放射能調査の現場から:帰還困難区域で見たこと
こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。
放射能調査のために、福島県浪江町津島にきました。
多くのみなさま方からのあたたかいご寄付で、今年の調査も実施することができました。ほんとうにありがとうございます。
帰還困難区域ですが、5年後の避難指示解除を目指していて、今年の5月から除染作業が始まっているところです。
浪江町民の菅野みずえさんと一緒です。
菅野さんは、政府による帰還に関する住民説明会が開かれたとき、除染作業の方の放射線防護についてしっかりやるように要望したそうです。
そのときの国の答えは「当然やります」。
けれども、先週菅野さんのお連れ合いが津島で見たのは、マスクもなしに除染作業に従事する作業員の姿でした。
防護なしに除染労働
『除染労働』(三一書房: 被ばく労働を考えるネットワーク編)には、マスクの支給を環境省の福島の支所に電話で要望した作業員が解雇を宣告されたという証言が載っています。その方は「解決しないと次の動きもとれないし…」ということで退職を受け入れています。
菅野さんが見たマスクなしのケースは、支給されたマスクをつけていなかっただけかもしれませんが、もし、そうだとしたら、作業員に放射線防護の説明がきちんとされなかった可能性があります。
わたし自身も、去年帰還困難区域でマスクなしで作業する方を見ています。
『除染労働』にも、放射線防護についての作業前講習で「テレビで言われるほど怖くないんだよ」などと言われた例、テキストが回収された例が紹介されています。
そのほかに、下請け、二次下請け、三次下請け…となる過程で賃金のピンハネが起こっていること(本来なら20,000円のはずが12,000円しかもらえなかったなど。5000円という例も)、8畳の部屋に4,5人が押し込まれた、などの実態も掲載されています。
除染労働者については、今年の8月16日に国連特別報告者が「東京電力福島第一原発事故を受けて除染などを行う作業員が放射線被ばくと重大な搾取の危険にさらされている」と声明で指摘しています。(くわしくはこちら)
母屋は残したい
菅野さんの家は、帰還困難区域の浪江町津島にあります。
解体するなら今、申し込まないと
後になると解体費用が自費になると言われています。
解体は被ばく労働となり、測定、除染作業も行うことになります。
解体廃棄物は核廃棄物となり、測定、除染含め大変な費用がかかります。
それでも、100年は大丈夫と言われた家。
この家は、家族が住んできた、という証。
やっぱり、母屋は残したい。
チェルノブイリでは、事故から32年たっても、いまだ立ち入り禁止となっている地域と同じレベルの放射能のある土地が、日本では除染して帰還、ということになっています。
浪江町は駅周辺や住宅街部分が概ね避難指示解除されていますが、今日の人口は848人。
しかし、菅野さんは、その848人には、役場の職員や、住所を移した除染労働者や福島原発に働きにきた方も含まれているといいます。
菅野さんは、2011年3月当初、ご自分も大きな被ばくを受けながら、今、除染労働者の被ばくに心を痛めています。
グリーンピースによる放射能調査は10月28日まで。
11月7日(水)、新潟市で結果の一部を速報として報告します。
菅野みずえさんもお話しくださいます。
ぜひ、お越しください。
11月7日(水)18:00〜20:00 ときめいと(新潟駅南口直結)
報告
●浪江町、新潟県境調査結果(速報)
ヤン・ヴァンダ・プッタ:グリーンピース調査チームリーダー/放射線防護アドバイザー。チェルノブイリ、福島など放射能調査を多く手がける。
(逐次通訳つき)
●浪江町民の体験と思い
菅野みずえさん:福島県浪江町住民。兵庫県に避難中。本調査に同行。
主催/問い合わせ:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
協力/新潟県平和運動センター、原発からいのちとふるさとを守る県民の会
定員:60名(定員に達し次第〆切らせていただきます)
参加費:無料