オーストラリア自動車協会(AAA)は、8月14日、実際の路上を走って燃費や排ガス性能を測定する検査の最新結果を発表し、検査対象の15モデルのうち、トヨタのカローラハイブリッドを含む9モデルの燃費が、自動車会社のカタログ燃費より劣っていたと発表しました。AAAは、消費者がカタログ燃費を参考にして車両を購入すると、実際にはより多くの燃料が必要になると指摘し、「実路走行の燃費がカタログ燃費よりよいモデルも存在するものの、検査結果では多くのモデルがより多くの燃料を必要であることを確認した」としています。(注1)

発表された15モデルの結果のうち、スバルのフォレスターについては実路走行燃費がカタログ燃費より優った一方、トヨタのカローラ・ハイブリッドは、実路の燃費がカタログ燃費より7%も劣る結果となりました(下図参照)。いすゞの2モデルについても似た結果となっています。

この実路走行検査は、消費者に対し、燃費や排出ガスのより正確な情報を提供することを目指し、AAAがオーストラリア政府の予算を受けて2023年より実施しているもので、4年間で合計200モデルを検査する計画です。これまでに完了した検査結果は、「実走行検査プログラム(Real-World Testing Program)」で閲覧できます。検査はヴィクトリア州の公道で行われ、運転方法や交通状態で測定結果にぶれが生じないよう厳格なルールに則って実施。検査実施当時の天候、気温、使用した燃料などの情報も公開されています。

今回の調査結果を受け、今後、自動車会社が自社製品を販売する際に、カタログ燃費ではなく実路走行燃費の公開を求める声が高まる可能性があります。販売される車の燃費や排ガスは、実際の路上ではなく、台上試験機で車に走らせて計測するのが従来の計測方法であり、カタログ燃費と実走行燃費の間には違いがあることはこれまでも知られています。坂道走行や乗車人数が増えた場合、エアコンの作動など、現実の燃費や排ガスの実態を把握する必要性については、2015年に発覚したフォルクスワーゲン不正事件が引き金となってより認識が高まってきたと言えます。(注2)

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、塩畑真里子

「トヨタはこれまでハイブリッド車の製造・販売を通して地球環境に貢献していることを盛んに宣伝してきました。しかし、今回のオーストラリアの検査結果は、トヨタの看板の『環境車』であるはずのハイブリッド車が、実際にはカタログ上の燃費より大きく劣る状態で販売されていることを意味し、消費者の信頼を損うことにもつながりかねません。これまでのAAAの検査結果によると、実際の燃費がカタログの数値より悪い車は日本メーカーのものが多く、世界的に環境への関心が高まる中、日本の自動車会社の信頼性への影響が懸念されます。気候危機へ真剣に立ち向かうことを避けているという日本の自動車会社のイメージを払拭するためにも、同社には気候変動対応により真剣に取り組んでいくことを期待します」

以上

(注1)ガーディアン “Toyota hybrid among cars found to guzzle more petrol than advertised, study finds” (8月13日)
Alterna「『カローラハイブリッド、燃費は広告より7%劣る』と豪団体」(8月14日)

(注2)鶴原吉郎「EVと自動運転ーークルマをどう変えるか」岩波新書、2018年