署名提出前に。外務省にて。

署名提出前に。外務省にて。右、元除染作業員の池田さん

5月15日、「国連からの提言を受け入れ、除染作業員の人権をまもってください」と外務省に求める7735筆の署名を提出しました。

署名にご参加くださった多くのみなさま、ありがとうございました。

おかげさまで実現できたことがいろいろありました。

署名が叶えた3つのこと、聞いてください。

写真:2014年に浪江町で除染作業をしていた池田さん ©︎ Greenpeace

写真:2014年に浪江町で除染作業をしていた池田さん ©︎ Greenpeace

池田さんの話しをたくさんの人に知ってもらえたこと

ひとつは、元除染作業員の池田実さんの話をたくさんの人に知ってもらえたことです。

署名を始めるにあたって、元除染作業員の池田さんに経験を話してもらうことにし、3月8日には池田さんをむかえて、記者会見をしました。

「除染の装備はマスクと手袋とヘルメットだけ、行き先も知らされないこともあった」
「放射線防御についての十分な教育もなし、被ばく管理状況も不明」

記者会見をきっかけに、多くのメディアが池田さんの話を記事にしています。

読売新聞、朝日新聞、共同通信、週刊東洋経済、yahoo news…

WEBで読める記事もたくさんあります。

いろいろなグループとつながれたこと

私は、浪江町など放射線量の高い地域も「除染して避難指示解除」という日本政府の早期帰還政策のために、除染作業員に被ばくを強いている現実を、放射線調査を通して目のあたりにしてきました。

今回、より深く実態を把握するため、「被ばく労働を考えるネットワーク」からお話をお伺いしたり、労働者の方を紹介していただいたりしました。

また、署名活動に際しては、労働運動の情報ネットワークである「レイバーネット」さんなどにも拡散していただきました。

これまで一緒に活動してきた環境NGOに加え、こうした労働問題に取り組むNGOともつながることができて、いろいろな視点を教えていただきました。これからのエネルギー問題の取り組みにも活かしていきたいと思います。

これまで、国連人権機関への情報提供をおこなってきましたが、今後は、除染労働者、原発労働者の問題では、こうした労働問題に取り組むNGOとも協力して、国連人権機関への情報提供をおこなっていくことにしています。

国会で質問する立憲民主党山崎誠議員 衆議院TVより

国会で質問する立憲民主党山崎誠議員 衆議院TVより

国会で国連特別報告者のことが取り上げられたこと

この署名活動を始めたきっかけは、国連特別報告者のバスクト・トゥンジャックさんらの日本政府に対する声明でした。

トゥンジャックさんは「日本政府は全力で被ばく労働者を守り、労働者を被ばくさせ続ける政策を見直すべき」と発言していました。

これに対し、外務省は「一方的な情報に基づいて声明を出したことは遺憾」と反発しました。

しかし、グリーンピースの調査結果を見ても、日本政府の政策が「労働者を被ばくさせ続ける」ものであることは明らかでした。

たとえば、浪江町。

グリーンピースの調査では、除染労働者がいた場所で測定した456地点の平均値は毎時3.1マイクロシーベルト、最大値は毎時7マイクロシーベルトでした。

毎時3.1マイクロシーベルトは「その場所」に一日8時間、3日も働けば胸部レントゲンを受けるに相当する放射線線量です。また、平均値の毎時3.1マイクロシーベルトは事故前の放射線量(0.04マイクロシーベルト)の77.5倍です。(詳しくはこちらのまとめサイトまたは報告書

そうしたことから、外務省に、国連からの声を聞いて、除染労働者の人権を守ることを求める署名を始めました。

トゥンジャックさんのこれまでの声明や発言、トゥンジャックさんが日本を訪問しての調査を申し込んでいることをブリーフィング・ペーパーにまとめました。

その内容を、山崎誠衆議院議員が3月14日、国会で質問しました。山崎議員は、日本への訪問を申し込んでいる国連特別報告者を受け入れるようにと外務省の副大臣に国会で求めました。阿部副大臣は、福島を見ていただく、として、しっかり省庁で検討していくと答えました。国連特別報告者の日本訪問に向けての一歩前進です。

署名簿。準備後に7筆の追加があり、総筆数は7,735となった。

署名簿。準備後に7筆の追加があり、総筆数は7,735となった。

人権侵害が外国人労働者に広がる懸念

また、今回、署名の提出をきっかけに、外務省人道人権課と話し合いを持てました。

これまでも、国連の人権状況審査結果について、担当部署である外務省人道人権課と意見交換を行ってきましたが、今回は、元除染作業員の池田さんも交えて、意見交換を行うことができました。

池田さんは、作業前の放射線教育が不十分なこと、現地の放射線レベルが作業員に知らされないこと、放射線防護装備が簡易すぎること(支給はヘルメット、マスク、手袋のみ)を経験に基づいて伝えました。外務省人権人道課が、メモを取りながら、話を聞いてくれました。

そして、今、東電は外国人労働者の受け入れを表明しています。(参考記事:福島廃炉に外国人労働者 東電「特定技能」受け入れへ
池田さんは、日本人作業員の人権が守られていない状況で外国人の人権が守れるだろうかと懸念を表明しました。

外務省には、国連人権機関とやり取りする際、関係部署がまとめてきた話をそのまま国連人権機関に伝えるのではなく、現場のダブルチェックはできないとしても、常識の範囲で検討を加えることをお願いしました。

