2011年に原発事故が始まってから、放射能汚染水が出続けて、今、およそ100万トンが東京電力の敷地内のタンクに保管されています。 この汚染水をどうするか… 経済産業省では専門家による協議機関をつくって議論しています。そして、2016年、5つの選択肢が示されました。 その5つの選択肢は、どれも、空、海、大地などへ放出するというものです。 このうち政府がもっとも推進している選択肢が、海洋放出です。海洋放出はもっともお金がかからない、とされています。 結論は2019年に出る予定でした。しかし、東電や政府の思うようにコトは進みませんでした。 2018年9月、多核種除去設備(アルプス)が機能せず、処理後でも、危険なストロンチウム90やコバルト60、ヨウ素129などが基準値を大幅に超えていたことが明らかになったからです。 一部のタンクでは、基準を2万倍も超えていました。 処理された水89万トンのうちの、80%以上にあたる75万トンで、除去できるとしていた放射能が除去できていませんでした。 政府は汚染水をどうするかについて公聴会を開きましたが、そこで出た多くの意見は、基準値超えを受けて、議論の前提が崩れた、というものでした。また、福島県の漁業者はあらためて海洋放出の反対を訴えました。 東電はこの80%の処理水をもう一度処理するとしています。 しかし、75万トンもの汚染水を、もう一度処理するには数年かかります。

国の資料より 原子炉建屋の位置が低く、地下水が流れ込む

汚染水が生まれるのはなぜか そもそもなぜ、汚染水が発生し続けるのでしょうか。 それは、地下水が原子炉建屋に流れ込み、高濃度に汚染された水に触れるからです。 それでは、なぜ、地下水が原子炉建屋に大量に流れ込むのでしょうか。 それは、50年も前の設計段階の話にさかのぼらなければなりません。 その当時、原子炉建屋の位置を低くしてしまったのです。 そのために、周囲の地下水が建屋に流れ込み、高濃度に汚染された建屋の水と混ざり、大量の汚染水となります。 その汚染水に含まれる放射性物質を多核種除去設備で処理してタンクに貯蔵しています。 2019年2月21日現在、1,122,901トンもの汚染水が1000基ほどのタンクに保管されています。 (数字は東京電力ホームページより) 危険なトリチウム このタンク内に保管されている”処理済み”の汚染水には大量のトリチウムが含まれます。 多核種除去設備はトリチウムは取り除きません(他の核種も取り除けていませんが..)。 トリチウムは基本的に水なので、植物や動物が簡単に取り込みます。 人体に取り込まれれば遺伝子を傷つける恐れがあります。 トリチウムを除去する技術も存在しますが、東京電力には採用されていません。 そして、国も東京電力も、トリチウムを含んだままの汚染水を環境中に放出しようとしています。 多核種除去設備の利用が失敗した今、東京電力と政府は汚染水をどう管理するか、もう一回考え直さなくてはなりません。 福島県の漁業組合は、一貫して太平洋への放出に反対しています。 海洋放出の選択肢はすぐに放棄されるべきです。

写真:国際海事機関WEBサイトより

汚染水は長期保管を グリーンピースは、国際海事機関の会合で汚染水について問題提起をしています。汚染水は、大型のタンクに長期保管すべきだと考えています。期間は100年以上必要です。同時に、トリチウムを含めて、放射性物質を取り除く技術を開発しなければなりません。 汚染水をどうするかーーそれを決定する際に、もっとも考慮すべきは太平洋の沿岸に住む人々の暮らしと健康、そして広い海全体の環境への影響です。 グリーンピース・ブリーフィング(英文)『TEPCO Water Crisis』