満開の桜の花
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今年も日本各地で桜が咲き、多くの人々が春の訪れを実感する時期となりました。2025年の桜の開花は、西、東日本で平年並、北日本では平年より早くなる予想です。3月24日の東京の開花日を皮切りに、今年も桜前線が上陸します。

一方で、気候変動による気温上昇が桜の開花時期に影響を及ぼしています。本記事では、地球温暖化が桜の開花に及ぼす影響、そして私たちができる桜を守るための具体的な対策について詳しく解説します。

日本の春を象徴する「桜」

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桜は日本の春を彩る代表的な花であり、古くから俳句・短歌、和菓子に用いられるなど、日本の文化に根付いています。関西大学名誉教授の宮本勝浩氏による試算では、日本におけるお花見の経済効果はおよそ1兆1,358億7,149万円に上るとされています*。この数字からも、多くの人々が桜に対して強い関心を持ち、春の訪れを楽しみにしていることがわかります。

日本の桜の多くはソメイヨシノであり、日本全国で広く植栽され、一斉に開花する姿は圧巻です。本来、日本に存在するソメイヨシノは基本的に遺伝子が同一のクローンであるため、すべての株はほとんど同時に開花します。

桜が春に咲くワケ

桜が春に咲く理由は、そのサイクルにあります。前年の夏に形成された花芽が、秋から冬にかけて休眠状態に入り、その後、冬の低温によってその休眠から目を覚まし、春にかけて気温が上昇するにともない花芽が発芽します。

桜の開花のきっかけは「休眠打破」

桜の花芽の成長過程
引用元:桜の花芽の成長過程 気象庁「さくらとうめの観測(生物季節観測)について」より

この冬季の低温による花芽の目覚めは「休眠打破」と呼ばれています。眠っていた花芽は厳しい冷え込みに一定期間晒されることで、開花の準備に入ります。桜の開花のきっかけは「休眠打破」にあります。
休眠打破には約5度前後の低温が続くことが必要なのですが、この低温刺激が不足すると、休眠解除が不完全となり、開花が遅れたり不十分になったりします。温暖な地域でソメイヨシノの育成が難しいのは、この低温刺激が満たされないためです。

一方で、気候変動により、日本のいくつかの地域では、休眠打破後の春の気温が高くなることで桜が早く咲くようになっています。桜の花芽が必要な低温を受けた後、暖かい春の気温が開花を引き起こします。春の気温が早く上昇するほど、桜は早く咲きます。

地球温暖化の影響で桜の開花に異変が起きている

地球温暖化の影響により、桜の開花に異変が起きています。

桜の開花が早まる

まず、桜の開花の早まりについてです。
グリーンピース・ジャパンの調査によると、日本全体で、桜の開花が平均で7.4日早まったことがわかりました。これは、最初の10年間(1955〜1964年)の平均と、直近の10年間(2015〜2024年)の平均を比較した結果です。特定の地域では、この変化がさらに顕著で、札幌では開花が11.6日早くなっています。

桜の開花が遅れる

次に、桜の開花の遅れについてです。
日本気象株式会社の調査によれば、2024年の開花傾向で遅れがみられたのは、東日本、西日本であり、平年より開花が遅れた地域がありました*。開花が遅れた背景として、11月〜1月にかけての気温が高く、休眠打破の時期が平年より遅れたことが影響したとされています。

桜が咲かない未来へ向かっている

出典元:株式会社ウェザーニュース「2100年の桜開花予想 温暖化の影響で桜は咲かなくなる?桜の開花日の変化」

九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻 丸岡知浩・伊藤久徳氏は、地球温暖化の桜の開花への影響について以下のようにシミュレーションをしています*

  • ソメイヨシノの生長が早まり、開花日は早くなる(南限付近を除く )
  • さらに気温が高まると、休眠打破の遅れが目立つようになって次第に遅くなる
  • その後、さらに開花は遅れて結果的に現在よりも遅くなる
  • 満開にならない年が発生する
  • 開花しない年が発生する
  • 開花しなくなる

また、同氏の調査によれば、2032〜2050年、2082〜2100年の両方の期間で、種子島や南九州のいくつかの場所では、開花が起こらないと予測しています。

本調査のように、地球温暖化による気温上昇と休眠打破の遅れの影響で、桜が正常に開花できなくなるリスクが高まっています。その結果、日本の南部地域を中心に、桜が満開にならない年や開花しない年が現れ、最終的には桜が咲かなくなる未来が訪れる可能性があると同氏は警鐘を鳴らします。

前述した「桜の開花の早まり」と「桜の開花の遅れ」は、このシミュレーションで示された流れが現実に起きていることを表しています。私たちはこのシミュレーションどおりの未来にならないために、何ができるのかを考える必要があります。

地球温暖化から桜を守るために、わたしたちができること

このような未来を防ぐために、私たちができることにはどんなことがあるのでしょうか。

まず、個人ができる取り組みとして、日常的に二酸化炭素の排出を減らす工夫が挙げられます。地球温暖化が加速するおもな原因として、人間活動により排出される二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの影響があります。

日常生活を振り返り、再生可能エネルギーへの移行、公共交通機関の利用、リユースの活用を推進することは、地球温暖化の進行を抑え、桜をはじめとした自然の風景を未来に残すための重要な行動です。

また、自治体や企業、NPO・NGO団体と協力し、環境保護のための活動に参加することもおすすめです。グリーンピース・ジャパンは気候変動を主軸に長きにわたる調査・分析から得た専門性と継続的な活動により、ローカルからグローバルまで多角的なアプローチで環境保護活動を推進しています。そのため、一人一人の力だけでは難しい大規模で影響力のある活動ができ、より良い未来を実現するためのインパクトを生み出すことができるのです。

実際のグリーンピース・ジャパンのCOP会議への参加や脱炭素社会のシステム作りに向けた積極的な関わりについては、「【COP29】アゼルバイジャンでCOP29きょう開幕ーー各国指導者は気候変動資金調達めぐる意義ある合意を」ご覧ください。

春の風物詩である桜を愛でる文化を日本で生み出してきた自然の仕組みは、気候変動により大きな岐路に立たされています。桜をはじめ、日本の四季、地球環境を守るための行動をともに選びましょう。