子どもたちの生涯被ばく線量を考えなくていいの?
子どもは放射能の影響をおとなより受けやすい
グリーンピース・ジャパンで毎年行っている放射能調査に参加していて、いつも思うのは、「ここ、避難指示解除ってことは、子どもも含めて避難指示解除ってことなんだよな」ということです。
子どもは、おとな男性の2〜3倍くらい、放射能の影響を受けやすいと言われています。
なのに、子どものそうした事情が考慮されることなく、避難指示が解除されています。
グリーンピースでは、去年、福島県で避難指示が解除された場所の、「戻ってずっと暮らしたら生涯にわたってどれくらい被ばくするか」(生涯被ばく線量)の推定結果を発表しました。
飯舘村の北部、南部、中心部の住居7軒で70年過ごした場合の生涯被ばく線量推定では、4軒で、100ミリシーベルトを超えました。(下図 『遠い日常:福島・飯舘村の民家における放射線の状況と潜在的生涯被ばく線量』より )
100ミリシーベルト以上の被ばくで、がんで死亡するリスクがあがると言われています。
放射線には「これ以上放射線量が低ければ、確率的影響(がんや遺伝的影響)のリスクがない」という「しきい値」はありません。
線量が低くてもその線量の分だけリスクはありえます。
子どもの権利条約ってご存知ですか?
子どもの権利条約は、子どもの基本的人権を守るために1989年につくられた条約です。
日本は1994年に批准しています。
その条約の第3条には、子どもの「最善の利益」が考慮されなければならないとしています。
生涯に100ミリシーベルト以上放射線を浴びるかもしれない場所に戻すことが、子どもの「最善の利益」を考慮した政策でしょうか?
帰還する、しないを決めるのは、おとな。そのおとなが子どもの「最善の利益」を考えて判断できるように情報を提供し、その結果、戻ることにした場合でも、戻らないことにした場合でも、子どもの「最善の利益」を考えて、健康面、経済面の賠償やサポートがされるべきだと考えます。
国連には、条約がちゃんと守られているかを見て、報告をする委員会があります。
「国連子どもの権利委員会」です。その委員会が今、が日本についての報告をつくっています。
その報告には、日本政府が作った報告書と、市民社会(NGOなど)からの報告書の両方が反映されます。
放射能測定の結果を世界に伝える
(写真は国連人権理事会でのサイドイベントの様子。2018年3月)
グリーンピースは、国連子どもの権利委員会にあてて、生涯被ばく線量について知らされることもなく、避難指示が解除されている実情、グリーンピースの調査結果をもとに推定した生涯被ばく線量について伝える意見書を送りました。
世界中の政府が福島の子どもたちを守るために声をあげてくれることを期待しています。
今年もまもなく、グリーンピースの福島放射能調査が始まります。
調査結果は、日英で国の内外に発信するだけでなく、国連人権機関にも意見書の形で伝えます。
放射能調査クラウドファンディング実施中です。ぜひ、8年目の放射能調査をご支援ください。