地球沸騰化時代の到来

「地球温暖化」の時代は終わり、「地球沸騰化」の時代がきた、と国連のグテーレス事務総長が記者会見を開いて警告しました(2023年7月27日)。日本でも、熱中症で緊急搬送される人の数が7月だけで3万人を超えたそうです。テレビなどでもお「我慢しないでエアコンをつけて」と呼びかけがされています。

でも、エアコンが利かない場所があります。それは、教室です。現在「教室を断熱改修して」という署名が始まってます。

エアコンが利かない場所

なぜ、エアコンが利かない教室があるのでしょうか。住宅の省エネ基準ができたのが1980年。この基準に断熱性能が含まれ、まったく十分なレベルではないのですが、住宅の壁などに断熱材が入るようになりました。

日本の既存住宅の断熱性能
(2030 SDGsで変える Powerd by 朝日新聞 記事内グラフを元に作成)

日本の既存住宅、約5400万戸の断熱性能、オレンジで示されているのが現在の基準でを満たしている家で、1割程度。残りはそれ以下の断熱性能しかありません。それでも、無断熱は3割少しです。

現在建てられている住宅では、屋根、壁、床下などに断熱材を入れたり、窓を樹脂サッシや複層ガラスなどにして、外の熱を伝わりにくくしていると思います。

冬の暖房時に外に熱が逃げる割合の例
(出典:国土交通省ウェブサイト)

日本の学校、ほぼ無断熱?!

しかし、文部科学省にといあわせたところ、住宅の省エネ基準ができたあとも、基準にあわせて学校の断熱改修をしたということはない、とのことでした。古い学校はほぼ、無断熱ということになります。

エアコン設置についても、日本で学校への取り付けが進んだのは最近になってのことです。2018年7月、愛知県豊田市の小学1年生が、校外学習後、教室で熱中症によって命を落とすという出来事がありました*。その年の秋にエアコン設置の予算がつき、現在では公立学校施設の95.7%まで設置が進んでいます。

しかし、断熱されてない教室では、暑すぎてエアコンが利かないケースが報告されています。

2023年7月18日 A小学校最上階教室

(出典:東京大学 前真之准教授の発表資料)

東京大学の前真之准教授が、ある小学校の最上階教室でおこなった調査では、日射熱で高温になる屋根の熱がそのまま天井に伝わるため、天井の温度は42℃に達し、エアコンの設定温度は17℃で、10℃の冷風が吹き出しているのにかかわらず、断熱不足で熱侵入が大きすぎるため、室温が31℃までしか下がっていなかったそうです。

(参考:解説動画「この夏 教室がめちゃ暑い! 2035年までに全ての教室の断熱改修を国と自治体が進めるべき理由 (前真之@東京大学)」)

暑さをブロック!大きな断熱の効果

(出典:東京大学 前真之准教授の発表資料)

これは埼玉県の小学校での断熱改修前と後の比較の写真です。この教室では、窓の遮熱と天井断熱を施した結果、教室温度が6〜8度も下がっています。

断熱すれば集中力も改善

断熱改修の効果は暑さ、寒さの改善だけではありません。授業への集中力も改善するとの調査結果があります。

(出典:「環境を考慮した学校施設づくり事例集-継続的に活用するためのヒント」文部科学省)

また、断熱改修は、温室効果ガスの大幅削減にも貢献します。電気料金が高騰している今、学校の電気料金は自治体の財政を圧迫していますが、断熱は、当然、電気料金を抑えることにも繋がります。仙台市のウェブサイトには、断熱改修のコストは13年ほどで回収できるとあります。学校を断熱化することは、子どもの健康を守り、学習環境を整え、地球温暖化の原因である二酸化炭素の削減にも大きく貢献します。

断熱改修で子どもたちを守ろう ただいま署名25,000筆

(出典:change.org )

「全国のすべての教室の断熱改修をしてほしい!」、そう考えたのは、「ゼロエミッションを実現する会・横浜」の梶本寛子さんです。梶本寛子さんは、地元の小学校の教室の断熱改修について取り組んでいて、学校を訪問した際、その暑さに驚いて「ここで勉強できるの?」と思ったといいます。梶本さんは今、仲間と立ち上げた署名「学校の断熱改修を、早急に進めてください」で1人でも多くの方の賛同を募っています。


気候変動対策として、建築物の省エネと屋根置き太陽光の標準化をめざしているグリーンピース・ジャパンでもこの署名活動を全面的にサポートしています。集まった署名は文部科学大臣や、都道府県知事に提出する予定です。現在25,000筆以上集まっていますが、もっと大きな声が必要です。ぜひ、ご賛同の上、シェア・拡散をお願いします。