今年の夏はこの先の未来で一番涼しい夏?:世界の猛暑被害

今年の夏は世界的にうだるような暑さをともなって例年よりも早く訪れました。 それは8月になっても依然として続いている酷い熱波のせい。しかし、毎年地球上の多くの場所で最高気温が更新されている今、もはや異常気象であったはずの熱波は常態化しつつあるといえます。 地球温暖化、気候変動に国境はありません。気候危機はどこか遠くの場所での話ではないのです。 2022年、これまでに起きた日本を含む世界各地での猛暑被害を振り返ります。 |
世界の猛暑被害 気候変動で過激化、長期化する熱波
私たちの夏を過酷にし、多くの人の健康を危険に晒す熱波は、気候変動の影響で以前より威力を強め、その期間も長くなっています。
今後いっそう強烈で極端な気象現象が発生することが予測されている今(※1)、今年の猛暑も未来と比べると「最も涼しい夏」になりかねません。
気候危機対策に、一刻の猶予もないことを訴えるような猛暑の被害が、この瞬間も世界各地で発生しています。
ヨーロッパ 火事被害、暑熱によるインフラの混乱

フランス 過去30年以上で最大規模の山火事が発生。南部ジロンドでは、7月12日以降で1万9300ヘクタール以上の土地が焼き尽くされ、避難を強いられた住民は約3万4000人に上りました(※2)。
気象局は1947年以降、フランスで最も早く記録された熱波により、「これまでで最も暑い日」が複数の地域で続いていると発表しています(※3)。
イタリア 北部が過去70年で最悪の干ばつに見舞われ、国内最長のポー川は川底が露出しました。気候変動を原因とする干ばつで稲作が大きな打撃を受け、約4100億円もの損失が出ています(※4)。
スペイン 7月13日には南部セビリアで47度、北部でも7月18日に43度を記録。異常な高温が2週間も続き、数百人もの死者を出しました。
中部と北西部が山火事による深刻な被害を受け、6〜7月に計測された中で山火事による最大の炭素排出量となったことが発表されています(※5)。
ポルトガル 7月13日時点で、国内20カ所で山火事が発生。中部サンタレンやレイリアでは住民約700人、北部ムルサでは300人が避難を余儀なくされました(※3)。
世界保健機関はスペインとポルトガルだけで暑熱のために1700人以上が死亡したとの推計を公表しました(※6)。
ギリシャ 7月23日から熱波が襲来し、これにともなって国内4カ所で大規模火災が発生。アテネ近郊の山岳地帯ペンテリでも山火事が起き、地元当局が少なくとも4つの地域と病院に避難を呼びかけました。レスボス島にある村では7月24日に約200人が避難を命じられています。
準絶滅危惧種のクロハゲワシが生息する北東部エブロス地方の国立公園でも、4日間にわたり火災が広がりました(※5)。
イギリス 史上初めて最高レベルの「赤色」猛暑警報が発令され、気象庁から「命が危険にさらされる暑さ」への警戒が呼び掛けられました。
英国初となる40度を超える気温が観測され、暑熱は交通機関にも支障をきたし、ルートン空港では滑走路の一部が浮き上がり、航空機すべての運航が一時中断。鉄道は、線路がゆがむ、ケーブルが故障するなどで、一部運行を休止、ほとんどの長距離鉄道で遅延と変更が報告されています(※7)。
運輸長官はこの状況がインフラ建設時に想定した気温を大幅に超えたためであるとしています(※8)。
北極、南極圏 例年より30度以上も高い気温を記録

北極、南極 3月に北極圏で平均よりも30度以上、南極圏では40度以上高い異常な気温が観測されました。正反対の季節にあるはずの2つの極地で同時期に異常な高気温が記録されたのです。専門家は気候変動との関係はわからないとしつつ、この異常気温が今後も繰り返されるようなら、地球温暖化が要因であると考えられると話しています(※9)。
アジア 最高気温続出に健康被害が相次ぐ

日本 6月に1875年の観測開始以来初となる猛暑日が連続しました。東京都内では連日、1日あたり200人前後が暑熱の影響で救急搬送されました(※3)。熱中症で病院に搬送された人は6月27日から7月3日までの1週間だけで1万4000人以上にも上り、この数字は前年同時期の11倍以上、5月以降の1週間の搬送人数として過去最多です(※10)。
中国 6月から各地で気温が40度を超え、上海では7月13日に40.9度という1873年以降の最高記録を記録し、70箇所以上の観測地点で歴代最高気温を更新しました。
猛暑の影響で発電量が過去最高に達したことが当局から発表されています(※3)。
韓国 3月4日に発生した蔚珍(ウルチン)、三陟(サムチョク)での山火事により6,200人以上が避難し、159戸の家屋が焼失しました(※11)。強風と乾燥状態が原因である可能性が高いと言われ、現地メディアは「ここ10年でもっとも大きな被害」と報じています(※12)。
オセアニア ラニーニャ現象が猛威をふるう

