2020年最新放射線調査

グリーンピースでは、東京電力福島第一原発事故発生直後の2011年3月26日から27日の第1回から継続的に32回、おもに福島において放射性物質および放射線調査を行っています。

今回の第32回目調査は、2020年11月19日から21日に、福島県浪江町と飯舘村で実施しました。これまで継続して調査を行ってきた飯舘村の民家、浪江町の帰還困難区域にある民家、浪江町の避難指示解除地域内にある幼稚園と小学校周辺、そして北側に避難指示が解除された区域、南側に帰還困難区域という境界を流れる浪江町の高瀬川で空間放射線量を調査しました。

詳しくは調査報告書『福島第一原発 2011-2021年:除染神話と人権侵害の10年』 をご覧ください。

調査結果概要

グリーンピースの放射線専門家チームは2011年3月26日以降、過去10年間で32回の調査を実施してきました。主な調査結果は以下の通り。

  • 飯舘村の民家(安齋氏宅)では、家の周り11のゾーンのうち5つのゾーンで、すべての測定値が政府目標の毎時0.23マイクロシーベルトをいまだに上回っており、すべてのゾーンの平均値は 毎時0.5マイクロシーべルトであった。

  • 浪江町の小学校と幼稚園の近隣の森林の822地点で測定したところ、いまだにすべての測定箇所で目標値の毎時0.23マイクロシーべルトを超えており、その88%において毎時1マイクロシーべルトを越える値が検出された。小学校のすぐ外のエリアでは、測定箇所の93%が除染目標値の毎時0.23マイクロシーベルトを超えたままであるにも関わらず、2017年3月以降一般に開放されている。

  • 高瀬川岸辺沿いの区割りしたゾーンの一つで は、測定箇所の70%で、日本政府の算出方法に基づき年間3~5ミリシーべルトとなる放射線レべルが検出された。

  • 以前は広範な除染作業の対象であった、浪江町の帰還困難地域にある民家(菅野氏宅)では、測定箇所の98%の空間線量が年間最大被ばく線量である年間1ミリシーべルトを超えている。測定箇所の70%で、空間線量は政府の算出方法に基づく年間3~5ミリシーべルトの被ばくに達すると考えられる。

調査結果から言えること

福島県飯舘村南部の民家、浪江町の民家などの放射線測定調査から、再汚染が起こっている状況が明らかになり、過去10年の調査をもとに、以下を提言としてまとめました。

  • 生涯にわたって考えられる住民の被ばくリスクを含む科学的分析をしない現在の帰還計画を中断する。
  • 年間1ミリシーべルト(毎時 0.23 マイクロシーべルト)の長期除染目標が意味するも のを、速やかに示す。毎時 0.23 マイクロシーべルト達成の期日を定め、目標を緩和するあらゆる計画を中止する。
  • セシウムが含まれた微粒子など、ホットスポットが一般公衆にもたらすリスクを早急に評価する。
  • 浪江町(津島、室原、末森、大堀地区を含む)、双葉町、大熊町、富岡町、飯舘村、葛尾村の6町村の避難指示解除計画を見直す。
  • 労働者を保護するため、帰還困難地域での除染はやめる。
  • 避難政策について、避難当事者(避難指示区域外からの避難者を含む)が参加する協議機関の設置を含め、住民の意見を反映させる透明性の高いプロセスを構築する。
  • 住民が経済的な理由により帰還を選ばざるを得ないような状況ではなく、自らの意思によって帰還するかどうかを選択できるよう、避難者に対する完全な賠償と経済的支援を行い、科学と予防原則に基づいた被ばく低減策を講じる。
  • 国連特別報告者からの対話とガイダンス、およびまだ受け入れていない日本訪問の申し出に応じる。

詳しくは調査報告書『福島第一原発 2011-2021年:除染神話と人権侵害の10年』 をご覧ください。

プレスリリース:福島第一原発事故10年、特別除染地域の85%で除染進まず 廃炉計画では新たな代替案が不可欠

グリーンピース特設サイト『写真と証言で綴る12人の10年 福島の記録』

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