[年次報告書2024] 使い捨てない豊かな生活をめざして
この投稿を読むとわかること
私たちの暮らしにあふれるプラスチック。どこにでもある便利な素材が、気候変動、生物多様性の損失、汚染という地球の3つの危機を静かに進行させています。このままではプラごみ量が2060年には3倍まで増え、海に流れ出たプラスチックが魚の数を上回る日もそう遠くありません。グリーンピースは国際社会のルールづくりを後押しし、地球にやさしい仕組みへの転換を企業に働きかけることで、プラスチック問題の解決に取り組んでいます。
コンビニとカフェの使い捨てカップや容器包装 消費量と環境負荷を調査・分析


カフェ大手(スターバックス、タリーズ、プロント)とコンビニ大手(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)を対象に、各社が排出する使い捨て容器包装の量を調査しました。その結果、カフェ3社で4億7,480万個のカップ、コンビニ3社で19億7,860万個のカップが1年間で廃棄されたことがわかりました。
また、これらの企業がリユースカップシステムを導入した場合に減らせる環境負荷をライフサイクル分析(LCA)を用いて数値化すると、1日のテイクアウト飲料を繰り返し使えるリユース容器にすれば、1カップあたりでCO₂排出量57%、水の使用量36%、化石燃料の消費量62%を削減できる結果となりました。これらのデータをまとめた報告書を発表し、使い捨て容器包装を大量に排出する企業がリユースに転換することで、環境に好影響を与えられることを訴えました。
コンビニやカフェチェーンにはこれまで具体的な提案や連携強化の働きかけも行っており、数社がリユース実証実験に参加したり、リユースシステム導入を検討したりする動きにつながっています。
リユースの仕組みに関する意識調査を実施

マイボトルやタンブラーを所有する人を対象に、リユースの仕組みに関する意識調査を実施しました。その結果、カフェやコンビニでのテイクアウトでマイボトル・タンブラーを使用する割合は低くとどまっていることが分かり、容器持参の限界やデメリットも浮き彫りになりました。一方、企業が容器の貸し出し・回収・洗浄まで担うリユースの仕組みが普及すれば、デメリットを解消できる可能性もわかってきました。消費者の努力だけでは気候変動や環境汚染の解決には限界があり、より実効性のあるリユースシステムの導入が求められることが示されました。
ゴミゼロでお買い物ができるマップを公開

使い捨て容器包装のごみを出さずにお買い物したい──そんな思いに役立てるよう、Webマップ「グッバイ・ウェイスト」をリニューアル公開しました。このサイトでは、リユース容器の貸し出しを行っている事業者や飲食店を地図上で探すことができるほか、「事業者のサービス内容を知る」「国内外のリユース情報にアクセスする」といった機能を搭載しています。企業によるリユースシステム導入の重要性を明確に伝えるとともに、すでに運営されている全国のリユースシステムの可視化を実現しました。ぜひ一度のぞいてみてください!
野心的な国際プラ条約をめざし、国内外でキャンペーン

プラスチック汚染の根絶をめざす国際条約の制定が重要な局面を迎えています。グリーンピースは世界中のオフィスで連携し、プラスチックの生産制限とリユースを推進する野心的な条約が定められるよう、国際的な政策提言活動を展開しました。
条約締結に向けて韓国の釜山で開かれた政府間会合に先立ち、日本、韓国、台湾が年間4,199万トンに上るプラスチック生産能力を持つことを調査し、報告書にまとめ公開しました。生産制限が条約に盛り込まれなければ、二酸化炭素換算で9,993万トンがわずか3市場で排出される可能性を示しています。
この会合には、日本からもスタッフが現地参加。会議が始まる前、現地ではグリーンピースも参加する国際ネットワークが強力なプラ条約を求めて、会場周辺でパレードを実施。約1500人が参加し、プラ汚染NO!という意思を政策決定者に向けてアピールしました。
この会合では条約合意に至らなかったものの、世界の各団体と連携して抜け穴だらけの条約が制定されるという最悪の事態を回避し、次につながる可能性を残すことができました。
多様なステイクホルダーを巻き込み国内世論を活性化 産官学シンポジウムの開催や若者会議立ち上げ

韓国での政府間会合を前に、グリーンピースとイクレイ日本事務局は国際プラスチック条約シンポジウムを共催しました。前年に続いて2回目のシンポジウムで、環境省や企業、市民団体、研究機関などからの登壇者らが情報共有と議論を行い、約100人が参加して盛況となりました。
また、COPとは異なり、プラスチック国際条約には若者の参加機会が多くなかった現状を変えたいと考え、次世代の声を国際プラ条約に反映させるために、「プラスチック若者会議」を立ち上げました。プラスチック問題に危機感をもつ13歳~30歳までのユース世代約50人が全国から参加し、専門家や関係省庁へのヒアリングをもとに提言書を完成させました。関係省庁や政党に提言を届け、シンポジウムでも発表するなど、若い世代とともに未来を描き、その声を産官学に伝えました。
世界350社の企業が署名 国際機運を高める
グリーンピースは他団体と協力し、各国政府に強力な国際プラ条約の採択を求める公開書簡プロジェクト「Champions of Change」を実施しました。日本のリユース企業3社を含む、世界の350社以上が署名する大規模なキャンペーンとなり、経済界や市民社会と連携して国際的な機運を高めました。
