◼︎水没した街並み

豪雨で冠水した佐賀県大町町の住宅地。近くの鉄工所から大量の油が流出した(2019年8月30日)


視界いっぱいに広がった水面。足元の道路は数メートル先で水の中に消え、ところどころに建物が島のように顔を出していました。

 

グリーンピース・ジャパンは、災害発生直後の8月29日から31日にかけて豪雨に見舞われた佐賀県を訪れました。気候変動がもたらす影響を確認し、住民の方々に聞き取り調査を行うためです。これは環境破壊の現場を確かめ、その事実を国内外に発信する活動「ベアリングウィットネス(bearing witness)」の一環です。

 

大町町の鉄工所付近では住宅地に流れ込んだ油の回収作業が行われていた


8月28日に九州北部を襲った集中豪雨で、佐賀市では1時間に100ミリを超える雨が降り、気象庁は佐賀、福岡、長崎の各県に大雨特別警報を発表しました。被害の集中した佐賀県では、佐賀市や武雄市、大町町などが広い範囲で冠水しました。

 

大町町では冠水によって病院が一時孤立状態となったうえ、浸水した鉄工所から油が流出する被害も発生。油は近くを流れる六角川や河口の有明海付近でも見つかり、干潟に住むムツゴロウなどの生き物や海苔の養殖への影響も懸念されました。

 

ポンプ車を使った排水作業により30日夕ごろに水は引きましたが、あたりは一面泥に覆われていました。家屋や店舗には雨とともに大量の泥水が流れ込み、住民の方々は泥をかき出したり、汚れた家具を運び出す作業にあたっていました。油が流出した鉄工所周辺では道路や住宅の外壁、田畑に大量の油が残され、あたりには強い油の臭いが立ち込めていました。

 

 

◼︎まさか自分が・・・

武雄市のボランティアセンターで、駆けつけたボランティアに指示を出す吉田秀敏さん(中央)


「まさか自分のところにくるとは思わなかった。でもこれが災害なんですね」

 

武雄市の住民で、同市ボランティアセンターでアドバイザーを務める吉田秀敏さんは、東日本大震災をきっかけに熊本地震などの多くの災害でボランティアとして活躍してきました。そんな彼も、自分が住む地域が災害に見舞われるとは思いもよらなかったといいます。

 

「国道をバイクで走っていると、急に滝のような雨が降ってきて何も見えなくなった。本当に死ぬかと思いました」

 

何とか自宅に帰りついたものの、わずか数時間の雨で故郷の風景は一変していたといいます。その後、被災地での豊富なボランティア経験から、市のボランティアセンターで、各地から集まったボランティアの統括を任されました。

 

武雄市内のグラウンドに運び込まれた大量の災害ごみ

 

「自分の身は自分で守る」「休憩を取ることは恥ずかしくない。我慢して倒れることの方が問題」「不審者が現れるので住民の方には必ず挨拶を」。続々と集まるボランティアに対し、汚れた畳の搬出や泥の片付けなど、住民から依頼のあった仕事をてきぱきと割り振っていく吉田さん。

 

「きょうあすに片付く問題ではない。少しずつでも元に戻していかなくてはならないんです」と、自らの経験をもとに、呼びかけていました。

 

 

◼︎命を脅かす気候変動

豪雨による土砂崩れで本堂が倒壊した武雄市内の寺院


近年、日本ではこうした集中豪雨は毎年のように発生しており、大きな被害を引き起こしています。2014年には広島県で豪雨による土砂災害などで70人以上が死亡、2018年6~7月の西日本豪雨では260人以上が亡くなっています。

 

加速的に進む地球温暖化などの気候変動が、豪雨などの気象災害の規模に影響していると指摘されています。気候変動対策は、今回のような自然災害から私たちの命や生活を守ることに直結しています。

 

「温暖化の影響は確かにあると思う。それは日本国内だけで済む問題でもないと思う」

 

多くの災害の爪痕を目にしてきた吉田さんも、そう感じるといいます。

 

「私たちは地球に生かされていることを知るべきだと思います。天が与えてくれているということを、特に子供たちに感じてもらいたいです」

 

 

 

一瞬の豪雨で、大きく姿を変えた街並み。少しずつ復旧作業が進む中で、改めて気象災害の恐ろしさと、将来の被害を少しでも抑えるための気候変動対策の大切さを痛感しました。

 

グリーンピース・ジャパンでは、内閣総理大臣に気候変動対策を本気で進めるよう求める署名を募っています。自然災害は不意に発生し、瞬く間に大きな被害をもたらします。私たちの命や生活を守るため、小さな一歩を踏み出してみませんか?

 

 

 

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