グリーンピースの虹の戦士号

7月の日本は、観測史上最も暑い月となりました*。世界全体でも、各地で数週間にわたる異常気象が続いた結果、7月は過去12万年の中で史上最も暑い月となる見通しで*、国連が「地球沸騰化」を警告しています*。 グリーンピースは、気候危機を防ぐため地道な活動を続けています。地球の未来のための行動は温暖化の大波にくさびを打つように、少しずつ実を結んでいます。サポーターのみなさんの力で実現した2023年7月の日本と世界のニュース、グリーンピースの活動の成果や進捗を報告します。

グローバル:健康的な環境の権利を求める世界連合が国連人権賞を受賞

「健康的な環境の権利を求める世界連合(以下世界連合)」が2023年度の国連人権賞を受賞しました。清潔で健康で持続可能な環境を普遍的な人権として認めることを求めた取り組みの重要性が評価された結果です。

グリーンピースは、先住民コミュニティや、地域社会、学者たちとともに世界連合に参加し、健康的な環境が人権として認められるよう声をあげ続けてきました。活動が実を結び、2022年の7月28日に国連が、地球上のすべての人が健全な環境で暮らす権利を有することを宣言*。きれいな空気、水、安定した気候が正式に人権として認められることとなりました**

ダボスで開催された世界経済フォーラムへの抗議のために集まった人々
ダボスで開催された世界経済フォーラムへの抗議のために集まった人々。抗議が行われたマニラは、富裕層のための機関や施設が、貧困によって健康的環境へのアクセスを脅かされている居住区域に近接している。フィリピン(2019年1月)

清潔で健康的で持続可能な環境は人間にとって不可欠です。これらを人権としてすべての人に保障するため、世界各地の政府や為政者、企業には持続可能な環境のための選択が求められます。

アフリカ:遠洋底曳き網漁業への許可が撤回される

セネガルの漁業大臣が諮問委員会による提言を受け、11もの大規模な底曳き網漁業の許可を取り下げました。該当海域では、ほとんどの魚類資源が乱獲されていることがわかっており、漁業資源の再生を促す必要があるという点で科学的な意見が一致しています。

バレンツ海の底引き網漁船
バレンツ海の底曳き網漁船。「トロール漁」と呼ばれる底曳き網を使った漁は、海底環境や海のいきものに大きなダメージを与える(2016年7月)

グリーンピース・アフリカはこの決定を歓迎し、「漁村の生活が不安定な状況にあり、不法移民が増加している現在、大臣の本日の決定は歓迎されるべき」とコメント。

近年、魚が減ってしまっているため、漁師を含む多くの若者が漁船に乗って不法にヨーロッパに渡ろうとして命を落としています。グリーンピースは引き続き、海洋生態系を尊重し地域社会に利益をもたらす持続可能な漁業が行われるよう政府に呼びかけを続けています*

日本:教室を断熱して! 賛同署名2万筆を超える

グリーンピースが事務局を務めるゼロエミッションを実現する会では、その1グループであるゼロエミ横浜が発信している学校の断熱改修を求める署名活動を全面的にサポートしています。署名「学校の断熱改修を、早急に進めてください」には、開始した7月20日から約10日間で20,000筆を超える賛同が寄せられました。

クーラーをつけても35度以上にもなる教室が日本中にあります。生徒の熱中症や、高温による体調不良が出ています。

小学校の最上階教室のサーモグラフィー
ある小学校の最上階教室のサーモグラフィー。外気温最高37℃(2023年7月18日 撮影:前真之東京大学准教授)
参考動画:「この夏 教室がめちゃ暑い! 2035年までに全ての教室の断熱改修を国と自治体が進めるべき理由」(前真之/東京大学)

2018年以降、学校へのクーラー設置が進んでいますが、断熱が施されていないためクーラーが効かず、最上階など、日射の影響を受けやすい教室は危険な高温にさらされています。全国の小、中、高校のすべての教室の断熱を、国が進める必要があります。ぜひ、署名にご賛同ください。

アルゼンチン最大の違法伐採に抗議

グリーンピース・アルゼンチンの活動家たちが、ブエノスアイレス市の半分に相当する約12,000ヘクタールもの違法に森林伐採された農地に巨大なバナーを設置し抗議を行いました。

森林を違法伐採してつくられたアルゼンチンの農地に設置された抗議バナー
森林を違法伐採してつくられた農地に設置された抗議バナー。アルゼンチン(2023年7月)

抗議には各地から、33人の活動家が参加。農園内に巨大なクエスチョンマークと “Y El Bosque?(そして森は?)”と書かれたバナーと、違法に伐採された土地の規模を明らかにするために、1ヘクタールを示す巨大な定規を設置しました。

巨大なバナーを掲げるグリーンピース・アルゼンチンのメンバー
巨大なバナーを掲げるグリーンピース・アルゼンチンのメンバー。(2023年7月)

グリーンピース・アルゼンチンは、2019年にも北部全域の大規模な洪水の一因となった違法森林伐採を明らかにしています。国家森林法で保護されているチャコの森での不法伐採が地元の人々の暮らしと動植物を危険にさらしていると告発しました*

これ以上の気候災害の激化を未然に防ぎたい

7月に私たちを襲ったのは極端な暑さだけではありませんでした。日本では東北北部を中心に雨が降り続き、秋田県では記録的な大雨による土砂崩れや床上浸水等の被害が甚大です。インド、カナダ、アメリカでも大規模な洪水被害が起こっています。

こうした災害と自然破壊は無関係ではありません。大雨などの極端な自然現象は温暖化によって増加の一途をたどり、洪水被害は、森林伐採などによって甚大化することがわかっています。

太平洋に到着し、現地の人々の歓迎を受けるグリーンピースの虹の戦士号
気候活動家や先住民族の指導者をのせた虹の戦士号が、太平洋に到着し、現地の人々の歓迎を受けた。世界最高裁判所に提出するため、気候被害の調査を行う(2023年7月)

環境を守る活動を続けることは、平和な世界を広げるための行動です。今から50年以上前、核実験を止めるために立ち上がったグリーンピースは、多くのサポーターの方々とともに、未来の自然災害を一つでも減らすため、考え、調査し、行動を続けます。