グリーンピース・ジャパンでは、昨年より「終活セミナー」を開催しています。なぜ環境保護団体が終活セミナーを? と思われる方もいるかもしれません。それは、大切な財産を環境をまもるために活用する方法があるからです。

その方法が遺贈寄付です。遺言書に寄付の意思を示し、団体や個人などに寄付することを遺贈寄付といいます。日本ではまだ知らない人も多いようですが、グリーンピースの海外のオフィスでは、遺贈寄付が寄付収入の10%を占めるところもあるほど、環境保護のためになくてはならない寄付の方法でもあります。

そこで、現在グリーンピースの活動を支えてくださっている皆さまに、終活セミナーをきっかけに遺贈寄付への関心を深めていただきたいと、イベントを開催しています。

他人事ではない、相続争い

「相続編」の講師にお招きしたのは、相続に関するご著書もある、おおさか法務事務所の川原田慶太先生です。実は川原田先生も、グリーンピース・ジャパンのサポーターのお一人。環境問題へのご関心も高く、ユーモアあふれる大阪弁の軽快なトークで盛り上げる川原田先生のおかげで、終始和やかにセミナーは進行しました。

まず、川原田先生が説明したのは、相続の基本知識。「財産なんてないから…」という人でも、金融機関の口座には預貯金がありませんか? 中には持ち家がある人もいるでしょう。そのような財産はすべて遺産として、遺産分割協議にかけられることになります。誰もが相続と無関係ではいられないのです。

遺産分割協議は相続人全員の協力が必要なので、疎遠なきょうだいや、故人の前妻の子どもなどがいると大変です。相続争いが起きて裁判に発展するのは、相続の1%程度。少ないと思われるかもしれませんが、ひとつの相続には複数の人が関わってくるので、当事者はかなりの数にのぼります。

川原田先生から紹介されたトラブル事例としては、「相続人でない人に相続させたい」ケース。たとえば、長男の配偶者がこれにあたります。長男の配偶者は相続人にはあたらないため、どれだけお世話になったとしても、遺言に書いておかない限り、相続させることができません。

ほかにも、「先妻と現在の妻、それぞれに子どもがいる」ケース。先妻の子どもとは、現在の妻やその子どもが疎遠であっても不思議ではありません。けれども父が亡くなれば、先妻の子どもであれ相続人になるので、遺産分割協議に関わってきます。

さらに、「相続財産が不動産がメインである」ケースなどもあります。不動産は分割しにくいため、ほかの相続人から相続分を要求されると、住み続けようと考えていた家を泣く泣く手放して現金をつくり、支払わざるをえなくなることもあります。また、遺産分割協議をしなければならないのに「きょうだい同士の仲が悪い」ケースなどは、そんなに珍しくないことでしょう。

いずれのケースも、相続税の納付期限である、逝去後10カ月以内に協議を終え、相続税を現金で納めなければなりません。自分の遺族がその対応をしなければならないと考えたら、何か準備をしなければ…という気がしませんか。

スーパーのチラシの裏に書いた遺言が…?

相続をスムーズに進めるために大切なものは、「遺言」です。川原田先生からも、遺言の書き方について基本的な知識と注意点の説明がありました。

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遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。「自筆証書遺言」は、その名のとおり、自分で書いた遺言。手軽ではありますが、不備が生じたり、偽造されたりする可能性も。「自筆証書遺言」は、法務局に保管してもらうことができるので、ぜひ利用しましょう。ただし、法務局は持ち込まれた遺言書の有効性を担保してくれるわけではありません。遺言書は少しでも不備があれば有効性を失いますので、自筆証書遺言を選ぶにしても、一度専門家に相談するほうが安心です。

「公正証書遺言」は、公証役場で作成するため費用がかかりますが、証拠能力が高く、偽造や紛失の心配もないので、安心です。川原田先生も「公正証書遺言」にするように強くおすすめしていました。

けれども、スーパーのチラシの裏に書いておいた遺言が有効になったというケースもあり(無効になる可能性が高いので、推奨しません)、まずは自分の意思を明らかにしておくことが重要かもしれません。ほかにも、遺言執行者を決めておくこと、遺留分に配慮することなど、さまざまな注意点を教えていただきました。

質疑応答では、参加者の皆さんから積極的に質問がありました。やはり専門家に尋ねる機会は、なかなかないものでしょう。今後もこうしたイベントを開催していきたいと思いますので、ぜひこうした機会を有効活用していただけたらと思います。また、グリーンピースでは専門家を紹介することも可能なので、個別に相談したいというご要望も承ります。

遺贈寄付について初めて耳にしたけれど、もう少し詳しく知りたいという方に、遺贈寄付に関する資料をお送りしております。今なら、2021年9月末までに資料をご請求いただいた方には、グリーンピースの特製ピンバッジもプレゼントします。ぜひこの機会に資料を目にして、遺贈寄付について考えてみませんか?