アメリカの石油メジャー、エクソンモービル社のブランドであるエッソをボイコットするキャンペーンが行われてきたイギリスで、9月3日、新たな数字が明らかになった。イギリスの大手社会調査会社MORI(Market & Opinion Research International)の、世論調査によると、いつもエッソの石油スタンドでガソリンを購入すると答えた人の数が、この一年間で約四分の一減少し、100万を超えるドライバーが、エクソンモービルの地球温暖化に対する姿勢を理由に、エッソ石油をボイコットしている(注*1)。

MORI が2001年8月と2002年7月に行った世論調査:

質問:「ガソリンと軽油を買うとしたら、どのブランドをいつも買いますか?」
回答:
2001年8月回答 エッソ26% 英国石油 18%
2002年7月回答 エッソ19% 英国石油 21%

質問:「アメリカの石油会社エッソ(エクソンモービル)が地球温暖化防止の取組みをブロックしようと試みていると環境保護団体が主張しています。環境保護団体は、この会社の振舞いを変えるために、人々がエッソのガソリンスタンドから買うのをやめることを提案しています。もし頼まれたら、あなたは、エッソスタンドからガソリンや軽油を買うのをやめますか?」
回答:
2002年7月、47%の人が「頼まれればやめる」と回答し、5%の人が「すでにエッソからガソリンを買うのをやめている」と回答した。

この二つの調査は、2001年8月9日~14日、2002年7月25日~30日に行われ、976人の大人(15歳以上)、998人の大人(15歳以上)を調査対象とした。聴き取りは、屋内、対面式で行われ、それぞれ194個所(昨年)、191箇所(今年)の聴き取り地点は英国全域である。データは人口構成に併せて比重調整処理してある。

世界でもっとも潤沢な資金をもつこの石油会社に対するボイコットキャンペーンは、昨年エクソンモービル社が、米国の京都議定書の離脱を働きかけていたことがわかった後に開始された。先週まで開かれていたヨハネスブルクサミットでも、エクソンモービルは、再生可能エネルギーの普及の第一ステップとなる目標設定の交渉を妨害し、再生可能エネルギーを世界の最も貧しい地域にもたらそうという国際的な努力を阻んだことが非難されている。

ヨハネスブルクサミットを前に、エクソンモービル社のフロントグループ(注*2)からブッシュ大統領に送られた書簡(注*3)は、米国政府に対し、“反西欧主義的(Anti Western)な”ヨハネスブルク・サミットにおいては、新たないかなる協定にもサインしないよう求めていた。この書簡に署名した団体は、エクソンモービルによって100万ドルを超える多額の資金提供を受けており、彼らは書簡の中で、清潔な飲料水の不足こそ“最大の環境的な障壁”であり、地球温暖化は“もっとも重要性の低い”問題である、という主張を始めている。そして、ブッシュ大統領に、気候変動を議論の舞台から降ろし、世間の注目が集まらないようすることを求めていたのである。

そして、ヨハネスブルクサミットで、米国政府の交渉担当者らは、水資源の問題に関しては合意をし、気候変動に取組むというサミットの中心課題である再生可能エネルギーの交渉もブロックした。合意された最終文書のいくつかの文言は、米副大統領ディック・チェイニーのエネルギープランを反映し、それと近似したものになっている。

これに対し、調査会社MORIによる数字は、エッソ(エクソンモービル社)による妨害工作が度重なるにつれ、多くの消費者が行動を始めたことを示している。ビアンカ・ジャガーさんなど著名人も巻きこみ、人々の高い関心と参加を集めたイギリスのエッソボイコットキャンペーンは、温暖化対策を阻むエクソンモービル社の数々の振舞いを照らし出し、一般市民の間でエッソに背を向ける人々が増えてきたことを示している。

昨年、「いつもガソリンを入れに行くスタンドがどこか」を尋ねた調査では、ガソリンを購入する人の26%がエッソ石油と答えていた。が、今回の調査ではそれが19%に落ちた。同時期に行われた調査で、「いつも英国石油」に行くと答えた人は昨年の18%から今回は21%に伸びた。英国石油は、エッソ(エクソンモービル社)と異なり、気候変動が起きているという事実と、それが人間活動の結果であるということを認めている。

2002年6月、MORIの調査で5%のドライバーがすでにエッソをボイコットしており、47%の人が、もし環境保護団体に頼まれれば自分もボイコットに参加すると回答している。

グリーンピース・イギリスの気候変動問題担当社ロブ・ギュタボックは「エッソ(エクソンモービル)は、ここ何年にもわたって、地球温暖化に取組むための大切な努力を妨害してきた。ヨハネスブルグサミットでの再生可能エネルギーの扱いを攻撃しようという試みもその一つである。しかし、いまや、エッソはその代償が大きいことを、英国では100万のドライバーのボイコットにより、給油スタンドの売上を通して思い知ることになるだろう。いま、更に拡がっているボイコットに参加することで、誰もが何かしらの協力ができるのである。」とコメントしている。

エクソンモービル社のフロントグループからブッシュ大統領への手紙は、エクソンモービル社の広報最高責任者ゴードン・ソイヤーによって支持されており、彼は手紙に署名した者(団体)を「立派な保守的な団体」と述べている。しかし、それら団体の中には、アメリカからイランへの違法武器輸出が上院の公聴会で調査されている間にキャリアを失墜したオリバー・ノース中佐が、退役後に設立した団体、自由連盟“the Freedom Alliance” がある。またエクソンモービル社がの「立派な」団体という中にはUS National Anxiety Centerも見受けられるが、この団体は、国連が“社会主義者の政策”をもっていると主張しており、それは国連が旧ソ連出身の外交官と、旧ソ連駐在の米国の外交官によって創設されたからであるとしている。同センターのウェブサイトでは、イスラムを“破産した落伍者”と述べている。さらに、署名リストの中のテキサス・イーグル・フォーラムという団体は、その最重要政策課題は、‘同性愛に反対する法律を廃止させようと考える’リベラル派と闘うこととしている組織である。

(注*1)今回のエッソ石油に関する世論調査結果の全容は、MORIのウェブサイトで見ることが出来ます。MORIへの問合せ担当者はJohn Leaman、Andrew Norton +44-020-7347-3000 (英語のみ)

(注*2) フロントグループ:ある特定の組織の意に添った要請や見解を公表することによって世論や政策決定が、その特定の組織に有利になるよう動いている、別の団体をさす。
(注*3 )2002年8月2日付け、フロントグループからブッシュ大統領への書簡 の仮訳

詳しくは、グリーンピース・ジャパン気候変動問題Webサイト、と、STOP Esso サイバーアクションのWebサイトをご覧下さい。

お問い合わせ:
グリーンピース・ジャパン
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気候変動問題担当  関根彩子
広報担当      城川桂子