2004年2月17日、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」 ( 注1)をフランスが批准したことにより50カ国目の締結国が誕生し、ようやく条約が発効することになりました。規定により条約は90日後の5月17日に発効する予定で、これにより締結国は、有害な化学物質から人間の健康と環境を守る法的義務を持つことになります(注2 )。

条約の特徴とこれまでの経緯

ストックホルム条約の特徴は、予防原則の立場からすべての残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)の排除を求めていることす。優先的に取り組むべきPOPsとして12種類がリストに上げられており、これらは通称「ダーティーダズン(12種類の有害な物質)」と呼ばれます。これらには、意図的生成物質として農薬に使用される物質やPCB類などがあげられ、さらに非意図的生成物質として工場やごみ焼却炉などから放出されるフラン類やダイオキシン類なども含まれます。

この条約は、米国や企業からの圧力により進展を妨げられながらも、数年に渡る交渉の後、2001年5月23日にスウェーデンのストックホルムで採択されました。日本も、2002年8月にこの条約を締結しています。

グリーンピースの有害化学物質規制に向けた活動

グリーンピースは1990年代前半から、有害化学物質を世界的な枠組みで規制する条約の必要性を訴え、90年代後半にはじまったストックホルム条約の準備会合である政府間交渉会議にも参加してきました。

また2001年にこの条約が採択されてからは、各国でその締結を求めるキャンペーンを行ってきました。グリーンピースは、締結国が50カ国に達した (注3)ことを歓迎すると共に、各国政府にこの条約の精神を遵守した国内実施計画の策定を求めていきます。

「これは、単に環境保護にとっての勝利だけを意味するものではありません。汚染を引き起こしている企業の短期的な利益よりも人間の健康を重視し、より安全な社会を次世代に残すことを国際社会が選択した、という画期的な政治意思を示すものです」
(グリーンピース・インターナショナル 有害物質問題担当ゼイナ・アルハッジ)

発効後の各国内での実施が次のステップ

ストックホルム条約は、企業による新しいPOPsの開発、流通、リサイクルを禁止することもその目的としています。これは、化学業界が新しい有害化学物質を市場に出すことを禁止し、企業に代替原則 ( 注4 ) の採用を強制するものです。グリーンピース・インターナショナル政治アドバイザーのケビン・ステアーズは、締結国に国内実施計画を作成する際の注意を促しています。

「この条約のさらなる挑戦は、その実施にあります。例えば、ごみ焼却炉の改修などでダイオキシン類の放出を削減するという短期的な逃げ道を探すのではなく、そもそもごみを減らすという根本的な解決策に取り組むべきです。その方が持続可能で、経済的でもあります」

注1)残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)に関するストックホルム条約は、通称POPs条約とも呼ばれ、予防原則に基づき将来的に全ての残留性有機汚染物質を段階的に廃止していくことを目指す国際的な枠組みを定めた条約。

http://www.pops.int (国連環境計画のサイト)

注2)この条約は50番目の国が締結後、90日後に発効する。(第26条)

注3)ストックホルム条約の署名・締結国リスト。

http://www.pops.int/documents/signature/signstatus.htm (国連環境計画のサイト)

注4)ある活動や製品が環境や健康に重大で、不可逆的な影響を与える脅威があるとき、代替活動、代替製品が採用され使用されなければならないという原則。