Team PlantsのRinaです。
今回私はオーストラリア、クイーンズランド州でビーキーピングをしているダンさんのオーガニック養蜂場を訪れました。ダンさんはなるべく人間の手を加えず、自然のなかでハチを管理しています。

Team Plants Rinaのオーガニック養蜂場レポートPart 1はこちら

ダンさんのオーガニック養蜂場見学

ダンさんは、ビーキーパーの仕事を私に見せてくれました。

ビーキーパーの仕事は、蜂の成長にあわせて巣箱を大きくします。
ハチが興奮しないように、まずビーハイブスモーカー(燻煙器)でハチを落ち着かせます。

煙は薬品を使わず、廃棄されるコーヒーバッグを燃やして煙を焚きます。
巣箱を開くと、蜂がたくさんいて、蜂蜜が巣板から溢れています。
ダンさんはこのように巣板からはみ出した蜂蜜をそぎ落とします。

布についた寄生虫を取り除きます。寄生虫は、蜂の幼虫を食べてしまいます。

そして、ミツバチの数が多くなり、ハチミツが巣箱に収まりきらなくなったら、一段積み上げて段数を増やします。

ダンさんはこの作業を、一人でひとつひとつ丁寧にこなします。

巣板の作成

ダンさんの養蜂がオーガニックであるもう一つのポイントは、巣板です。
ダンさんは巣板を手作りしていて、フレームはリユースし、材料は100%自分のミツバチからできたミツロウを使います。
スロークッカーでミツロウを溶かし、型を作ります。

ミツロウを電圧機の熱でフレームにくっつけます。

こうしてフレームをリユースし、自分のミツバチから材料を生成することで、環境に配慮した養蜂ができるのです。

オーストラリアの農業水産省で働くダンさん

今回私に、ご自身のオーガニック養蜂場を見せてくれたダンさん。
ダンさんの本職は、オーストラリアの農業水産省DAF(Department of Agriculture and Fisheries)の職員で、クイーンズランド州で生産された新鮮な農作物を、最善な方法で処理する研究をしています。例えば、海外に輸出する農作物を、殺虫剤を使わずに安心安全な方法で虫を駆除する研究しています。
その傍ら、自宅にホビーファームを持ち、ビーキーピングをしています。
ビーキーピングは、蜂の寄生虫の研究に役立っています。

ダンさんがビーキーピングを始めたきっかけ

ダンさんがビーキーピングを始めた理由は、ハチミツを売ったり、ミツバチの研究をするためではありません。
ダンさんは、昔からパーマカルチャーに興味がありました。
そして、自立した循環を持つライフスタイルを実現するため、庭に作物を植えました。
さらに、サスティナブルな方法で作物がよりよく育つ環境を作るために、受粉を助ける役割を持つミツバチを一緒に育てたいと考えました。
そして、ダンさんは8年前にビーキーピングを始めました。
化学物質や農薬を使用せず、自然な養蜂方法でミツバチを管理し、今ではクイーンズランド州内に6か所養蜂場をもち、Greenleaf Gardens Honeyというハチミツの会社を作りました。

ダンさんのパーマカルチャーに対する想いは今も変わりません。
自然の循環の中で、クイーンズランドの花から作られたこの美しい蜂蜜を、自分や地元の人たちが必要な分だけ収穫できればいいといいます。

近年の蜂の急激な減少とその原因

ハチは環境保護、食料危機の回避に欠かすことができません。
なぜなら、ハチは植物の受粉と大きく関わっているからです。
ハチは餌である花の蜜や花粉をとるために、花から花へと飛び回って花粉を運びます。
その際、体に花粉を付着させ、効率的に授粉を行います。
こうして植物と蜂は共存関係を築いています。
蜂は自然を育み、私たちが食べている商業作物の受粉も助けます。
2011年、国連環境計画(UNEP)アヒム・シュタイナー事務局長は「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介している」と報告しました。
ハチの働きは授粉だけではありません。ハチは農産物としてはちみつやミツロウを作ります。蜂蜜は栄養価の高い食品であり、蜜ろうはキャンドルやリップクリーム、蜜ろうラップなどに利用されます。
蜂は人間や地球上の生物に多くの恩恵を与える欠かせない存在です。
しかし近年、ハチと植物の共存関係が崩れて、ハチの数は年々減少しています。

工場型農業とネオニコチノイド系農薬

近年世界では農作物の大量生産と効率化を図り、画一した農業方法をとるため工場型農業を急拡大しました。工場型農業とは、自然を壊して田畑を開拓し、遺伝子組み換え作物を植えたり、化学肥料や殺虫剤・除草剤といった農薬を使う農業のことです。
農薬の中でも、世界的に問題となっているのがネオニコチノイド系農薬。
ネオニコチノイド系農薬は神経毒によってハチを混乱させ、巣までの帰り道がわからなくなり、コロニーの集団喪失・大量死を引き起こす蜂群崩壊症候群(CCD)の原因であると指摘されています。
さらに農地の開拓や除草剤により、蜂のエサとなる開花雑草がなくなったのも、蜂が減少した大きな要因のひとつです。
しかし日本では、2015年から規制を緩和していて、世界と逆行した政策を行っています。

オーストラリアのネオニコチノイド系農薬の扱い

ダンさんに、オーストラリア政府の農薬、ネオニコチノイドに対する見解をうかがいました。
オーストラリアの場合、ネオニコチノイドを含む農薬は、オーストラリア農薬獣医局(APVMA)によって規制されています。ただし、ネオニコチノイドはラベルに従って使用することが承認されています。化学物質の使用は定期的に見直されていますが、現在は使用禁止には至っていません。
ネオニコチノイドと蜂の大量消失の因果関係は証明されていませんが、問題ないと結論付けた大手企業や研究機関の調査結果はしばしば過信されることがあります。
ダンさんは、化学物質の影響に関する独立した研究機関を設立する必要があると言います。

世界で広がるネオニコチノイド系農薬の規制と禁止

世界で問題になっているハチの激減。ハチの体内からは残留殺虫剤や除草剤が検出されています。このまま受粉の役割を担うハチが減り続ければ、自然がどんどん失われ、気候変動の悪化と食料危機が懸念されます。
ハチの数を取り戻すために、ネオニコチノイド系農薬の規制と禁止を行う必要があります。
EUは2018年4月にネオニコチノイド系農薬の屋外での使用を禁止しました。
EUだけでなく、アメリカや中国、韓国でもネオニコチノイド系製剤をはじめとした農薬を規制しています。
しかし日本では世界と逆行した政策をとっています。厚生労働省は2013年10月約40種類の食品に含まれるネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの残留農薬基準値を最大2000倍と大幅に緩和する方針を示しました。
そして2017年12月25日、農林水産省は、ネオニコチノイド系農薬スルホキサフロルの使用を認可しました。
日本は明らかに世界と逆行した政策をとっていて、グリーンピースジャパンは、日本が直ちに農業政策を見直し、ネオニコチノイド系農薬の規制を強化する必要があると考えます。

今回取材させていただいたダンさんは、植物とハチの共存関係を熟知し、自分の敷地に野菜とハチを一緒に育てることで、小さな命の循環を作っています。
私たちも、命の循環を大切する生態系農業を行えば、ハチの生息できる自然が戻り、気候変動を止めることができるでしょう。
生き物は命の連鎖でできていて、それが豊かな地球を作っていることを、ダンさんはミツバチ通して教えてくれました。

私たちチームプランツは、気候変動を止めるため、生態系農業を推進しています。