70代の女性を中心とする2000人以上の市民のグループ「環境を守るシニア女性の会

地球の表面温度が、10カ月連続で観測史上最高を記録しました。また、ここ12カ月の間、地球の平均気温は産業革命前の水準より1.58度上昇しており、少なくとも一時的に気候危機の分岐点といわれるパリ協定の1.5度目標を上まわっています*。環境活動は地球規模の危機に一矢報いることができているでしょうか。4月の環境ニュースをお届けします。

▼この記事を読むとわかること

> スイス:歴史的な気候訴訟の勝利
> ルーマニア:イケアが原生林の破壊に関与
> グローバル :10人中8人がプラ生産削減に賛成
> ブラジル:金融機関がアマゾンの森林伐採に資金提供
> 自然の一部としてどう自然を守るか

スイス:歴史的な気候訴訟の勝利

2024年4月9日は歴史に残る日です。スイスの気候変動への対策の不足が人権侵害であるとして市民が国を訴えた訴訟で、ヨーロッパ人権裁判所(以下ECHR)が市民の主張を認める判決を下しました。ECHRが気候変動について判決を下した初めての判例となります*

乾杯する「環境を守るシニア女性の会」のメンバーたち
乾杯する「環境を守るシニア女性の会」のメンバーたち(2024年4月)

70代の女性を中心とする2000人以上の市民のグループ「環境を守るシニア女性の会(KlimaSeniorinnen)」によるこの訴訟は、原告が年代と性別によって、気候変動による熱波の影響を特に受けやすく、命の危険があると訴えるものでした*。これに対してECHRは、スイスが気候変動対策に十分な努力をしていないことで、市民の人権を侵害していると結論付けました。この判決は、ヨーロッパの約7億人の市民を代表する約50の政府が、市民を気候変動の悪影響から守る責任を持ち、そのために最大限の努力をしなければならないということを意味します*

これまで、裁判の法的支援を含め、さまざまな方法でグループをサポートし、ともに活動を行ってきたグリーンピースは、 勇敢なメンバーを祝福します*この歴史的な勝利は、気候保護が人権であることを裏付ける重要なマイルストーンとなるでしょう。

ルーマニア:イケアが原生林の破壊に関与

グリーンピースが、世界最大の家具販売企業であるIKEA(以下イケア)が、家具生産のためルーマニアの原生林を伐採していることを突き止めました。

グリーンピースの活動家たちがルーマニアの原生林に設置したIKEAの値札を模したラベル
グリーンピースの活動家たちがルーマニアの原生林にIKEAの値札を模したラベルを設置し、ヨーロッパ最古の森林を守るよう求めた(2024年4月)

研究チームは伐採許可証や衛星写真​​などを手がかりに、木材が森林から商品棚に並ぶまでの経路を追跡。その結果、13カ国をまたぐイケアの店舗で販売されている椅子やベッドの30点で、中央・東ヨーロッパをまたぐカルパティア山脈の、人の手が入ったことのないような原生林を含む貴重な森林の木材が使用されていることが判明しました。

ルーマニアでは、ここ20年で半分もの原生林が失われたと推定されています。カルパティア山脈の森林は、ヒグマ、オオカミ、カモシカ、オオヤマネコなどの動物と、多くの希少な植物の生息地となっていますが、現在伐採から保護されているのはそのうちのたった2%ほど。イケアはグリーンピースの調査報告を受けて、即時調査と違反が見つかった場合の取引中止を含む迅速な措置を約束しています*

グローバル :10人中8人がプラ生産削減に賛成

国際プラスチック条約(以下プラ条約)の内容を決めるための4回目の政府間会合(以下INC4)が、カナダのオタワにて4月23日〜30日の期間に開催されました。

INC4開催地に、世界各地の市民団体が集結
INC4開催地に、世界各地の市民団体が集結しプラ上流規制を求めた(2024年4月)

最大の論点は、プラの生産規制を条約に盛り込むかどうか。INC4でもこの点をめぐって議論が紛糾。しかし、INC4の開催に先駆けて行われたグリーンピースの調査で、10人のうち8人がプラスチック生産の削減を条約に盛り込むことに賛成と回答しています。

plastic意見調査

日本を含む全19カ国の1万9088人中、大多数となる82%の人が、プラスチック汚染を止めるにはプラスチック生産量を削減する必要があると考えています。グリーンピースは、INC4の後、11月に予定される韓国は釜山で行われるINC5を経て策定されるプラ条約が、市民の意見を反映したものとなるよう、引き続き各国政府を後押しします。

ブラジル:銀行がアマゾンの森林伐採に資金提供

グリーンピース・ブラジルがアマゾンの熱帯雨林を破壊する活動に金融機関が資金提供で関与していることを報告しました。

アマゾンの先住民の土地での森林伐採
アマゾンの先住民の土地での森林伐採。ブラジル(2023年10月)

グリーンピースは、ブラジルやその他の国に拠点を置く銀行が、アマゾンの違法な森林伐採や環境破壊に関与する土地の所有者に総額860万米ドル(約13億1,820万円)以上にも上る資金提供を行っていることを、ブラジル中央銀行の不動産データから突き止めました。これは融資の規則にも違反しています。

生物多様性の損失や気候変動を止めるために、金融システムの抜本的な改革が欠かせません*

自然の一部としてどう自然を守るか

この4月、オーストラリアにひろがるグレートバリアリーフの4分の3が海水温の上昇によって白化していることが明らかになりました*

オーストラリアのオークビーチの砂浜に「SOS 私たちのサンゴ礁を守って」と綴るグリーンピースのボランティア
オーストラリアのオークビーチの砂浜に「SOS 私たちのサンゴ礁を守って」と綴るグリーンピースのボランティア(2022年2月)

今、恐ろしいスピードで進む地球温暖化によって世界中のサンゴ礁が白化現象の危機にさらされています。しかし、危機にあるのはサンゴだけではありません。サンゴ礁は魚、貝、エビ、カニなどの海の生き物たちの大切な住処であり、地上の熱帯雨林に匹敵する豊かな生態系の源といえるからです。

私たちは地球上でどこまでも繋がる自然のほんの一部です。グリーンピースの活動は、地球という船の乗組員として、良い連鎖を始めるために計画、実行されています。世界各地の現場から、グローバルに働きかける大胆な活動を可能にするために、ぜひ寄付というかたちでグリーンピースを応援してください。

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