こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。
神戸製鋼の品質管理データ改ざん問題が毎日、新聞・テレビを騒がせていますが、神戸製鋼は、原発にもあらゆる製品を提供しています。(下図および神戸製鋼パンフレット参照)
グリーンピースは、原子力規制委員会に、電力会社と神戸製鋼に対し、調査・検査を文書によって指示し、その結果を公開するよう求めています。
11月15日、原子力規制委員会で、それぞれの原発で安全上重要な設備に神戸製鋼製の製品が使われていたとの電力会社の報告が公表されました。
神戸製鋼の調査は1ヶ月分。30年前納入の原発製品、ほんとうに大丈夫?
神戸製鋼の製品が使われていた原発は以下の通りです。(下記3社以外は未報告)
関西電力 高浜3、4号機 大飯3、4号機
九州電力 川内1、2号機 玄海3、4号機
四国電力 伊方3号機
やはり、重要な設備に、神戸製鋼製品が使用されていました。
それらは、建設時に設置されたものなので、それぞれ何十年も前に納入したものです。
電力会社の結論は、不正が行われた工場からのでないし、いままでの検査で問題なかったし、運転実績あるからOKというものです。(くわしくはこちらのブログ)
神戸製鋼の調査は、ここ1年の供給品に限られていますし、「不正が行われた工場」が次々と明らかになっている中、まだ神戸製鋼は何十年も前までさかのぼっての調査はしていないので、OKではないはず。そこを書き込まない報告書に疑問を感じます。
なお、原子力規制委員会は、他電力にも同様の報告を求めているようです。
原子力規制委員会が文書で指示を出さない理由
…ようです、というのは、文書で指示がでているわけでなく、会議で原子力規制委員が「他電力会社にも期待」と言っただけで、いろいろあいまいなんです。
2016年に、日本の強度不足の製品がフランスの原発に納入されたときには、文書による指示で、調査対象の機器が指定されており、報告の〆切りもありました。(くわしくはこちらのブログ)
今回は、口頭で、対象機器が示されているわけでなく、報告の〆切もありません。
原子力規制委員が「炉内の機器は調査対象の範囲にしなくていいのか」と聞いたとき、原子力規制庁は事業者のほうで自らの判断で対象を広げているので、それも確認したい」と言いました。
なんだか、事業者(電力会社)まかせです。
(その後、田中原子力規制委員が、燃料被覆管についても調査を「よろしく」と言いました。燃料被覆管は、燃料を覆っている管で、燃料の放射能を閉じ込める大変重要なものです。)
また、更田原子力規制委員長は、溶接棒についてサンプリングで確認できないかともいいました。溶接棒というのは、原子炉容器内面の溶接などに使われているものです(下図参照)。
ここも重要なところなので、確認の方針についても聞いていました。
(原子力規制庁資料より)
更田原子力規制委員長は、その後の記者会見で「なぜ、電力会社に文書で調査の指示を出さないのか」というフリージャーナリストのまさのさんの質問に答え、次のようにいいました。
「この範囲まで調べろ、この深さまでやれ、何年前まで、と手とり足とり原子力規制委員会が指示しなければならないのなら、この国に原子力を利用する資格ないと思っている」(要旨まとめ)
原子力規制委員会が、何を指示し、電力会社がどう応えたか、それにより第三者が安全性を検証できるデータが公開されなければ、住民は安心できないでしょう。
けれども、今は、文書による指示がないために、原子力規制委員会がどのような目的意識を持って、どういう指示をしているのか、を会議や記者会見の議事録で探さなくてはならない状態です。
私は「口頭で依頼」というのは透明性確保、公文書管理の面からよくないと思います。
そして「またある段階になったら、報告を受けたい」として、議論を閉じました。
原発部品に欠陥品が使われているかもしれないというのに、悠長に見えます。
もっと調査の基本方針を出して、調査対象を指示して、包括的な調査報告を出させた上で追加の調査(検査含み)検討する、という手順を踏むことが必要なのではないでしょうか。
「たしかな規制」をさせるために必要な市民の目
電力会社の自主調査だけにまかせて、「問題なし」としないよう、フォローをしていきます。
原子力規制委員会に「たしかな規制」をさせるには、市民がこの問題に関心があることを示すことが必要です。
ぜひ、このブログを広めてください。
【資料】これまでの原子力規制、関連のうごき
●10月8日(日) 神戸製鋼が品質管理データ不正を公表
10月10日(火) 原子力規制事務所経由で各事業者に対し、今回の事案に関係した製品が納入又は使用されていることがわかれば原子力規制庁に連絡するよう伝達
10月13日(金) 東京電力が、福島第二原発の在庫品に不正品あったと発表
10月17日(火) 関西電力、九州電力と面談の際、事実関係の確認含め調査を行うように依頼
10月18日(水) 四国電力と面談の際、事実関係の確認含め調査を行うように依頼
10月23日(月) 電力事業連合(電事連)に対し、事業者の調査状況を
11月9日の会合で報告するよう依頼(電事連は、検討すると返答)
10月24日(火) 23日の依頼への返答として、会合での報告を確定的な報告は困難と返答した電事連に対し、会合で調査状況を説明するよう依頼(電事連は、検討すると返答)
グリーンピースら6市民団体が、原子力規制委員長へ原発部品の検査・検証を求める要請書送付
10月25日(水)神戸製鋼と面談し、同社の不正問題への対応の説明を受ける。規制庁は、原子力関連製品に問題が確認された場合の情報提供を依頼(神戸製鋼は了解したと回答)
