グリーンピース・東アジアは4月10日、2023年と2024年の人工知能(AI)半導体製造による電力消費量およびそれに伴う温室効果ガス排出を推計した報告書『Chipping Point(原題)』を発表しました。調査では、2023年から2024年の間にAI半導体製造による電力消費量が世界で350%以上増加しており、AI半導体製造の世界的な拠点である東アジアでは、製造による電力需要の増大が主に化石燃料発電によって充足されていることが明らかになりました。

<主な調査結果>

  • AI半導体製造による世界の電力消費量は、2023年から2024年の間に350%以上増加した。AI半導体の製造地は主に台湾、韓国、日本に集中しており、電力需要の増大は電力網に大きな負担を強いている。
  • AI半導体製造の世界の電力需要は、2030年までに2023年の水準の約170倍に増加し、現在のアイルランドの電力消費量を超えると推定されている。
  • AI半導体製造に関連する電力消費による世界の温室効果ガス排出量は、2024年に357%増加すると推定される。東アジアの電力網は化石燃料に大きく依存しており、2023年には、韓国は電力供給の58.5%、日本は68.6%、台湾は83.1%が化石燃料に依存していた。
  • AI半導体サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量の大幅な増加を防ぎ、大気汚染による病気や関連死を減らすうえで、再生可能エネルギー100%を達成することが不可欠である。

『Chipping Point』全文(英語)はこちら

グリーンピース・東アジア サプライチェーン・プロジェクト・リード、ケイトリン・ウー

「エヌビディアやAMDのような自社工場を持たないハードウェア企業は、AIブームによって数十億ドルの収益を得ていますが、東アジアのサプライチェーンにおける気候への影響を軽視しています。AI半導体製造による電力需要の増加は、本来、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーでまかなわれるべきですが、化石燃料による発電が続いているのが現状です。東アジア地域では風力や太陽光に直接投資する機会が多くあるにもかかわらず、半導体製造企業は有意義な規模で実践できていません。企業が関連するサプライチェーンが環境に与える影響を十分に認識し、メーカーと協力して再生可能エネルギーの利用を拡大することが極めて重要です」