プラスチックから「紙」への代替は、実は環境負荷が高い?紙の使い捨てを考えよう。
この投稿を読むとわかること
近年、プラスチックが環境に与える影響への関心の高まりと共に企業に急速な対応が求められています。多くの企業がプラスチックを削減するために、紙や他の素材での使い捨てを増やしていますが、これは本当に環境に優しいのでしょうか? 紙カップを例に紙の環境負荷を考えてみましょう。 |
実は多い紙カップの二酸化炭素排出量
Upstream「reuse wins – The environmental, economic, and business case for transitioning from single-use to reuse in food service」
石油から生成されるプラスチックは石油の採掘から製造、そして廃棄まで多くの二酸化炭素を排出することが指摘されていますが、実は紙カップも多くの二酸化炭素を排出します。
例えば、アメリカの団体Upstreamの報告によると、紙カップがそのライフサイクルで排出する二酸化炭素の排出量はプラスチックの約2倍にも及ぶとされています。使い捨て紙カップは多くの場合、プラスチックの薄い膜で内側にコーティングされており、生産が森林破壊につながることもあるため、二酸化炭素の排出量が多い傾向にあります。
使い捨て製品の場合、温室効果ガスを最も排出するのは資源の採取と製造の段階です。紙製品・プラ製品共に、陶器・ステンレス・グラスなどのリユースと比較して二酸化炭素の排出量が多くなっています。
使い捨て紙カップは水を大量に消費する

リユースの問題点として洗浄に使用される水がよく指摘されますが、実はリユースカップの使用は使い捨てカップより水の節約になります。
同報告では、使い捨て紙カップ500個に使用される水が約1,400リットルの一方、繰り返し使える陶器製のマグカップ500回に使用される水は約250リットルとなっています。
紙パルプ産業は淡水の使用量が最も多い産業の1つであり、パルプの製造に多くの水が使用されることが、使い捨てカップのライフサイクルに使用される水量が多い原因です。*
Upstreamがスターバックス向けに行った調査では、リユース可能なセラミックカップは使い捨ての紙カップに比べライフサイクル全体で水の消費量を64%削減しました。*
紙カップのために伐採される森林

紙製パッケージの製造のために、毎年30億本の木が伐採されています。
世界で使用される紙の半分以上が紙製パッケージング用で、その量は増加傾向にあります。紙製包装材のパルプは約半分しかリサイクルされていません。
樹木は、生息地や生物多様性、土壌の健康、きれいな空気、炭素隔離など様々な環境上の利益をもたらします。数分間の紙カップの使用のために森林を伐採することは環境負荷が非常に高く、リユースの使用で森林を守ることができます。
FSC認証のような第三者認証を受けた紙で作られる紙カップでさえも、環境により良い選択肢であるとは限りません。
森林認証が生物多様性や気候に対して長期的にプラスの影響を及ぼす、という明確で包括的な証拠はまだ得られていないばかりか、森林認証は森林伐採の根本的な問題や、伐採が生態系の健全性に及ぼすマイナスの影響について対処するものではないのです。
解決策はリユース
プラスチック問題の解決策として紙への代替が進んでいますが、紙の使い捨ても環境負荷が高いことが分かりますね。
プラスチックといえば海洋汚染問題を連想する人も多く、紙は自然素材なので解決策に見えてしまうかもしれません。しかし、温室効果ガスの排出量や水の使用、森林伐採など様々な角度から紙カップの環境負荷を見てみると、問題は素材がプラスチックでも紙でも、「使い捨て」自体にあると感じませんか?
使い捨てカップは実際どれくらい使われている?
グリーンピースの調査で、スターバックス・タリーズ・プロントなど日本の9つの大手カフェチェーンによって年間3億6,950万個、1日100万個の使い捨てカップが消費されていることがわかりました。
これは重量にすると総数2,808.8トン、積み上げればスカイツリー6万本にもなる膨大な量です。これほど多量のカップが一度使われたきり、ごみとして燃やされたということになります。
さらに注目したいのは、スターバックスコーヒーをはじめ、使い捨てカップの消費量トップ3となったチェーンでは、テイクアウトだけでなく、店内でのドリンク提供にも多くの使い捨てカップが使われていたことです。
もしも、今回調査した9チェーンで、店内で飲まれるドリンクだけでもマグやグラスで提供されるようになれば、1億5,860万個の使い捨てカップ、1,220トンものごみを削減できると考えられます。
コーヒーをもっと楽しむためにリユースへ
グリーンピースは「カフェのコーヒーが好きだから、環境に優しく変わってほしい」という消費者の声を集めて企業へ届けるために、使い捨てカップの消費量が多かった大手カフェチェーン、スターバックスコーヒージャパン、タリーズコーヒー、プロントの3社に向けて、使い捨てシステムからの脱却を求めた署名「1日100万個の使い捨てコーヒーカップをなくしたい」を始めています。
要望の内容はこの3つです。
- 「ごみの量を把握・公開して、野心的な削減目標を立てること」
- 「店内でマグやグラスを使うこと」
- 「テイクアウトでマイカップの持ち込み率を高め、同時に返却式リユースカップを導入すること」
マイボトルやマイカップを持ち歩くことで、使い捨てカップごみを減らすことはできますが、誰がどこで飲食のテイクアウトを利用してもごみの出ない仕組みがなければ、ごみは出続けてしまいます。
現在、リユースへの切り替えにおいて遅れを取っている日本でも、消費者からの声でカフェ業界を牽引するチェーンを後押しし、「使い捨て」から持続可能なリユースへ、変化を起こしましょう。
