こんにちは、エネルギー担当の高田です。 今日、原発メーカーである日立製作所の株主総会に出席しました。
グリーンピースは、経営陣に直接、脱原発を働きかけるため日立などの株主となっています(※)。
東京ドームシティホールで開かれた日立の第145回株主総会では、壇上に50名ほどの取締役ら役員がずらりと揃い(ちなみに女性は2名のみであることに驚きました)、事業報告などの説明がありました。そのあとに、出席している株主からの質疑の時間があります。
「原発で社会の発展に尽くしたい」
私の席は前から5列目の中央、東原社長の表情も確認できる距離。質疑が始まって真っ先に手を挙げると、一番に指名してくださいました。
そこで、グリーンピースですと告げたうえで、「今後は原子炉の製造を止め、福島原発事故の収束と放射性廃棄物の処理に技術を集中すると発表し、日立の強みを生かして自然エネルギー拡大を進めることが、倫理的にも経営的にも最善と考えますが、東原社長はどう考えますか」と質問しました。
これに対し、東原社長は答えず、原発担当の執行役常務が、「国のエネルギー基本計画でも原発は重要だとされているので、メーカーとしてきちんと支えていきたい。日立グループの中核の事業として、原発で社会の発展に尽くしていきたい」と回答しました。
その後の質疑でも、他の株主から日立の原発事業への言及がいくつもありました。
合計16人の株主が質問、内訳は以下のとおりです。株主総会でおなじみの株価や配当についてよりも多くの質問者が、原発について発言しています。
- 原発について言及:6人(推進反対3、推進賛成2、その他1)
- その他事業について:5人
- 株価・配当などについて:3人
- 技術情報の管理について:2人
原発事業の売り上げは?
質問者の一人は、原発事業に反対の立場としたうえで、「原発事業の現在の売り上げはいくらか。今後も推進というなら数値目標を具体的に教えてほしい」と質問しました。
これに対して日立側は、「福島原発事故以降、事業規模は3分の2となり、昨年度は1,100億円規模となっている。今後、国内外で原発事業を進め、2020年にはこれを倍くらいにしたい。これ以上の詳細は公開していない」と回答。会場からは「株主に公開しないで、誰に公開するんだ」との声が上がりました。
また、別の質問者への回答として、東原社長は、「原発は、地球温暖化対策からも、エネルギー安定供給、経済性の観点からも非常に重要だというのが、日立の基本的な考えだ」と発言しました。
こうした日立の経営陣からの発言には失望すると同時に、とても矛盾を感じます。
温暖化対策のために原発は役に立たないばかりか、むしろ障害となります(詳しくはこちら)。
原発の燃料のウランは、海外から全量輸入しています。また、事故などで停止すれば稼働の見通しは非常に厳しく、「エネルギー安定供給」の視点からも疑問です。実際に、全国で稼働原発ゼロが9カ月続いています。
さらに、発電の時に発生する放射性廃棄物の処理方法も決まっておらず、原発が稼働すれば数年で「ごみ置き場」は一杯になってしまいます(6月20日、日経新聞:使用済み核燃料、空冷で プール保管の限界近づく)。10万年(!)もの長い間の放射性廃棄物管理や、事故時の除染や賠償を考えれば、経済的に有利とは到底言えません。
ブラックジョーク?
日立はグローバルなブランド戦略として、17カ国で「IT’S OUR FUTURE」(これが私たちの未来)とのメッセージを打ち出しています。福島原発事故で自社製品が大惨事をおこし、大損害を引き起こしているにもかかわらず、「これが私たちの未来」として原発推進を続けるのは、ブラックジョークなのでしょうか(上の画像は日立のウェブページ)。
日立の「IT’S OUR FUTURE」ブランドキャンペーンページには、たくさんのイノベーション例が並んでおり、太陽光や風力発電の装置などがきれいな写真とともに紹介されています。でも、原発のことはひとつも出ていません…。
過去ではなく未来を見据えた経営判断を
日立のパートナーであるアメリカのGE社は、イメルト会長が原発を「hard to justify」(正当化するのが困難)と語り、ライバルであるドイツのシーメンス社は原子力事業からの撤退をすでに表明しています。
原発が日立の売上高に占める割合はわずか1%です(2013年度)。
日立には、過去ではなく未来を見据えた経営判断を期待します。
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日立との手紙のやり取りなど、グリーンピースの原発メーカーへの働きかけはこちら
※グリーンピース・ジャパンは、脱原発と自然エネルギーの飛躍的導入を求め、株主総会への参加・議決権行使などのために、東京電力、関西電力、および日立製作所の株式を最小単位で購入しています。(昨年の日立株主総会への参加報告はこちら)