15年前の今日、世界の歴史上もっとも凄惨な産業災害がインドのボパール市で発生した。
1984年12月3日の早朝、ユニオン・カーバイド社の殺虫剤工場から致死性の気体、イソシアン酸塩メチル40トンと、いくつかの未確認の化学物質が回りの環境に放出された。24時間以内に(少なく見積もっても)約6000人が死亡していた。

グリーンピースは、ボパールで行なったサンプリング調査の結果をまとめたレポートを今週発行した。そのレポートでは、15年たった今でも危険な濃度の化学物質がまだ残っていることが明らかになったとしている。
「ボパールの負の遺産」と題したこのレポートによると、工場の敷地が水銀や危険な有機塩素物質によって現在でも深刻な汚染が続いている。また、回りに住んでいる事故の犠牲者が使っている地下水から発見された有機塩素物質の一部は工場が操業していた時代に使われていたものであることがわかっている。
今年の5月に工場内で採取したサンプルを分析した結果、土壌での水銀濃度が、通常の土壌の濃度より2万倍から600万倍も高くなっていることがわかった。水銀は、中枢神経に影響を与える毒性の高い物質である。

グリーンピースは、ボパールにあるユニオン・カーバイドの旧工場を世界の環境汚染地帯のひとつとして指摘し、ユニオン・カーバイド社に対して、工場に残した有害廃棄物の完全な撤去を求めている。この旧工場が15年前に起こした事故によって、約16,000人が死亡し、50万人が負傷したが、その後は閉鎖されている。

「旧工場の敷地内の数ヶ所での有害物質によるひどい汚染の状況がこの調査で明らかになっている。地下水から発見された有害物質の毒性と濃度を考えた上で、地域の住民に安全な飲料水が提供できるように、そして工場の敷地から外へ有害物質がこれ以上漏れないように、直ちに対応すべきである」とグリーンピースの専任研究者、ルース・ストリンガーが言った。

旧工場敷地の北東のかどにある手動の汲み上げポンプからとった地下水が全サンプルの中でもっとも汚染されており、発癌の可能性がある四塩化炭素の濃度は、WHO(世界保健機関)の安全基準の1705倍である。また同じ地下水には、米国環境保護庁(EPA)の飲料水規制値の260倍に達する濃度のクロロホルムが発見された。
井戸水から発見された塩素化合物の原因は「長期間に渡ったユニオン・カーバイド社の旧工場による環境汚染に違いない」とこのレポートでは指摘している。このレポートは、有害物質で汚染されているこの水の長期的な摂取によって、健康に大変な被害をおよぼす可能性があるという結論を出している。

また、工場で発見された一部の化学物質は、残留性有機汚染物質(POPs)であって、環境中で分解しにくく長期的に生物に被害を与える可能性がある。

「ユニオン・カーバイド社の工場周辺の汚染は、企業の無責任な運営と、企業をコントロールできずに安全と人の健康と環境を犠牲にした各国政府の典型例である。ユニオン・カーバイド社が事故後の適切な対応をせずに逃げられた事実は、企業責任を保証すべき法的な、あるいは管理的なインフラに大きなギャップがあることを示している。ボパールでおきたことが2度とおきないように国際的に対策を考えるべきである」とグリーンピースのキャンペイナーであるニティアランド・ジャラナマンは語った。

グリーンピースの旗艦、レインボー・ウォーリア号が現在インドのボンベイに寄港している。
今回インドを皮切りとしてグリーンピースは「汚染なきアジア」を目指して、レインボー・ウォーリア号による約5ヵ間に渡るキャンペーンツアーを開始した。
アジア地域は、途上国での有機塩素農薬によるPOPs汚染から、有害廃棄物の国際取引そして、世界のダイオキシン大気排出の約半分を占める日本など、多様な汚染の実態と潜在性を持っている。地球規模のPOPs汚染という観点からも重要なこの地域で、グリーンピースは有害物質問題のキャンペーンを展開する。ルートはインド(12月) ― タイ (1月) ― フィリピン(2月) ― 香港(3月) ― 日本。日本でのキャンペーンは2000年の4月に予定している。


* ボパールレポートは下記のホームページでご覧になれます。(英語のみ) http://www.greenpeace.org/~toxics/toxfreeasia/rembhopal.html