オーストラリア 西オーストラリア州の各地で激しい森林火災が相次ぎ、多くの家屋が焼失、6万ヘクタール以上が燃えました。
3月にはラニーニャ現象によって一部が干ばつに苦しむ中、東海岸は洪水に見舞われました。専門家は気候変動によってラニーニャ現象の特徴が極端になっていると述べています。タスマニアではラニーニャ現象によって40年で最も乾燥した夏を記録し、2017年に起きた干ばつの影響が残る中での打撃となりました(※13)。
南アメリカ、北アメリカ 大規模森林火災、インフラに打撃

アメリカ カリフォルニア州のヨセミテ国立公園で7月だけで複数の森林火災が発生、7500ヘクタールが焼失し、6000人以上が避難を余儀なくされました(※3、5)。
消防局は大気の異常な乾燥が消火活動を妨げていると指摘。近年の火災で国立公園の7万5000本の樹木のうち5分の1が焼失しています。
6月時点で熱波が到来し、高温注意報や高温警報が各地で出され、対象地域の住民は1億人に上りました(※3)。
北西部では熱波の影響で高速道路の破損や公共交通機関の混乱が生じています(※14)。
アルゼンチン 2月にコリエンテス州において、80万ヘクタール以上の湿地、草原、農園、原生林が火災により焼失しました。ラニーニャ現象による2年間にも渡る極度の干ばつに加え、気候危機が火災の発生条件を高めたと指摘されています。
中東、アフリカ 深刻な干ばつによる飲料水、食糧不足

モロッコ 1980年代以来最悪の干ばつが発生し、2021年9月以来ほぼ雨が降っていない中、2022年の降雨量は平均より64%少なく、すでに減少していた貯水池の貯水量は例年の11%まで低下しました(※15)。
1990年代までは10年に1回だった干ばつが、現在では2年に1回発生しているといい(※16)、深刻化、頻発化する干ばつは国の財政にも大きな打撃を与えています。
スーダン 南スーダンでは干ばつと洪水が要因となって4月から7月の時期に、人口の62.7%にあたる774万人が深刻な食料不安に直面する可能性が警告されました。さらにロシア政府のウクライナ侵攻などの影響で食糧援助が削減され、数千人が食糧不安に直面しています(※16)。
IPCの報告書によると、5歳未満の子ども約134万人が急性栄養不良に苦しむと予想されています(※17)。
エチオピア、ケニア、ソマリアでは、干ばつが1,000万人以上の子どもの健康状態に影響しています。急性栄養不良、水不足の深刻化は過去40年間で最悪となり、全体で170万人以上の子どもが、重度の急性栄養不良によって緊急の治療を必要としています。
乾季が連続して到来したことで、何十万人もの人々が家を追われ、多くの家畜や作物が失われました。清潔で安全な水を得られない世帯数が、560万世帯から1,050万世帯とほぼ倍増し、食料不安に脅かされる人々の数は、900万人から1,600万人に増加しました(※18)。
このままでは「これまでにない」被害は増え続ける

気候変動は灼熱の夏を当たり前にしてしまいました。気候変動は熱波だけでなく、干ばつや森林火災、集中豪雨といったさまざまな異常気象を引き起こします。
自然環境、食糧供給、人々の健康、インフラなどが壊滅的な影響をうけ、今後より広範囲に、頻繁になることが指摘されています。
こうした変化はコロナ禍ですでに制限された日常生活を送る現代の子どもたちから、さらに貴重な学習や体験の機会を奪うことにもなっています。私たちは一人一人が大きな責任とともに最悪の気候危機に直面しています。
もはや議論の余地はありません。 気候危機から未来を守るために、個人、企業、政府が一丸となって動かなければなりません。
グリーンピースは、活動に賛同して寄せられる皆様からの寄付によって、政府や企業から財政的な支援を受けず、独立性を保って活動を続けることができています。個人の努力だけでは手遅れとなってしまった今、独立性が企業や政権にも耳が痛いような真実を突きつけることを可能にしています。
ぜひグリーンピースへの寄付を通して、地球の未来を守るための活動に参加してください。