<気候危機と子ども>世界の約半分の子どもが気候変動に脅かされている
世界の子どものうち、10億人の子どもは深刻な大気汚染にさらされています。 9億2,000万人の子どもは十分な水がない中で生きています。 8億2000万人の子どもは熱波に苦しめられています。 4億人の子どもはサイクロンの危険にさらされています。 3億3,000万人の子どもは河川の洪水被害にさらされ、2億4,000万人の子どもは沿岸部の洪水被害にさらされています(※1)。 地球上の22億人の子ども全員が気候危機によるなんらかの影響を受けています。 子どもたちが気候変動において押し付けられている問題は深刻であり、子どもをこれらの脅威から守ることができるのは大人だけです。気候問題の世代間格差について考えましょう。 |

気候危機は子どもの権利の危機
今、この地球上には気候変動のせいで安全に暮らせない子どもがたくさんいます。
数にして約10億人もの子どもたちが、気候危機の「極めて」高いリスクのある環境下での暮らしを強いられています。

キリバス共和国。2014年7月撮影
10億人といえば、世界の22億人の子どものほぼ半分にあたります。それらの子どもたちは気候危機の「極めて」高いリスクにさらされていると分類された33カ国のいずれかに住んでいます。
これらの国々に住む子どもたちは、複数の気候被害の脅威にさらされる中、水や衛生、保健医療、教育など、安全に生きるために必要な基本的な権利を十分に得られていません。
さらに、この10億人という数字は気候変動が加速するにつれ、ますます増えていくと考えられているのです(※1)。
気候によるリスクはその他の格差と交差する
世界の子どもの約80%は年に少なくとも1回は異常気象の影響を受けているとされ、世界のほぼすべての子どもが、少なくとも何か一つの気候、もしくは環境の危険にさらされています(※2)。
ユニセフの事務局長を務めるヘンリエッタ・フォア氏は「事実上、気候危機の影響を受けない子どもはいない」と述べました。
恐ろしいことに、子どもたちがさらされる危機は、気候による被害に限りません。気候によってもたらされる不公平なリスクはその他のさまざまな格差と交差し、リスクをより強く深刻なものにするのです。

インドネシア、ジャカルタ。2020年1月撮影
2022年にセーブ・ザ・チルドレンが5万4,000人の子どもたちを対象に行った大規模な調査によると、世界の子どもの3人に1人(推定7億7,400万人)は、深刻な気候リスクと深刻な貧困という二重の危機に直面していることがわかっています。
気候変動のリスクと貧困、さらに紛争という3つの問題の影響下で暮らす子どもは約1億8,300万人に上ります。

数千人が避難した。ソマリア。2020年11月撮影
こうした複数の危機が重なりあって、今現在82カ国3億4,500万人の子どもが極度の食料不足や、栄養不良、貧困の危機に直面していることが明らかとなりました(※3)。
先進国や大人が気候危機に負う責任
気候危機と無関係でいられる人は世界にひとりとしていませんが、その影響は決して公平に訪れるわけではありません。

注意すべきなのは、温室効果ガスが多く排出されている場所と、気候変動による最も重大な影響に子どもたちがさらされている場所が一致していないという不平等な結果です。
子どもたちが気候危機の「極めて」高いリスクにさらされている33カ国(※)は、全体として世界のCO2排出量のわずか9%を排出しているに過ぎません。一方で、最も排出量の多い国を合わせると、たった10カ国で世界のCO2排出量の70%近くを占めることになりますが、これらの国のうち「極めて」リスクが高いとされたのは1カ国だけでした(※7)。
※ユニセフがフライデー・フォー・フューチャーと共同でCCRI(子どもの気候変動リスク指標)に基づいて算出した気候や環境に子どもが高いリスクにさらされている上位33カ国。()内の数字は順位を示す。中央アフリカ共和国(1)、チャド(2)、ナイジェリア(2)、ギニア(4)、ギニアビサウ(4)、ソマリア(4)、ニジェール(7)、南スーダン(7)、コンゴ民主共和国(9)、アンゴラ(10)、カメルーン(10)、マダガスカル(10)、モザンビーク(10)、パキスタン(14)、アフガニスタン(15)、バングラデシュ(15)、ベニン(15)、ブルキナファソ(15)、エチオピア(15)スーダン(15)、トーゴ(15)、コートジボワール(22)、ギニア(22)、リベリア(22)、セネガル(22)、インド(26)、シエラレオネ(26)、イエメン(26)、ハイチ(29)、マリ(29)、エリトリア(31)、ミャンマー(31)、フィリピン(31)
子どもの約半数は大人の行動に納得していない
こうした現状の中、子どもたちはどのような思いで大人を見ているでしょうか。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが気候変動と経済的不平等について実施した日本の15〜18歳の子どもへのアンケート調査で、約半数の子どもが大人の行動を不十分に感じていることがわかっています(※5)。

書かれている。メキシコ、ハリスコ州。2014年1月撮影
世界でも、英バース大学が10カ国の16~25歳の若者1万人を対象に行った調査の結果、各国政府の気候危機対応に関して「自分たちや将来の世代を裏切っている」と回答した若者が58%、「対応策の影響について嘘をついている」と回答した若者が64%と、大人の気候変動への対応に不満を持つ若者は半数以上に上りました。
また、同調査では50%以上の若者が、気候変動のせいで、悲しみ、不安、怒り、無力感、罪悪感を感じていることもわかっています(※6)。
気候危機の影響は自然環境だけでなく、メンタルヘルスを通しても守られるべき子どもや若者たちを蝕んでいるのです。
大人よりも子どもの方がこの先より遠くにある未来を地球上で送ることになるのですから、強い危機感を持っていたとしても、そこに不思議はありません。

書かれたボードを掲げる子ども。2019年11月撮影
むしろ、子どもたちからすればのんびりしすぎて見える大人たちの姿勢こそ、事態に見合わない鈍い反応であるといえるでしょう。
このまま気候変動を放置すれば、その代償の多くを払うことになるのは今はまだ大人に比べて小さな選択肢しか持ち得ない子どもたちなのです。
大人の責任を行動に変えよう
大人には、すべての子どもや若者、次の世代に豊かな自然環境を残す責任があります。健やかに生きて育つ権利、危機から守られる権利、主体的に参加する権利を持っています(※7)。
私たちはこのままで未来の子どもたちに、十分に行動したと胸を張れるでしょうか。
自然エネルギーへの電力切り替えや、使い捨てごみの削減、肉食中心の食生活の見直しなど、個人でできることは思いのほかたくさんあります。
また、同時に、温室効果ガスの排出削減の野心的な目標設定など、気候変動に立ち向かう積極的な仕組みづくりを進めなければなりません。すでに起こっている気候変動の悪影響から子どもたちを守るため、地域の水資源や衛生設備などのインフラを整え、福祉や教育などの重要なサービスを行き渡らせる必要もあります。
こうした大きな動きのためには政府や大企業など、仕組みづくりができる権力に働きかけることが不可欠です。パブリックコメント、署名、消費者として企業に意見を届けること、そして特に寄付は個人の力を結集させ権力にアプローチする効果的なアクションになります。
グリーンピースは環境保護と平和を実現する社会システムの変革をめざし、「100年先の子どもたち」に豊かな世界を届けられるよう、権力に働きかけ、交渉を行う活動を続けてきました。
ぜひ寄付という力強い方法で、未来の子どもたちに美しく豊かな地球をバトンタッチするための活動に協力してください。