ショーン・バーニー 1990年からグリーンピースで核問題に取り組む。東アジア地域の核政策、とくに核燃料サイクル問題や原子力発電所の安全性問題について詳しい。© Christian Åslund / Greenpeace

原子爆弾9400発分の核燃料

核燃料を燃やすとプルトニウムができます。プルトニウムは5kgあれば原子爆弾がつくれます。数十分の1マイクログラムもあれば、がんをひきおこすのに十分という物質です。半減期は2万4千年。熱量もウラン燃料の数倍。それがいま、日本には47,000kgくらいあります。
1950年代に始まった日本の原発政策には、最初から使用済み核燃料=プルトニウムから燃料をつくる計画があったんです。でも国内で再処理ができないから海外に送る。グリーンピースは、使用済み核燃料の再利用にも、プルトニウムの輸送にも、初めから反対してきました。1970年代後半ごろのことです。

Radioactive Waste Transport Documentation (Japan : 1992/93. © Greenpeace / Jonathan Ellis

プルトニウム輸送船あかつき丸と輸送に抗議する人々。1993年。 © Greenpeace / Jonathan Ellis

 

1991~92年にフランスから輸送されたのはもんじゅ用のプルトニウム。あかつき丸という船でカリブ海を通る予定だったけど、パナマ運河の周辺諸国から反対があって南アフリカを通る遠回りの航路を通りました。グリーンピースは船をチャーターしてフランスから日本まで追跡しました。

もんじゅの周辺地域でも反対運動が起こって、運転前の1980年代から裁判もありました。もんじゅが運転を始めて18ヶ月後にナトリウム漏れ事故が発生しました。1995年です。冷却材がナトリウムなんですけど、ナトリウムって水に触れると燃えるんです。それで火事になって運転停止になって、2016年末には廃炉が決まったから運転したのはほんの数日間。お金はすごくかかったんですけどね。

Monju Fast Breeder Reactor in Japan. © Greenpeace / Nick Cobbing

福井県・高速増殖炉もんじゅの傍で泳ぐ子どもたち。1999年。 © Greenpeace / Nick Cobbing

プルトニウム入り核燃料を使わせない

もんじゅが稼働できなくて核燃料サイクル計画がダメになって、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムをウラン燃料に混ぜて16~18基の原発で燃やす計画に変えました。これをMOX燃料といいます。

それでグリーンピースもMOX燃料に反対する運動を始めました。日本だけでなくて、輸送航路の周辺国と協力して反対したんです。こういう国ってなんにもメリットがない。事故があったら被害をこうむるだけ。

Greenpeace action in Fukushima Harbour. Japanese forces attempt to stop the action. Japan. © Greenpeace / Andrew MacColl

福島県沿岸でプルトニウム輸送に抗議するグリーンピース。1999年。 © Greenpeace / Andrew MacColl

 

1999年に高浜原発にMOX燃料を輸送する間に、安全性データを改ざんしたという内部告発があったんです。グリーンピースはグリーンアクションや美浜の会といっしょに情報公開を求めました。安全性データというのは、使用済み核燃料の燃料片(ペレット)の数千個のサイズのデータのこと。それを市民が分析して、改ざんがわかったんです。

市民が自らの分析をもとに、不正のある危険な燃料を使うべきでないと裁判で訴えました。判決前日に、日本原子力研究開発機構がデータ捏造を認めて使用は防げたので、訴訟は取り下げました。

2000年には、弁護士や株主運動の皆さんや福島の住民の皆さんが原告になって、福島のMOX燃料に対しても裁判をしました。敗訴はしたけど、世論がもりあがったおかげもあって、2002年当時の佐藤栄佐久福島県知事はMOX燃料を使用しないと決めました。柏崎刈羽原発でもMOX燃料を使う計画があって、公開討論会をしたり、地元の刈羽村では住民投票もしました。反対票が多くて使用は取りやめになったので、このときのMOX燃料は柏崎刈羽原発の燃料プールにまだあります。

株主運動の抗議行動。2018年の関西電力株主総会にて。 © Greenpeace

 

だから、MOX燃料を高浜とか福島とか柏崎刈羽で使う計画はこのとき全部とまったんです。でも佐藤知事が辞めた後に福島での使用が決まってしまって、福島第一の3号機にMOX燃料を入れたその6ヶ月後に、東日本大震災があって、事故が起こってしまいました。

もしMOX燃料反対運動をやってなかったら、4号機にもMOX燃料は使用されてた。計画通りなら、水素爆発を起こした3号機の核燃料プールにも、プルトニウムが入ってたはず。なにしろ16~18基でプルトニウムが使われる計画だったんですから。

Evacuation Center in Japan. © Markel Redondo / Greenpeace

山形県米沢市の避難所。2011年4月。 © Markel Redondo / Greenpeace

日本の人が原発をとめてきた

東京電力福島第一原発事故発生当時、菅直人首相は冷却プールが干上がって使用済み核燃料が外に出たらという最悪の事故シナリオをつくらせました。

今回は半径30km程度の範囲に避難指示が出されました。でも最悪のシナリオでは避難対象は半径250km。そのシナリオ通りだとしたら首都圏の人もみんな、数千万の人が避難しなくてはならなかった。

Nuclear Waste in Prefecture Fukushima. © Christian Åslund / Greenpeace

飯舘村の除染廃棄物集積所。2017年10月。 © Christian Åslund / Greenpeace

 

もし、グリーンピースが、地元の人や、法律家や活動家の皆さんと協力して活動してこなかったとしたら。現在、日本には建設中のものや廃炉が決定したものを除いて35基の原発があります。そのうち稼働しているのは5基(2018年8月現在)。これだけの稼働に抑えてきたのも、危険なプルトニウムで核燃料をつくって燃やすプルサーマル計画をくいとめたのも、粘り強く行動してきた人たちの力です。これからもグリーンピースは、原発事故で何が起こって、そして起こり続けているのかを明らかにして、共有して、皆さんといっしょに原発をとめることを続けます。

原発は、とめられるんです。

Measuring Radiation in Iitate. © Christian Åslund / Greenpeace

飯舘村での放射能調査。2011年3月。 © Christian Åslund / Greenpeace

2011年の事故直後から続けてきたグリーンピースの放射能調査は、次回で30回を数えます。
グリーンピースは東京電力福島第一原発事故が環境に、人の暮らしにどのような影響を与えるか、科学的な調査をもとに政府や電力会社、国際社会に対するはたらきかけをこれからも続けていきます。

今年の調査のためにご寄付でのご協力をお願いします。あなたのご支援が、目に見えない原発事故の被害を明らかにします。