9月6日から、スイス・ジュネーブで残留性有機汚染物質(POPs)の国際条約策定のための政府間交渉委員会第3回会合(INC3)が開かれている。

INCで対策が検討されている、優先的に対策を行うべき12種類のPOPsのうち、ダイオキシン類など非意図的副生物に関して、今回日本政府は、「全廃(elimination)という目標を設定すると、多くの国が条約に参加しなくなる」と、全廃目標に対して婉曲な反対ともとれる発言を行った。

これに対し、グリーンピース・ジャパンは8日夜、外務大臣、環境庁長官、厚生大臣、通産省大臣に対して「全廃を目指して削減」するという、目標を支持するよう要請書をファクシミリで送付した。

極めて毒性が強く、残留性の高いダイオキシン類については、「削減」という、何らかの排出を許す目標では健康や環境を守ることはできず、ダイオキシン類の発生・排出をなすことを究極目標、とすることが必要である。

非意図的に発生するダイオキシン類、フラン類などのPOPsは、発生源の特定が困難で、これまで主に日本が取ってきた出口対策(end-of-pipe)では、未特定の汚染源を防ぐことはできていなかった。また、すでに特定されている発生源として最大の焼却炉についても、飛灰や残灰、排ガス・排水処理対策によって生じる汚泥などの問題を生じてきた。

条約の策定交渉の場のみならず、国内的にも、日本はダイオキシン類の発生・排出をなくしていくという目標、方針を明示し、ダイオキシンの発生原因となるプロセスや製品を代替することによって未特定の発生源からの汚染もなくしていくことが求められている。




要請書

外務大臣 高村正彦殿
環境庁長官 真鍋賢二殿
厚生大臣 宮下創 殿
通商産業大臣 与謝野馨殿
1999年9月8日


拝啓、時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

9月6日より、スイス・ジュネーブにおいて、ダイオキシン等の残留性有機汚染物質(POPsと略)を国際的に規制する条約を策定するため、国連環境計画(UNEP)のもとで、政府間交渉委員会 第3回会合(INC3と略)が開催されております。グリーンピースは、国際環境保護団体としてこの条約の起草段階から関わってまいりました。
この度、同INC3で昨日示された日本政府のステートメントにつきまして、本状を差し上げております。

現在、INC3では、POPsのカテゴリー別に、検討が行われております。中でも、極めて毒性の高いダイオキシン類、フラン類など非意図的副生物の規制は、最も重要な議題となっています。
地球規模で環境や人の健康をまもるためには、ダイオキシンなどの非意図的なPOPsに関しては、条約が、

「削減」にとどまらず、「発生及び排出をなくすこと(全廃)」(elimination)という全体的な政治的目標をもつこと

及び、

ダイオキシンを発生する製品やプロセスの代替化を求めるものであること

が不可欠です。

今回のジュネーブのINC3にも、グリーンピースから担当者数名が参加しております。
現地からの報告によれば、日本の政府代表団によるステートメントは、「発生および排出をなくすこと(全廃):eliminationという目標をもつと、多くの国が条約に参加しなくなる」という、全廃(elimination)目標に対する婉曲な反対ともとれるものでした。

国連環境計画が今年5月に発表した世界のダイオキシンの排出インベントリーでも、日本の排出は群を抜いて多く(掲載国のみでみれば全体の約半分を占め)、地球規模で見た場合でも日本の負う責任は非常に大きいといえます。
国内で進行するダイオキシンの汚染状況を見ても、排出「削減」のみでは、発生も排出も決してなくならず、「発生・排出をなくす」という確固とした目標が求められています。

先の国会で成立したダイオキシン対策特別措置法を受けて、国内では施行へむけた準備がなされている最中ですが、今、日本がダイオキシン等の発生、排出をなくすという目標を明示することが、国内的にも、国際的にも重要です。

つきましては、開催中のINC3において日本政府が、ダイオキシン類等の非意図的POPsに関して、「発生・排出をなくすことを目指して削減する」という条約の目標を支持するよう要請致します。

敬具
グリーンピース・ジャパン
事務局長 志田早苗