グリーンピース・ジャパンは、高レベル放射性廃棄物輸送船「パシフィック・スワン」が2月5日(木)にパナマ運河を通過すると予定と現地で発表されたことを受けて、抗議要請文を輸送主体である電気事業連合、日本原燃株式会社、および、外交上の責任を問うために、内閣総理大臣、外務大臣へ要請文を送った。
添付資料:[電気事業連合への抗議要請文]
[輸送に対して反対を表明した国々のリスト]


パナマ運河を航行するには、必然的にウィンドワード海峡、モナ海峡、アネガダ海峡のいずれかを通過しなければならない。最も一般的なモナ海峡の場合、プエルトリコかドミニカ共和国の領海を航行するはずだ。(モナ海峡の幅はわずか120km)ドミニカ共和国もプエルトリコの知事も自国の領海通過には懸念を表明している。

グリーンピースは、電事連への抗議文の中で、
現実に即した安全試験が確立されるまで、輸送を中止すること
他国の領海・経済水域を航行する場合は、必ず事前の了解を得ること
輸送を余儀なくさせている再処理契約を今後一切結ばないこと
を求めた。

日本原燃へは、輸送の中止とともに、高レベル放射性廃棄物のキャニスターの検査体制を確立するまで、受け入れを中止することを求めた。
また、カリブ海諸国を中心に輸送の中止要求が出ている中での強行は今や電事連・日本原燃だけの問題ではなく、外交問題であり、総理大臣、外務大臣に対しては、外交上の責任を問うとともに、再処理からの撤退を求めた。

また、日本原燃広報部がグリーンピースに対し、「沿岸国からの輸送中止要請は承知していない」と回答していたことから、グリーンピースは抗議要請文に加えて、これまで中止を要請したり、懸念を表明した10の国々と地域の声明文を添えて送信した。
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抗議要請文

1998年2月2日
電気事業連合会会長、荒木浩殿


日本の高レベル放射性廃棄物返還輸送船のカリブ海航行強行に強く抗議します。

パナマ現地の新聞、「エル・パナマ・アメリカ」によりますと、英国核燃料公社が高レベル放射性廃棄物輸送船が2月5日(木)にパナマ運河を航行する、と発表したとのことです。現在、船はカリブ海を航行中であると思われます。

グリーンピースの調べで、現在までに、ドミニカ共和国、米国領ヴァージン諸島、グレナダ、セント・ヴィンセント、セント・ルシア、アンティグア・バーブーダ、セント・クリストファー・ネビス、ニュージーランド、ジャマイカ、バハマの10の国と地域が日本の高レベル放射性廃棄物輸送のカリブ海通過の中止を求めたり、輸送に対する懸念を表明していることが明らかになっています。
そうした事実にもかかわらず、パナマ運河の通過を強行するのは外交上からも問題です。国際法でも沿岸国は核燃料運搬船に対しては航路帯の指定ができるとなっているのに、事前通告無しに輸送を強行するのは「航路帯指定」の権利を奪っていることに他なりません。

グリーンピースは以前から、核物質の海上輸送そのものの危険性を指摘、中止を求めていますが、あらためて、以下の点を強く要請します。
輸送容器の安全試験は現状(800度で30分の火災試験など)では、起こりうる事故に対して全く不十分であり、実際の輸送事故例に即した(2,000度で数日間の火災試験など)安全試験の体制が確立され、実施されねばならない。それまでは、輸送を中止すること。

高レベル放射性廃棄物輸送の際、領海、経済水域および近海を通る国々・地域に事前によく説明を行い、必ず事前の了解を得ること。了解が得られない場合は輸送を中止すること。

このような危険な輸送を余儀なくしているのは英仏との再処理契約である。この再処理契約にもとづく使用済み核燃料の輸送は昨年12月にすべて終了したが、再び新たな契約の話がもち上がっている。これは核のゴミの輸送を増やし、危険性をさらに増大させるのみであり、新たな契約は、今後一切結ばないこと。
資料として、今回の輸送に反対を表明している各国・地域の声明文、国際法と今回の輸送についての解説を添付します。同じ主旨で日本原燃、首相、外務大臣にも要請文を送付しています。

グリーンピース・ジャパン
事務局長、志田早苗
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第3回高レベル放射性廃棄物海上輸送にあたって
反対を表明した国と地域のリスト (グリーンピース調べ)

1月02日 ドミニカ共和国、懸念表明。
1月15日 グアム、プエルトリコ、米国ヴァージン諸島、ハワイ、アメリカンサモア選出の米国国会議員、クリントン大統領へ書簡を送り、「輸送の安全性に対する憂慮を表明」。
1月15日 米国領ヴァージン諸島、反対声明。
1月15日 東カリブ諸国連合、非難声明の中でカリブ海を通過する輸送の中止を要求。
1月20日 アンティグア・バーブーダ、反対声明の中で輸送の中止を要求。
1月21日 (「パシフィック・スワン」、フランスを出港)
1月23日 ニュージーランド、懸念声明
1月23日 ジャマイカ、 抗議声明の中でカリブ海を経由する輸送の中止を要求。
1月23日 バハマ、抗議声明の中で、カリブ海を経由する輸送の中止を要求。
1月26日 ラテンアメリカ諸国議会、非難声明の中で米国とパナマ政府に、この種の輸送船の通過を厳しくすることを要求。
1月30日 連邦カリブ諸国ハイ・コミッショナーズ(Commonwealth Caribbean High Commissioners:カリブ諸国12カ国の在英大使の機構)、会議の場で日・仏・英に新規の再処理契約を結ばないよう訴えた。
2月04日 プエルトリコの日本領事館へ向けて市民による抗議行動(予定)
国・地域
リスト ドミニカ共和国/米国領ヴァージン諸島/グレナダ/セント・ヴィンセント/セント・ルシア/アンティグア・バーブーダ/セント・クリストファー・ネビス/ニュージーランド/ジャマイカ/バハマ
(1998年2月2日現在、九ケ国と一地域が声明を出している。)