国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は8月20日、長野県諏訪地域の7市町村(岡谷市、諏訪市、茅野市、下諏訪町、富士見町、原村、塩尻市)の住民を対象に行った気候変動に関する意識調査の結果を発表しました。本調査は、今年2月に諏訪湖の御渡りに関する短編映像作品『御渡り』が気候変動に関する国際映画祭のドキュメンタリー部門でグランプリを受賞したことを機に(注1)、諏訪地域の住民が御渡りをはじめ、身近に現れる気候変動の影響や気候変動・温暖化対策についてどう感じているか調べることを目的に実施しました。調査の結果、70%以上の人が土砂災害の増加や農作物への影響に気候変動の影響を感じると回答し、行政による気候変動対策を進めてほしいと回答した人は96%(おおいに・ある程度)にのぼりました。

八剱神社(諏訪市)で記者発表を行った。左から自然エネルギー信州ネット理事の平島安人氏、
八剣神社・宮坂清宮司、グリーンピース・ジャパン、高田久代

<主な調査結果>

  • 諏訪湖で御渡り(御神渡り)が出現しない「明けの海」が6季続いていることを「知っている」と答えた人は88.2%で、特に諏訪市では95.2%と高い水準だった。
  • 気候変動の影響を受けていると感じる現象(複数回答可)については、「土砂災害の増加」が76.8%で最多。次いで「コメ、リンゴ、ブドウ、野菜の収量や品質」が72.6%と農作物への影響への関心が高かった。
  • 気候変動・温暖化を抑えるための政策を進めてほしいか聞いたところ「おおいに進めてほしい」が58.3%で、「ある程度進めてほしい」(37.7%)と合わせると 96.0%が気候変動対策を求めていることがわかった。
  • 進めてほしい気候変動の対策についての質問では、緩和政策では「地域や自然と調和する再生可能エネルギーの普及」が80.1%で最多。適応政策では「風水害への備え・被災者救済」 が75.6%で最も多くの支持を集めた。

>>「諏訪湖『明けの海』から考える気候変動に関する意識調査」報告書全文はこちら

八剱神社宮司、宮坂清 氏
「気候変動について、対岸の火事ではなく、自分に迫ってくるものに対して直視すること、それに対して1人ひとりができることを考えていくことが大切ではないかと思います。それは微々たるものかもしれないが、御神渡りや今回の意識調査が気候変動について考えるきっかけになれば嬉しいです」

自然エネルギー信州ネット理事、平島安人 氏
「なぜ『明けの海』が続くようになってしまったのか?私たちの行いの結果として自然を変えてしまった、このことを強く意識したいです。今までの考え方ややり方を見直し、変えていかなければもっと大変なことになる。将来へのリアルな想像力を持ち、行動を起こすことが大切です。みんなで真剣に考えれば、きっとよい知恵が生まれ、変化が生まれるはず。諏訪の地はその力を持っていると考えています」

グリーンピース・ジャパン プロジェクト・マネジャー、高田久代

「気候変動・温暖化を抑える政策を望む声が年代や性別を問わず圧倒的な多数を占め、全体の96%に達したことは、限定的な調査ではあるとはいえ、気候変動に対する懸念の深さを示しています。また、地域や自然と調和する再生可能エネルギーの普及を望む人が80%を越え、単純比較はできないものの、グリーンピースが7月に実施した他の都県での調査結果と比べても高くなっています(注2)。一方で、温暖化に対して具体的な取り組みをしている人は22.8%にとどまり、65.8% が『自分にできることは何か考えたことはあるがどうすればいいかわからない』と回答するなど、気候変動に関して個人にできる取り組みを想像できない人が多いようです。今後環境NGOとして一層、個人でできる具体的な取り組みを紹介したり、活動の輪を広げていきたいと考えています。また行政においても、地域住民や有権者の声に応え、気候変動対策をより積極的に整備していくことを期待します」

<調査概要>

対象:長野県内7市町村(岡谷市、諏訪市、茅野市、下諏訪町、富士見町、原村、塩尻市)在住の18~79歳の男女1500人

方法:グリーンピース・ジャパンが長野県世論調査協会に委託し、郵送ハガキで実施

期間:2024年6月20日(木)〜 2024年7月23日(火)

抽出方法:受託者が市町村の選挙人名簿から無作為抽出

有効回答数:456人

(注1)グリーンピース・ジャパン プレスリリース「諏訪湖の神事と気候変動描く映像作品『御渡り』 タイの国際映画祭でドキュメンタリー部門審査員大賞を受賞」(2024年2月18日発表)

(注2)グリーンピースは7月に東京都、滋賀県、神奈川県、埼玉県で同様の意識調査を実施した。

以上