今年の夏も記録的な猛暑に見舞われ、気温上昇への適応策は緊急性を増しています。グリーンピースでは、子どもたちを危険な暑さから守り、かつ気候変動対策となる学校の断熱改修を推進しています。夏休みに入る前の教室の温度を測りました。

どの学校でも、基準の室温を超える

温暖化が進むなか、いま学校の教室はどれほど暑いのか。全国で教室のエアコン設置率が約95%に達したけれど、冷房はちゃんと効いているのか──グリーンピース・ジャパンは東京、神奈川、三重の小学校と埼玉の高校から協力を得て、教室の温度を測定しました。(この調査では、東京大学大学院の前真之准教授に熱画像の撮影や分析の面でご協力いただきました)

調査は学校が夏休みに入る前の7月1日〜19日に行いました。文部科学省は、教室温度の基準として28℃以下を推奨しています。生徒が学校で過ごす時間帯(小学校は8時〜13時、高校は8時〜15時、毎時4回計測)でデータを分析したところ、どの学校でも長時間にわたって基準の室温を超えていたことがわかりました(上グラフ参照)。

また神奈川と埼玉では、学校活動時間の1 割以上が室温 32℃を超えました。
*小学校では朝8時から13時、高校では朝8時から15時までを「活動時間」として、その時間帯のみを取り出してまとめました。また休日についても除外しています。

計測した3週間のうち、最も暑かった7月8日のデータを見てみます(上4つのグラフ)。

外気温(黒線)が上がる一方で、教室温度(オレンジ色)は朝7時頃から下がり、エアコンが使われていることがわかります。しかし、冷房を入れても温度の下がりが遅く、どの教室でも基準の28℃以下を下回ることはありませんでした。この日、授業のある全時間帯にわたって、埼玉と東京では30℃、神奈川では32℃を超えていました。

暑い「ゼロ断熱」の教室には、緊急の対策を

今回の調査で、子どもたちが基準を超えた暑さの教室で長時間を過ごし、それが1日だけでなく何日も連続していることが明らかになりました。協力してくれた4校は、コンクリートに囲まれた都会にある学校もあれば、自然に囲まれた地帯にある学校もあります。校舎の築年数も、各教室の日射量もそれぞれ違っています。教室内にいる生徒数も、20人だったり35人だったり、さまざまです。環境や条件が大きく異なるにもかかわらず、どの教室でも基準以上の温度を記録しました。この暑さが、子どもたちの健康や授業への集中力にどれほど影響を及ぼすのか、深く懸念されます。

グリーンピースでは、9月4日に記者会見を行い、結果を発表するとともに次の提言を示しました。さっそくある行政の方から「資料を予算要望に活用します」とメッセージをいただきました。

・教室の断熱性能を高めるための工事を行う。特に、屋根・天井に全く断熱が施されていない「ゼロ断熱」の教室には、緊急で対策を実施する

・窓は夏の日射遮蔽とともに、内窓追加などにより断熱性能を強化する

・外気に面する壁、特に窓側の壁に断熱材を施工する

・蛍光灯を省エネで発熱も少ないLEDに(同時の工事で効率よく)

・耐震工事や防水工事の際に十分な量の断熱材を敷き込む(同時の工事で効率よく)(冬の寒さ対策のためにも断熱改修が急がれる)

・なお、温室効果ガスの排出削減には、こうした省エネとともに、屋上への太陽光発電設備の設置、使用する電力を再生可能エネルギー100%にする、エコアンのコンパクト化および電化もかかせない。

子どもたちを暑さから守るためにあなたにできること


グリーンピースは今回の調査結果をもとに、学校の断熱化を進めるべく、政府や自治体に対しさらなる働きかけを行います。

より多くの方々に関心をもってもらうため、また、実情をお知らせするため、学校の断熱改修について解説する特設サイトを開設しました。教室の現状や断熱のメリット、すぐできることなどをまとめています。断熱の良さを伝える子ども向けの教材もダウンロードしていただけます。

以下のサイトにアクセスして、子どもたちを暑さから守るために一緒に行動しましょう。