アルゼンチン海域のミナミセミクジラ。(2019年11月)

2023年3月4日、各国政府がついに海洋保護条約に合意しました。
世界の海がプラスチック汚染をはじめ、過剰な漁業、気候変動による酸性化や温暖化などに脅かされている今、海を守るための大きな前進となります。

世界海洋条約がついに締結に向けた合意へ!

2023年3月4日、各国政府が長年の協議の末、ついに「海洋保護条約」に合意しました。

この条約によって、どこの国にも属さない公海の生物多様性の保護と持続可能な利用を目指すことが約束されました。2030年までに世界の海の30%に海洋保護区のネットワークをつくるための大きな前進です。

・海の生きものたちが安心して暮らせるサンクチュアリができる
・破壊的な大規模漁業や深海採掘から海が守られる
・温暖化やプラスチック汚染の影響から回復するスペースができる

といった海洋環境保護への大きな効果が生まれます。

さらに、海の生態系が豊かになると炭素の吸収能力が高まるので、 気候変動から私たち人間を守ってくれることにもなります。

「神秘に満ちた海を未来へ」と書かれたプラカードを掲げる子ども
グリーンピースのボランティアは、世界の主要都市に「消えるペンギン」の氷像を設置して海洋を保護するよう世界政府に呼びかけました。東京、新宿。(2020年2月)

2002から20年以上をかけた長い交渉の末*、日本から、そして世界中から「海を守って」と集まった多くの声が歴史的な合意を後押ししました。

グリーンピースのこれまでの活動ーー海洋保護条約実現への歩み

グリーンピースは、海洋保護条約を実現させるために、サポーターとともにこんな活動を行ってきました。

オーシャンアンバサダーの小野りりあんさん、グリーンピース・ジャパン アンバサダーの武本匡弘さんとともに、日本で集約した署名(当時16,381筆)を外務省と環境省に提出。
オーシャンアンバサダーの小野りりあんさん、グリーンピース・ジャパン アンバサダーの武本匡弘さんとともに、日本で集約した署名(当時16,381筆)を外務省と環境省に提出。(2022年2月)

2008年
10月

「海から魚がいなくなる? 私たちが今できること」と題した国際海洋環境シンポジウムを主催。国連大学で、日本や世界の海洋学者、漁業関係者によって、日本近海の海洋環境の危機的な現状や、世界の海洋保護区の実例、持続可能な漁業や販売の課題と展望などが報告されました*

2019年
4月

2030年までに世界の海の3分の1以上を保護区にする方法を示すレポート『30×30:海洋保護の未来図』を発表

各国政府に海洋保護区への賛同を促す署名キャンペーン『神秘に満ちた海を未来へ』を世界同時に開始

グリーンピースの船が北極から南極まで、約1年をかけての調査へ出航。科学者のチームと協力して、公海に対する気候変動や過剰漁業、プラスチック汚染、深海底掘削や石油採掘の影響を調べました*

アルゼンチン海、南北極圏の日の出とグリーンピースの船、アークティック・サンライズ号。(2022年4月)
アルゼンチン海で。日の出とグリーンピースの船、アークティック・サンライズ号。(2022年4月)

11月
一緒に海を守るオーシャンアンバサダーを発表*
四角大輔さんを始め、松浦美穂さん、小森優美さん、エバンズ亜莉沙さん、石井瑛真さん、Cherryさん、アレックス・デレチさん、小野りりあんさん 、藤原冬姫さん、UKICOさん、NOMAさん、森ノオト・北原まどかさんらがオーシャンアンバサダーとしてキャンペーンに賛同し、一緒にメッセージを発信してくださいました。

2020年
3月

オーシャンアンバサダーとともに海を守ろうと呼びかけるアニメーションを発表*。森星さん、NOMAさん、四角大輔さん、小橋賢児さん、MINMIさんが参加しました。

『HOME ~ あるウミガメ一家の物語』美しい海の中で暮らす家族のある日を描く110秒のストーリー

2021年
1月

VICTORY!
日本が2030年までに 地球上の陸と海の30%を保護する国際目標に同意。日本政府が、初めて30%目標への支持を明らかにしました。

2022年
2月

オーシャンアンバサダーの小野りりあんさん、グリーンピース・ジャパン アンバサダーの武本匡弘さんとともに、日本で集約した署名(当時16,381筆)を外務省と環境省に提出*。世界では約500万人以上の人々の署名がキャンペーンに寄せられました。

「海の30%を保護区に」海洋保護条約の意義

海洋条約は世界の海の3分の1以上を海洋保護区にすることで、海を守るというシンプルで大胆な考えに基づいています。

現在は世界の海の1%にしか満たない海洋保護区を、30%へと大きく広げることを目指します。

アルゼンチン海域のミナミセミクジラ。(2019年11月)
アルゼンチン海域のミナミセミクジラ。(2019年11月)

保護区となった30%の海で、人間は破壊的な開発などができなくなるので、人為的な影響から野生生物とその生息地を守り、動物たちにとっての安息の海をつくることができるのです。

グリーンピースがイギリスのヨーク大学・オックスフォード大学と行った1年に及ぶ共同調査では、人間の活動の直接的な影響を受けない海洋保護区のネットワークとはどのような姿なのか、何百通りものシナリオを作成して検討が行われました。その結果、ネットワークの構築は十分に実現可能であることが明らかとなっています。

下の画像は、そのシナリオの例です。
緑の部分が海洋保護区で、世界中の海に広がるネットワークを作ることで生態系を守ります。

海洋保護区で、世界中の海にネットワークが広がるシナリオ

海洋保護区の効果はすでに実証されています。

例えば、1992年に国立海洋保護区に指定されたモントレー湾では、かつては釣りなどによって野生動物の一部が絶滅の危機に瀕していましたが、海の自然と野生生物が回復しました。今はアシカやペリカン、ラッコなどが暮らす豊かな海藻の森が復活し、クジラ観察のホットスポットとなっています*

世界が力をあわせ、海を守るための一歩を踏み出した

国連海洋大使のレナ・リー氏が小槌を降ろした瞬間、決裂の恐れもあった2週間の交渉は幕を閉じ、海洋条約は合意されました*

ソウルの空を泳ぐ300機のドローンが織りなすクジラ。
ソウルの空を泳ぐ300機のドローンが織りなすクジラ。
韓国のグリーンピースが海洋保護を求めてショーを行なった。(2022年8月)

そしてこの瞬間は、分断が進む世界で、各国が歩み寄り、自然のための協力を選んだ歴史的な意義を持っています。

グリーンピースが求めてきたものすべてが実現したわけではありません。しかし、公海上に自然の回復力が守られる海洋保護区をつくる大切な道筋がつくられたのです。

グリーンピースのビジョンに心を重ね、声を上げてくださった多くの人たちとともに成し遂げた大きな成果です。自然保護にとって歴史的な成功を一緒に祝い、今後さらに海を守っていくために、力をあわせましょう。

私たちはこの先、各国がこの条約を正式に採択し、できるだけ早く批准、発効に踏み切るよう背中を押さなければなりません。地球が必要とする完全に保護された海洋サンクチュアリを実現させるために、まだやるべきことは残っています。

あなたの支援が、海を守るための仕組みの実現に向けた、グリーンピースの科学調査やロビー活動を支えます。