グリーンピースでは、今年も放射能調査を行い、その結果を日本社会や国際社会に伝えます。引き続きご支援をお願いいたします。

住民の話を聞くグリーンピース調査員 飯舘村

住民の話を聞くグリーンピース調査員 飯舘村

資料:
国会質問議事録(国会会議録検索システムより抜粋)
○山崎委員 実は、特別報告者の招聘要請が届いている。東京電力の原発事故の関係です。適切な住宅特別報告者、有害廃棄物特別報告者、それから国内避難民特別報告者、それぞれ要請が来ています。
一人目は、二〇一五年の三月です。もう何年前ですか、四年前。一七年に一回受入れを決めたのに取り消している、受け入れていない。二人目、二〇一六年の九月です、要請が来ています。いまだに受け入れていません。二〇一八年、去年の八月に要請が来ています。一九年、ことし訪問を希望している。受入れ、まだ決めていない。
これはどういうことですか。いつ受け入れるんですか。受け入れないんですか。
○あべ副大臣 山崎委員にお答えいたします。
委員がおっしゃるとおり、私ども今、訪日要請を受けているところでございまして、現在、我が国においての複数の特別手続からの訪日要請を受けていることに関しまして、その要請内容に関してどのように対応していくかということに関しましては、特に、外務省といたしましては、外交日程また国会会期などのさまざまな要素を総合的に考慮して検討させていただいているところでございます。
○山崎委員 過去十年の受入れの実績をいただきました。九件じゃないですね、九件だけれども、ダブっているものがありますから、十二件ぐらい要請を受け入れているようですが、これは全てですか。要するに、保留している、あるいは拒否しているものがこれ以外にありますか、この今私が挙げた三件以外。
○長岡政府参考人 お答え申し上げます。
委員に事前に提供させていただいた、二〇〇九年から二〇一七年、これが日本として受け入れた特別報告者の実績でございます。それ以外に、先ほどあべ副大臣からも御答弁申し上げていますとおり、幾つかの要請を受けているところですが、それらについては政府として対応を検討中でございます。
○山崎委員 そういったケースが幾つありますか。この三件以外に要請を受け入れていないケースは、この福島の件三件以外に何件ありますか。
○長岡政府参考人 お答え申し上げます。
現時点で日本に対する訪日要請があるものは、先ほど委員から御指摘のあった三名の特別報告者を含めて、全部で八名ございます。
以上です。
○山崎委員 この中で、例えば、二〇一五年から、二〇一六年から要請があって待っている人はいますか、八人の中に。
○長岡政府参考人 お答え申し上げます。
例えば、二〇一六年の十月に、二〇一七年に訪日をしたいという要請があった少数者の権利特別報告者という例がございます。
○山崎委員 受け入れてください。私は、調整をしているというお話ではないと思いますよ。何で受け入れないのか、私はよくわからない。誰が受け入れるんですか。復興庁じゃないんですか。あるいは厚労省、いろいろなところがあるかもしれません。調整をして、とにかく受け入れていただきたい。
これだけ受け入れている実績がある中で、保留しているところも若干あるんでしょう。理由が、何で受け入れないのか、総合的に判断する、総合的って何ですか。何で受け入れないんですか。
○長岡政府参考人 お答え申し上げます。
一般的に、特別報告者については、国連の特別報告者の仕事以外に、例えば大学で教えている人もございまして、まず、先方の日本に来たいという時期が、一年中いつでもいいというわけではなくて、ある特定の時期というのを示されることが一般でございます。
また、特別報告者の関心事項も非常に多岐にわたりますので、政府内においては、外務省が窓口となって調整をいたしますが、それぞれの関係省庁にも十分御協力いただく必要がございますし、また、地方にいろいろ視察に行きたい、こういう人に会いたい、そういう御要望もございまして、そういうことを勘案しますと、相当準備をしっかりしないといけないということで、そういったことでなかなか調整に手間取ることがあるということを御理解いただければ幸いです。
○山崎委員 少なくとも、二〇一五年、一回受入れを決めて取消し、二〇一六年、いまだに受入れせず、この二件あたりは今すぐにでも調整をすべきじゃないですか。
これは、皆さんよく言います、風評払拭だと言うじゃないですか、風評。払拭するんだったら、こういう方々をちゃんと呼んで、日本は安全だ、福島の復興は着実に進んでいる、安心してくださいと、絶好のチャンスじゃないですか。何でこれを活用しないで風評だ何だと言うんですか。
大臣、どう思いますか。外務大臣に、済みません、副大臣。
○あべ副大臣 山崎委員の思い、本当に理解しておりまして、私ども、しっかりと福島の応援をしていくということが重要だというふうに思っておりまして、外務省が今窓口となって、関係省庁の全体で検討しておりますが、また同時に、私ども外務省といたしましては、実は、女性たちが考える災害ということで、在京の海外大使をお連れいたしまして、今度、福島で皆で話合いをしていくということもさせていただいております。
そういう形で、いわゆる国内外に関して、しっかり福島を応援していく、福島の事実を見ていただく、福島に来て応援していただくということも含めて私ども検討させていただいておりまして、委員から御質問のあったことに関しましては、私ども、窓口として、しっかりと省庁で検討していきたいというふうに思っております。
○山崎委員 時間が来ました。終わりにしますが、この二週間、本当に勝負をかけてくださいね。お願いいたします。
この特別報告者の話、私はオブラートに包んでお話をしましたが、これは、不都合なことを見せたくない、そういう思いで隠しているんじゃないでしょうね。そうであったら、本当に私は、日本という国がここまで病んでしまったのかと残念でなりません。堂々と受け入れてください。それが日本の本当に誇りを取り戻すことだと思いますよ。ぜひ前向きに検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
以上です。