100年に一度の大雨

放射線調査(注1)を行ったのは、100年に一度の激しい大雨の直後でした。

道のあちらこちらに、泥のついた枝葉が吹き溜まっていました。

そういうところの線量を測定すると、きまって周辺より高いいわゆる「ホットスポット」となっていました。

調査チームの宿泊所近くの道路に水があふれていました。2019年10月25日 
©Shaun Burnie@Greenpeace

道のあちらこちらに、泥のついた枝葉が吹き溜まっていました。

除染されない森のホットスポット

避難指示が解除された浪江町の市街地にある、閉鎖中の小学校沿いの道路とその向かいの森の放射線量を調査しました。

すると、小学校の向かい側の森の中で、地上10センチの高さで毎時5.3マイクロシーベルト、50センチで毎時3.1マイクロシーベルト、地上1メートルの高さで毎時2.6マイクロシーベルトのホットスポットがありました。森は、道路から20メートルまで入ったところしか除染することになっていません(それが政府が決めた決まりです)から、放射線量が高いのはあたりまえですが、避難指示が解除されている地域で、立て札もなにもないところに、事故前の放射線量(毎時0.04マイクロシーベルト)の何十倍も高い場所が存在しています。(下図)

グリーンピース報告書「終わらない汚染」より

森沿いの道路のホットスポット

道路沿いのホットスポットの最大値は、地表から1メートル、50センチメートル、センチメートルでそれぞれ毎時1.3、1.8、2.9マイクロシーベルトでした。


森が運ぶ放射能

この道路脇のホットスポットはどこから来たのでしょうか?

このホットスポットが見つかったところは、直前の大雨によって泥や葉、枝が吹き寄せられた場所でした。

森は道路との境から20メートル入ったところまでを除染することになっています。

逆にいえば、森のほとんどは除染されていません。

そのため、森が放射性物質の貯蔵庫となっています。台風がその貯蔵庫のドアを開けてしまいました。

雨の流れる先にホットスポット

2017年から毎年調査を継続している帰還困難区域にある菅野みずえさんのお宅では、多くのゾーンで放射線レベルが大幅に下がりました(表参照)。その一方で、雨水が流れる先である敷地外の窪みにホットスポットができていました(図参照)。

ゾーン9の窪みがホットスポットに。

除染しても、大雨が降ればまた出現するホットスポット

今回の調査にグリーンピース・ベルギーから参加した放射線防護アドバイザーのヤン・ヴァンダ・プッタ。
「除染しても、一回大雨が降れば、再汚染してまた除染が必要になる。除染は終わらない作業。原発事故というのはそういうこと」

除染を何回したとしても、一度大雨が降れば、ホットスポットが出現してしまいます。

大雨が放射性物質を洗い流しもしたけれど、消えたわけではなく、移動したのです。地球温暖化による気候危機によって、「これまでに経験したことのない」大雨や台風被害がもたらされるようになった昨今、とても心配なことです。

原発事故は、除染をすれば終わるものではありません

「除染完了」という実績作りのためではなく、暮らしを守るための政策が必要です。

国連の専門家の訪日調査の実現を

実は、被害当事者や、NGOによる国際社会への発信もあって、国連の専門家が、日本で原発事故避難者の実態調査を希望しています。
セシリア・ヒメネス・ダマリーさんとおっしゃる国連の「国内避難民の人権に関する特別報告者」で、独立した立場で調査し、国に勧告を出すことができる人です。

セシリアさんは、過去にも日本に原発事故被害者の調査を申し入れましたが、日本政府が受け入れておらず、未だに実現していません。

特別報告者に実情をつぶさに見てもらうことは、被災者・避難者にとっても、また、日本政府の国際的信用にとっても、非常に意義のあることだと思います。

今度こそ国連の特別報告者の訪日調査を実現するための署名に、ぜひご協力ください。

(注1) 10月16日から11月5日まで、福島県の浪江町、飯舘村、大熊町、福島市、楢葉町、そして阿武隈川河川区域で、放射線調査をしました。

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