で生産された生分解性プラスチックの59%が、ビニール袋、食品のパッケージや容器、飲み物のカップ、化粧品の容器や包装となっていましたが、その場合製造時に可塑剤などの化学物質が添加されることがあるため、リサイクルをより困難にしています*5

世界で増える「リユース」へのシフト

リユース容器でテイクアウトした食事(2021年2月撮影)

世界では、プラスチック汚染を発生源から減らすために、容器・包装を使い捨てるのではなく、繰り返し使える「リユース」へ置き換える好事例も増えてきています。

ドイツでは、2023年1月から、持ち帰りの食品やコーヒーを販売するすべての店舗に、利用客が選択することができるように、リユース可能な容器を用意することを義務づける新しい法律が施行されました*6

ドイツで使われているリユース容器システムのVytal。テイクアウトを行う飲食店は、このようなリユース可能な容器を用意するか、望まれる場合には利用客が持ち込んだ容器に入れることが義務化された (2023年1月撮影)

フランスでも、2023年からすべてのファーストフードチェーンで使い捨てが禁止され、例えばマクドナルドの数店舗では、ポテトの箱やドリンクカップ、ハンバーガーの箱を、リユース容器に置き換えました*7

EUでは、2030年までにノンアルコール飲料の10%、テイクアウトのホット・アイス飲料の20%、レストランやカフェでの提供の10%をリユースの容器・包装での提供にすることをめざす予定です*8

台湾では、インターネットショッピングの包装材についても、リユースへの切り替えを進める方針を示しています。2月16日に発表された草案では、7月からPVCが含まれる包装材の使用を禁止し、外箱やパッケージについても、2024年末までに2%、2026年までに15%をリユースにすることを目指すとされています。台湾のグリーンピースは、さらに目標値を上げることを目指して働きかける予定です*9

「リユース」への動きを日本でも加速させよう

持ち込んだ袋や容器、返却できるデポジット式の容器を借りて、ごみを出さずにお買い物できる、京都にある日本初のゼロウェイストスーパー*(2022年4月撮影)

残念ながら日本では、リユースの容器・包装を中心にしていこうという政治的な動きは、まだ見られません。

去年4月に施行された「プラスチック新法」では、プラスチックを製造から削減する具体的な目標は立てられておらず、紙やバイオプラスチックなどの他の使い捨て素材の利用を促進しています*10

プラスチック汚染を発生源から減らすため、グリーンピースは市民のみなさんや環境NGOネットワークと協力して、政府に情報を提供し、意見交換することで、「リユース社会」実現への野心的な政策を求めています

また、使い捨てカップでコーヒーをテイクアウトするカルチャーを日本に定着させ、年間2億3,170万個もの使い捨てコーヒーカップを消費している最大手カフェチェーン、スターバックスコーヒージャパンに対しても働きかけを行ってきました。

2021年に、アイスコーヒーなどの提供を使い捨てプラスチックカップから使い捨て紙カップへ切り替える方針を示したスターバックスに対して、プラスチックでも紙でもなく、ごみを出さないリユースにシフトすることを求めて、署名キャンペーンと企業との対話をスタートしました。

スターバックスは、東京の丸の内や渋谷エリアで返却式リユースカップの実証実験を開始し、店内用に繰り返し使えるグラスを導入するなど、少しずつリユースに向けて動き始めています。

https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2023/02/20/61666/

私たちが関心を持ち続けることによって、日本でも使い捨ての削減を加速させることができます。ぜひ私たちと一緒に、政府や企業の動きに目を光らせ、声を届けていきましょう