日本のプルトニウム輸送船の到着を目前に控え、環境保護団体グリーンピースが入手した極秘外交文書によると、1990年代初めクリントン政権が東京の米国大使館から、日本のプルトニウム利用政策は、朝鮮半島の核拡散を抑制する米国の努力を直接脅かしているという、警告をうけていたことが判明した。

米国が、他の地域の国々でプルトニウムを入手するのを止めようとしている一方、日本のプルトニウム利用計画を支援することは、米国の基本政策と矛盾していると、グリーンピースと韓国の環境保護団体KFAMは米国政権を非難した。
現在の米国の政策は致命的な失敗となり、この地域での緊張は高まり、核兵器の拡散が広がっている。

外交文書は1993年に海外電報で構成され、1994年には米国のモンデール駐日大使とアーマコスト駐日大使から、ワシントンのウォ―レン・クリストファー国務長官、その他の政権高官等そして世界中の大使館に送られた。
東京の米国人政治・軍事アナリスト等は、日本の武器転用可能なプルトニウムの蓄積は、「かなりな量」になっていると指摘しており、日本のプルトニウム利用政策は不経済で、なぜそのように多くのプルトニウムを蓄積し続けているのかという疑問を抱かせる。
「世界には武器の原料がすでに十分にあるのに、まだ持とうとしているのか?」*1

グリーンピースは、2隻の英国船籍のプルトニウム輸送船パシフィック・ピンテール号とパシフィック・ティール号の到着を前に、この文書を公開した。2隻は、警備上の問題点、核と弾道ミサイルの拡散という危険性の増加を抱えながら、9月の後半には日本に到着する予定である。
クリントン政権は、今年初め英国・フランスから日本への450kgのプルトニウム輸送を認めた。
7月21日に欧州を出発したプルトニウム輸送船は、60個以上の核兵器を作るのに十分な量を積んでいる。カリブ海諸国、南アフリカ、ニュージーランド、南太平洋諸国は、1992年に行われたプルトニウム輸送船あかつき丸以来初めての、今回の輸送に対し強い反対を表明している。

「ワシントンに対してこれらの警告が行われた時、日本の武器転用可能なプルトニウムはおよそ10トンあった。中国、英国、仏、イスラエル、インドの保有している核兵器すべてを合わせたもの以上の量である。
今日、国際社会と米国による核不拡散政策の完全な失敗の結果と英国、仏の活発な支援のおかげで、日本は戦略的にプルトニウムの貯蓄を増加させた。最近の見積もりでは、日本は30トンを保有していると言われている。それは4000個の核兵器以上を製造するのに十分な量である」と
本日行われたソウルでの共同記者会見で、グリーンピースのショーン・バーニーとKFEMのチョイ・ヨルは述べた。

日本の原子力発電所で使用される濃縮ウランの最大量の供給国として米国は、使用済み燃料のプルトニウムの管理を施行する法律を定めている。
政府に支援されている日本の電力会社は、欧州の再処理工場へ使用済核燃料を輸送している。英国・仏の両政府、再処理会社であるBNFLとコジェマ、最近ベルギーのプルトニウム産業は、日本の核貯蔵計画を活発に促進している。

プルトニウム産業は、欧州での産業崩壊に危機感を持っており、韓国の直接使用核兵器物質の入手を防ぐという米国の長年の立場へ、果敢な抵抗をする韓国と必死に新しい契約を得ようとしている。
コジェマとBNFLは、1970年代と80年代に日本に行ったと同じように、契約を得る目的のために韓国に事務所を構えた。*2

外交文書によれば、モンデール駐日大使とアーマコスト氏は、日本のプルトニウム貯蔵に引き起こされる核拡散の危険性を、ワシントンに対し警告した。特に日本に武器転用可能なプルトニウムが大量にあることが、韓国の核利用計画にマイナスの影響を与える。1993年のある外交文書で疑問が投げかけられている。

「もし日本が大量のプルトニウムリサイクル計画に乗り出したら、韓国と諸国が再処理計画を強引に推し進めないと、日本は予期できるか。
日本がプルトニウムで溢れかえり、この地域に心配の種を作る先端のロケット技術を保有しているという認識があるのだろうか」(アーマコスト駐日大使からクリストファー国務長官へ / 1993年月)

1970年代以来米国の政策は、秘密にされた核兵器計画で、核兵器が使用されるという恐怖のため、韓国がいかなるプルトニウムを入手することを積極的に防ぐよう求めてきており、現在に至っている。

ここ数週間日本の核の野望についての疑惑は更に深まっている。8月初め、ある自由党の議員は、日本は原子力爆弾を開発すべきだと提案した。*3
さらに、日本政府への核顧問と日本のプルトニウム利用計画の強い主唱者は、日本を「実質核兵器保有国」と日本を表現している。*4

「プルトニウム火種は、すでにこの地域にくすぶり始めている。クリントン政権を含む国際社会が “選択した拡散政策” を中止しなければ、地獄となるかもしれない。 平和的意志があるどの国であっても、どんなことであってもプルトニウムに手を染めるべきではない。日本は、アジアにおける核対決を止め、不合理で危険な計画を中止するために行動すべきである」とバーニーは述べた。

グリーンピースの船アークティック・サンライズ号は、現在プサンに停泊中で、日本のプルトニウム輸送と利用計画の危険性を訴えるため、来週来日する。



*1:外交文書を入手されたい方は、グリーンピース・ジャパンまでお問い合わせください。
*2:英国政府所有のBNFL社は、米国の政策に直接挑戦する形で、近年MOXプルトニウム燃料を韓国電力に供給する契約を得ようとする動きを見せている。コジェマ社は、現在ウルシン原子力発電所の敷地内に使用済核燃料を貯蔵する支援をしながら、最終的にフランスへ再処理をするために輸送をしようとしている。
*3:1999年8月2日付・ワシントンポストで、西村眞吾氏がコメント。
*4:1999年8月12月・Nucleonics Week で報告されている “Department of Nuclear Engineering and an advisor to the Japan Atomic energy Commission” 東京大学鈴木篤之教授へのインタビュー