第27回目の国連気候変動会議(COP27)が、2022年11月20日に閉幕しました。2週間の会議では、何が話し合われたのでしょうか?今回のポイントであった「損失と損害」(Loss and Damage)について、どのような進展があったでしょう?日本には、どのように関係するのでしょうか?COP27の5つのポイントをご紹介します。
COP27で損失と損害のための基金設立を呼びかけるNGO
グリーンピース、Climate Action NetworkなどのNGOが、COP27で開催した市民会議で、気候変動によって最も深刻な影響を受ける国や地域のための基金の設立を呼びかけた(2022年11月)

COP27の5つのポイント

11月18日に終了予定だったCOP27は、合意形成が難航し、時間外の交渉の末、20日に閉会を迎えました。 日本のスタッフを含むグリーンピース代表団も公式オブザーバーとして現地で参加、会議期間中、各国政府や企業、団体と直接対話し、アドボカシー活動を行いました。その過程で見えてきた課題や合意内容のハイライトをお伝えします。

  1. 気候正義基金:経済先進国は、気候変動による「損失と損害」を補償するために年間1,000億米ドルを提供するという約束を果たすため、基金を設立することに初めて合意しました。
  2. 排出削減が消極的すぎる:インドなどの国々は、世界がすべての化石燃料を段階的に削減することに同意しましたが、最終合意では、シャルムエルシェイク行動計画にこのことは含まれておらず、より積極的な国別削減目標(NDC)も設定されていません。
  3. 1.5℃の重要性の再確認:EUなどの先進国、そして気候変動に脆弱な国が、気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定目標の重要性を再確認しました。
  4. 森林生態系:ブラジル、インドネシア、コンゴ民主共和国の3カ国が連携し、森林生態系を守ることを約束。 ブラジルの次期大統領ルラ氏も、「ブラジルは気候変動との闘いにおいて世界の舞台に戻ってきた」と述べ、違法な森林破壊と闘い、2030年までに森林破壊ゼロを達成すると公約しています。
  5. 忘れ去られた生物多様性:国連環境計画(UNEP)は、生物多様性を守ることはパリ協定を守ることだと言っていますが、最終合意には「生物多様性」についての記述がなく、12月のCOP15(生物多様性会議)にも悪影響を与える可能性があります。

希望は見えている。でも行動はこれから

グリーンピースは、代表団が気候正義基金の設立に最終的に合意したことを歓迎し、代表団団長のウェブ・サーニョは、このように話しました。

「今回の損失・損害基金設立の合意は、気候正義への新たな一歩です。各国政府は、加速する気候危機によって壊滅的な打撃を受けている脆弱な国やコミュニティーを支援するための、長年の懸案だった新しい基金の礎を築きました。基金の詳細な議論には、気候危機に最も責任のある国や企業が最大の貢献をすることを保証する必要があります。そのためには、先進国が、低所得国が気候変動の影響に適応し、緩和を進め、回復力を高めるため1000億ドルの支援を履行することと、2025年までに適応のための資金を倍増させるという約束をまず守る必要があります」

気候変動によって悪化する豪雨・洪水被害
インドネシアの南カリマンタンを襲った豪雨。歴史的に二酸化炭素排出排出が少ないにもかかわらず、気候変動への影響を最も強く受けている国や地域へ補償が求められる(2021年1月)

今回の会議の成果は、気候変動に対する正義に希望を与えるものですが、一方で、各国の排出量削減のための行動が欠如していることを示唆しています。

会場には、脱化石燃料を妨げようとする化石燃料関係のロビイストが600人以上参加*していました。また、年間1,200億本以上のペットボトルを生産するコカ・コーラ社が会議のスポンサー*となり、COP27の目的からはかけ離れていると非難されました。

また、COP27は”実行のCOP”と位置づけられ、各国政府がパリ協定目標達成のための気候計画強化を約束したにもかかわらず、最終合意の文章では、石炭やすべての化石燃料を段階的に廃止を完了することを主張しているわけではありません。 

気候変動への取り組みは、勝者と敗者が分かれるゼロサムゲームではありません。すべての面で行動を起こせなければ、人類全員が「負ける」ことになります。

アントニオ・グテーレス国連事務総長も今回の会議の成果について、気候正義に向けた重要な一歩となる『損失と損害』のための基金が設立されたことは喜ばしいとする一方で、温暖化を1.5℃に抑えるためには、再生可能エネルギーへの投資を飛躍的に伸ばし、化石燃料への依存を減らす必要があると強調しました*

これまで炭素を大量に排出してきた経済先進国が公約を実現するまでには、まだまだ長い道のりがあるのです。

来年のCOP28に向けて、今すべきことは

COP27
COP27は、若者や先住民族の人々も集まり、大人世代や豊かな経済先進国が歴史的に大量の炭素を排出したことで起きている気候変動による損失と損害への補償を求めた(2022年11月)

グリーンピースは、すでに気候変動の影響を最も強く受けている国や地域への「損失と損害」の補償だけでなく、気候変動への適応と緩和のためにこの基金が使用されるよう、基金の詳細についての議論を引き続き監視していきます。

 最も重要なことは、気候危機に最も責任のある国や企業が、気候正義の実現に最も貢献しなければならないことです。

2023年にはアラブ首長国連邦でCOP28が開催されます。グリーンピースは引き続き、気候変動対策への障壁を明らかにし、化石燃料への依存を解消するためのより積極的な政策を提案し、再生可能エネルギーを推進し、ゼロ炭素の未来への公正な移行を支援し、貴重な天然資源の保護を提唱するために、活動を続けていきます。 

私たちには、まだ、不可逆的な気候変動を防ぐチャンスが残されています。

12/8 COP27報告会を開催します

COP27報告会

グリーンピース代表団の一員として、エジプトで開催されたCOP27に参加したグリーンピース・ジャパンのシニア渉外担当・小池宏隆が、現地で見聞きした気候変動の国際交渉のトレンドや、世界の人々が共有している危機感について、みなさんにお話しします。Q&Aやブレイクアウトセッションの時間も取る対話型の報告会となります。ぜひご参加ください!

2022年12月8日(木)20:00-21:30 @オンライン開催

主催:気候Switch / グリーンピース・ジャパン

参加費無料 ★気候変動を抑えるグリーンピースの活動への支援になる寄付つきチケットもお選びいただけます