国連人権理事会の対日人権審査で、福島原発事故被害者の人権問題に懸念 ーー日本政府は勧告の受け入れを
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、スイス・ジュネーブで本日14日午前(現地時間)に行われた国連人権理事会による日本の普遍的定期的審査(UPR)(注1)の作業部会で、東京電力福島第一原発事故をめぐる日本政府の対応に複数の国の政府代表者が人権侵害の是正勧告を行ったことを受けて、日本政府がこれらの勧告を受け入れることを求めます。
ドイツ、オーストリア、ポルトガル、メキシコは、特に健康への取り組みと、女性と子どもの人権侵害是正を正式に勧告しました。国連人権高等弁務官事務所条約機関と国連特別報告者も、UPRの実施に伴い提出した文書の中で、これらの勧告と同様の懸念を示しています(注2)。
グリーンピース・ジャパンのシニア・グローバル・エネルギー担当のケンドラ・ウルリッチは「ドイツとベルギーは、原発事故の被害を受けた女性と子どもの権利の保護について、日本政府に対して厳しい質問をしましたが、 日本政府はきちんと答えませんでした。日本政府は、自らが署名している国際的な人権条約を守らず、福島の女性と子どもたちを犠牲にしています。女性と子どもは、社会的、経済的な弱者であるだけでなく、放射線の影響を受けやすく、日本政府は、今すぐに、被害者とりわけ女性と子どもの人権侵害の状況を是正すべきです」と訴えました。
福島原発事故によって、国際的な公衆被ばく限度である年間1ミリシーベルトを上回る量の放射能に汚染された地域への帰還は、多くの人権問題を伴います。日本政府は、2017年春にいわゆる「自主避難者」への住宅支援を打ち切り、2018年3月には、避難指示が解除された地域の賠償も打ち切ります。これにより被害者は、経済的な理由によって、汚染された地域に自らの意思に反して戻らざるを得なくなる可能性もあります。このような方針は、日本が締結している複数の人権に関する条約に違反しています。
ポルトガル、オーストリア、ドイツ、メキシコは、日本政府に対して、原発事故被害者への経済面、健康面そのほかの支援の継続を正式に勧告しました。ドイツは、年1ミリシーベルト基準を帰還政策で採用するよう求めました。これは2012年に来日した健康の権利特別報告者の報告にも沿っています。(注3)
国際民主法律家協会(International Democratic Lawyers)代表で、国連人権理事会担当の弁護士ミコル・サヴィア氏は「国際社会は日本政府に対し、原発事故被害者の人権、特に女性や子どもの権利侵害に対処するよう要請しています。 私たちは、日本政府が勧告を受け入れ、その帰還政策を改めるよう強く求めます。被害者は、住宅支援や賠償の打ち切りによって、汚染地に帰るか、貧困に直面するかという選択を迫られています。これは国際的に見ても人権侵害にほかなりません」と語りました。
グリーンピース・ジャパンは、先月、福島原発事故被害者の女性とともにUPRの事前セッションに参加しています。(注4)
注1)国連人権理事会の創設に伴い、国連加盟国(193カ国)全ての国の人権状況を普遍的に審査する枠組みとして盛り込まれた制度。今年は、日本についての審査が行われる。10月の事前セッションのあと、11月の作業部会で国連加盟国すべてが議論に参加、審査結果としての結果文書は3月の人権理事会本会合で採択される。結果文書は、勧告及び(または)結論と被審査国の自発的誓約から構成される。
外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken_r/upr_gai.html
注4)グリーンピースとともに福島のお母さんが、 国連の舞台で日本政府の人権侵害是正を訴え 「被害者への対応が、世界で今後起こりうる原発事故後のモデルになってほしくない」(プレスリリース)