再生可能エネルギーへの疑問にお答えします
戦争の影響でエネルギー市場が変動しています。天然ガスの価格は高騰し、日本はロシアからの原油の輸入を中止することになりました。 不足した電力を原発で補完しようという動きも各国に見られます。 こんなときにこそ、再生可能エネルギーの出番なんですけど…グリーンピースにはさまざまなご意見が寄せられています。 |
戦争で気候変動が進行する?
ロシア軍がウクライナに侵攻し、世界各国がロシアへの経済制裁を次々に決定しています。多国籍企業の多くが、ロシアでのビジネスを中止し、取引を停止しています。ロシアの通貨・ルーブルの為替市場も混乱しています。

戦争の影響を受けるのは、ロシアやウクライナの人々だけではありません。石油や天然ガスや小麦などの物資の供給を、ロシアやウクライナからの輸入に頼っていた世界各国ではすでにエネルギー価格が上昇し、インフレも始まっています。原発の再稼働や他の化石燃料への回帰を推し進めようという動きも見られます。
こんなときだからこそ、再生可能エネルギーの導入を加速させることでいろいろな問題を解決に導くことができるのですが…。
気候変動は待ってくれない
たとえ、戦争で化石燃料市場が混乱していてもいなくても、気候変動は着実に進行しています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今年発表した報告書によれば、温暖化の生態系への影響は、今までの予想よりも早く、広い範囲で起きています。生態系が破壊され、南極の氷や氷河の融解で海面上昇が進行すれば、人間はこれまで通りの農業で食糧を確保することができなくなります。気候変動に脆弱な影響を受けやすい国では、洪水、干ばつ、暴風雨による死亡率が、影響を特に受けにくい国に比べて、過去10年間で15倍にまで拡大しました。

戦闘で化石燃料を消費し、大規模な火災を引き起こすことで大気中に炭素が放出されるごとに、状況はさらに悪化します。
いま、私たちは地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えることすらできていませんが、このままでは、2.7℃温暖化した世界が始まろうとしているのです。
子どもたちが生きる将来に、未来に、誰もが安心して暮らせる社会を手渡すには、私たちに選択肢も時間ももう残っていません。
これ以上の温暖化をくいとめるために、いま、できる限りのことに挑戦し続けなくてはならないのです。
急務は、温室効果ガスを排出する化石燃料からの脱却、そして再生可能エネルギーへの転換です。
✖️再生可能エネルギーは大丈夫なのか
○日本は再生可能エネルギー100%でやっていける国
でも「再生可能エネルギーは高くつく」というイメージがありますね。
実際には、2020年の時点での分析では、世界人口の少なくとも3分の2にあたる国々で、再生可能エネルギーが最も安価な新規発電の供給源とされています。*12016年には、再生可能エネルギーが石炭を抜いて世界最大の電力供給源になっています。

日本の環境省は毎年、日本の再生可能エネルギーの潜在力を推定する研究調査を実施しています。経産省は、日本は2050年までは必要な量の最大50〜60%の再生可能エネルギーしか供給できないとしていますが*3、環境省は、今後日本の電力消費量が増えたとしても、電力需要を十分に満たす1060〜2580twHの供給が可能としています。*4
すなわち、「日本は再生可能エネルギー100%でやっていける国」ということができます。
そこで気になるのが、環境への影響ですよね。
環境を破壊するエネルギーは気候変動対策にならない
「山や森を切り拓いてメガソーラーを建てるのが気候変動対策になるの?」
「風力発電が生きものや人間の健康に与える影響が心配」
「天候に左右される再生可能エネルギーは、いざとなったら停電するんでしょ」
グリーンピースにしばしば寄せられるご意見です。
皆さまのご心配はごもっともです。人間誰でも、新しいものに対しては懐疑的で、警戒感を感じるものです。それは仕方がありません。

一方で、環境への影響に対する最大限の配慮や、地域住民との合意形成が十分でない発電施設は、原発であれ再生可能エネルギーであれ、気候変動対策にはなり得ません。
まずは省エネでエネルギー消費量を抑え、エネルギーの高効率化(断熱・エネルギーの地産地消など)と同時に、地域の誰もが納得できる再生可能エネルギーへの移行が重要です。
現在は天候の変化をかなり正確に予測できる技術が発展しています。その技術で、各エネルギー源からの供給配分をコントロールすれば、どんな天候でも電力が安定供給できるしくみをつくることができます。
そうなれば、大規模な発電施設から延々と電線で電力を運ぶ必要もなくなって停電のリスクも減るし、テロや軍事行動の標的になることもありません。
再生可能エネルギーはその場にあるもので発電するので、エネルギー市場の影響をうけることもありません。

温室効果ガス排出大国・日本
日本の国内総生産は世界ランキング第3位。そして、世界第5位の温室効果ガス排出国(2017年)でもあります。
計算上では、日本人1人でインド人約5人分強の二酸化炭素を排出しているのです。日本の脱炭素は、間違いなく世界の未来をまもる大きな鍵となります。
稼働する限り被ばく労働を必要とする上に、数万年もの長期にわたって厳重な管理が要求される核廃棄物を増やし続ける原発はいうまでもなく、気候変動に悪影響を及ぼす石炭や天然ガスや石油といった化石燃料に頼るエネルギーから、いまこそ、日本が率先して「卒業」したいと思いませんか。
異常気象や生態系の破壊や食糧難・水不足など、気候変動の向かう先には、人類のみならず、この惑星に生きるすべての命の危機が迫っています。
とりあえず、まず、今日できることからひとつずつ、始めてみましょう。誰にでもひとつくらいは、あるはずです。
グリーンピースは、原発をやめ、化石燃料への依存をやめ、環境負荷が低く、より安全な再生可能エネルギーへの転換を実現するために、世界中の政府と企業にはたらきかけを続けています。
あなたも今日、参加してみませんか。

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[解説] 気候変動はなぜ起きる?再生可能エネルギー100%が必要な理由
*1: 国際再生可能エネルギー機関 2020 年 6 月 2 日プレスリリース
*2: BloombergNEF April 28, 2020
*3: 経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」令和2年12月
*4: 環境省「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務」
*5: マイ大阪ガス「地球の熱を、エネルギーに。「火と氷の国」アイスランドの試み」