10月26日(木)関西電力と面談。神戸製鋼不正問題への対応状況を聴取、製品等に関した問題が確認されれば情報提供を依頼。
10月26日(木) 日本原燃、ウラン濃縮工場に不正品あったと発表
10月27日(金)神戸製鋼と面談。日本原燃に供給した不正品について説明を受け、引き続き取り組み状況を注視と伝える。
東京新聞(中日新聞)がグリーンピースら6団体の要請を報道
10月29日(日)脱原発をめざす首長会議が「原発関連施設に納入された神戸製鋼製品の検査などを求める緊急要請」を採択
10月31日(火)電事連と面談。「安全上重要なバウンダリ、特に冷却材バウンダリにおいて 神戸製鋼所製の材料が使用されているか関心がある。中でも現在稼働中のプラン トについて関心が高い。11月9日開催予定の主要原子力施設設置者の原子力部 門の責任者(CNO)との意見交換会においてこうした点も説明いただきたい」と 依頼。
グリーンピースが原子力規制委員長あての原発を止めて調べることを求める署名を提出
11月1日(水)逢坂誠二衆議院議員が「神戸製鋼所の製品のデータ改ざんに関する質問主意書」を提出
11月6日(月)神戸製鋼と面談(電話対応)。「原子力事業者の要望を受け、過去に遡った調査を行っている。元データが残っ ていないものもあるが、調査した範囲においては問題ないことを確認している」と説明を受け、製品等に関した問題が確認されれば情報提供を依頼。神戸製鋼はこれに了解と回答。
11月6日(月)関西電力、九州電力及び四国電力と面談(電話対応)、それぞれから現時点においては不正が行われた製品の納 入実績は確認されていない旨説明受ける。
11月7日(火)大飯発電所3,4号機の新規制基準対応設備に関連して、不正が確認されているものと同種の神戸製鋼所製材料の使用状況を調査したところ、アルミ材と
銅管が一部の設備で使用されていたが、不正が確認された材料ではなかったが、
念のため、ミルシート等により問題ないことを確認した旨説明を受ける。
また、コベルコ鋼管株式会社から購入したステンレス配管について、他のPW
R5事業者とともに、現地工場に職員を派遣して品質管理状況を調査したほか、
可能なものはミルシートと元データの付き合わせを行い、不正がないか調査
し、問題ない旨、確認したと説明を受ける。
11月9日(木)「第4回 主要原子力施設設置者(被規制者)の原子力部門の責任者との意見交換会」にて、電力会社より神戸製鋼不正を受けての自主調査について説明を受ける。
11月10日(金)四国電力と面談。伊方発電所3号機における一次系バウンダリ(原子炉容器、加圧器、 蒸気発生器、一次冷却材ポンプ、一次冷却材管など)及び格納容器バウンダリ (原子炉格納容器、主蒸気/主給水管)の主要部材について調査し、神戸製鋼 所製の材料は使用されていないことを確認、一方でこれらバウンダリの 溶接部や一部設備のボルト、ナットにおいて同社製の材料が使用されている ことを確認している旨説明を受ける。
政府が逢坂誠二衆議院議員の質問主意書に対し、神戸製鋼製品の原発への使用について「11月6日時点で使用の事実は確認していない」とする答弁書を決定。
11月13日(月)関西電力及び九州電力と面談。稼働中及び使用前検査中の発電所の一次冷却系バウンダリ及び格納容器バウンダリでは、テンドン、溶接部など一部の部材を除き、神戸製鋼所(関連会社を含む。)製の部材は使用されていない、現在、株式会社ジルコプロダクツの製品に関して調査中と報告を受け、一次系バウンダリ及び格納容器バウンダリについて詳細な情報を提供すること、全体の調査範囲と今後のスケジュールを示すことを依頼
逢坂誠二衆議院議員が「神戸製鋼所の製品のデータ改ざんに関する再質問主意書」(神戸製鋼グループにより製造された燃料被覆管について調査したかなど)及び「第四回主要原子力施設設置者の原子力部門の責任者との意見交換会における電気事業連合会の報告に関する質問主意書」(文書による指示が必要ではないか、不正が始まった40年前に遡った調査が必要ではないかなど)を提出
11月14日(火)関西電力及び九州電力と面談。安全上重要な部位における神戸製鋼所(関連会社含む。)製品の使用状況について、より詳細な説明受ける。
11月15日(水)原子力規制委員会で、これまでの対応、神戸製鋼と電力会社からの情報のまとめを規制庁より説明、規制委員が、報告あった3社以外にも報告を期待と表明
【資料】神戸製鋼の原発技術・製品
PWR用上蓋や湿分分離加熱器(MSR)給水加熱器(FWH)等の熱交換器類
原子炉圧力容器上蓋など原子炉容器用部材をはじめ蒸気発生器用コニカルパーツ、チューブ・シート、また、鍛造品、軽水炉用ジルカロイ被覆管、燃料集合体用チャンネル
使用済燃料および放射性廃棄物の輸送・貯蔵容器(キャスク)の設計・製造
低レベル放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)をはじめとして、気体・液体・固体状の各種廃棄物を対象とした処理設備・プラントの建設、日本原燃(株)六ヶ所再処理工場のチャンネルボックス等の放射性廃棄物の遠隔ハンドリングと処理・貯蔵システム
材料
制御棒駆動用ステンレス鋼管、給水加熱器用ステンレス鋼管、蒸気タービンブレード材、チタン製冷却管、原子炉・炉内構造物や冷却水循環用ポンプ部品、各種熱交換器伝熱管用のフェロコチューブ、各種の原子炉機器に使用される厚鋼板、溶接材料
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