ロンドンの国際海事機関(IMO)本部で開催されているロンドン条約/議定書締約国会議で10月9日(イギリス現地時間)、東京電力福島第一原発の放射能汚染水について議論が交わされ、すでに憂慮を表明していた韓国に加え、中国、チリも憂慮を表明し、汚染水問題の国際問題化があらわになりました。   ◾️日本政府への質問と回答 会議に出席したグリーンピース・インターナショナル(本部)科学部門のデビッド・サンティロ博士は、「放射能汚染水について国際社会が抱いている憂慮を目の当たりにしました。日本政府は情報提供をしたものの、汚染水をどうするかについては決定していないと繰り返し、海洋放出するのではないかという懸念は深まりました」と述べました(注1)。   サンティロ博士はこの日の会議で、東電福島第一原発の敷地内に保管されている放射能汚染水について、国際協力のもと解決すべきだと訴えました。そして日本政府に、汚染水が処分できる基準を満たすまでの処理にどのくらいの時間を要するのか、トリチウム除去技術の評価の現状、なぜ取り除けるはずの放射能が取り除けなかったのか、また長期保管の可能性について質問しました。   これに対し、日本政府は、事故以来継続的に情報提供をしていること、ロンドン条約/議定書締約国会議は本件を議論する適切な場ではないこと、放射能汚染水は処理されてほとんどの放射性核種を取り除いていること、その処理水の処分方法については検討中であること、もしこの先処理水を放出することになれば、国際放射線防護委員会(ICRP)や国内基準を遵守することを説明し、放射能除去については、設備はトリチウム以外は取り除けるとし、トリチウム除去技術については、今後も進展を注視するとしました。   ◾️各国政府の反応 韓国政府は、放出という意思決定はなされていないことを再確認したものの、近々タンクは満杯になるとして憂慮を示しました。また、もし大阪湾まで船で運んで投棄するようなことがあれば、ロンドン条約に違反することになると指摘しました。そして、汚染水管理計画を国際社会と共有するよう日本に求めました。   さらに中国政府も、汚染水の海洋放出の可能性について憂慮を共有するとし、日本政府に対し、今後も引き続き情報提供がなされることを希望するとしました。   その後、日本政府に発言の機会が与えられ、日本政府は、汚染水の大阪湾への放出を受け入れるとした大阪市長や海洋放出以外に選択肢はないと述べた前環境大臣の発言は個人的なものであり、日本政府の決定に関与するものではないとし、(周辺住民など)ステークホルダーとの議論は継続されると説明しました。   チリ政府は、日本による情報提供に関心を示し、また、ロンドン条約/議定書締約国会議は、本件を議論する適切な場であると主張しました。   一方、フランスは、福島第一原発の汚染水問題は、ロンドン条約/議定書締約国会議ではなく、IAEA(国際原子力機関)の案件であるとしました。これについて議長は、当会議は、IAEAに助言を求めることができると述べました。   ◾️グリーンピースの働きかけ グリーンピース・ジャパンは今年9月、日本全国の1,000人を対象に汚染水の海洋放出の是非についてオンラインアンケートを実施しました。全体の50.8%が「反対」と回答し、その理由として「福島県だけでなく、日本・世界全体に悪影響を与えると思うから」が最多でした(注2)。   グリーンピースは、放射能汚染水は、海洋など環境への放出ではなく、当面陸上で保管し、並行して汚染水から放射性物質(トリチウムも含む)を取り除く技術を適用することを提言しています(注3)。   注1)グリーンピースは、国連の総合協議資格 (General Consultative Status)を有するNGOとして各種の国連の会議に参加しています。 注2)東電福島第一原発の汚染水に関する意識調査結果 注3)グリーンピース・ジャパン「放射能汚染水を海に流さないで」オンライン署名ページ 参考)グリーンピース・ジャパンのブログ:放射能汚染水と国際法(前回のロンドン条約/議定書締約国会議のやりとりを掲載)