太平洋とインド洋の主要な海流が合流するヌサペニダ沖をゆうゆうと泳ぐマンタ

まもなく2023年が終わります。気候災害をはじめ、温暖化の影響を強く感じる年でしたが、環境のためのアクションは止まっていません。グリーンピースは、世界中のサポーターとともに為政者や企業に対して気候対策を促し、化石燃料の段階的廃止や、プラスチックの生産削減の実現のために市民の声をリーダーに届け、生態調査と科学研究を基に活動を続けています。2024年も希望とともに力強いアクションを続けるために世界の明るいニュースを振り返りましょう。

▼この記事を読むとわかること

> 海を守るための「海洋保護条約」が国連で合意
> TikTokの親会社が2030年のカーボンニュートラル目標を発表
> ヒュンダイがアマゾン違法採掘などの用途への販売を中止
> ドイツが脱原発を達成! 再エネ100%を目指して
> 化石燃料ガスと原子力を「持続可能」とする決定に抗議の提訴
> アマゾン川での石油掘削許可取り消しに成功
> 深海採掘に反対! 100万人以上が署名に参加
> スイスで市民の意志によって気候保護法が可決
> 健康的な環境の権利を求める世界連合が国連人権賞を受賞
> イエメン沖に8年放置された老朽タンカーのオイル回収成功
> アマゾン流域の深刻な干ばつ被害への緊急支援活動

海を守るための「海洋保護条約」が国連で合意

2023年3月4日、ニューヨークで各国地域の政府がついに「海洋保護条約」に合意しました。どこの国にも属さない公海における生物多様性の保護と、持続可能な利用を目指すことが世界的に約束されることになります。

太平洋とインド洋の主要な海流が合流するヌサペニダ沖をゆうゆうと泳ぐマンタ
太平洋とインド洋の主要な海流が合流するヌサペニダ沖をゆうゆうと泳ぐマンタ

世界の海の30%を保護区にするために、海洋保護条約の実現を目指して活動してきたグリーンピースと、世界各国から集まった約500万人以上もの人々の声が、条約の合意を後押しし実現させた海を守るための大きな前進です。現在は世界の海の1%にしか満たない海洋保護区を、30%へと大きく広げるために、各国がこの条約を正式に採択し、批准、発効に踏み切るよう見守り、背中を押しましょう。

TikTokの親会社が2030年のカーボンニュートラル目標を発表

TikTokを始めとするソーシャルネットワーキングアプリを運営する中国のインターネット企業「バイトダンス」が、2030年までに使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにすること、そして、同じく2030年までに温室効果ガスの排出量を90%削減し、実質ゼロとすることを約束しました。

TikTocのロゴマーク
グリーンピースが立ち上げた「#TimeIsTikking」タグがソーシャルメディア上で幅広い議論を引き起こした

グリーンピース・イーストアジアが2022年に発表した中国のクラウドプロバイダーを分析したレポートで、気候への貢献と再生可能エネルギー利用において、ワースト企業の一つにランクされていたバイトダンスの歓迎すべき選択です。グリーンピースは、数年前からバイトダンスに再生可能エネルギー100%へのシフトを約束するよう呼びかけてきました*

ヒュンダイがアマゾン違法採掘などの用途への販売を中止

4月12日、グリーンピース・東アジアとグリーンピース・ブラジルは共同で、韓国企業のHDヒュンダイ建設機械(HD Hyundai Construction Equipment、以下HD HCE)の重機が、アマゾンの先住民族の土地での違法な金採掘に使われていることを報告しました。

重機の使用が違法採掘の破壊力をどれほど強めるかを調査するために行われたグリーンピースの飛行偵察で撮影された採掘の様子
重機の使用が違法採掘の破壊力をどれほど強めるかを調査するために行われた飛行偵察で撮影された採掘の様子。ブラジル(2023年3月23日)

グリーンピースが2021年から2023年にかけて行ってきた空中からの偵察と衛星地図の分析で、アマゾンの違法採掘の現場に、HD HCEのブラジル子会社が製造した油圧シャベルが多く使われていることがわかり、グリーンピースは国際的なキャンペーンを開始。ヒュンダイに、製造重機の使用用途に責任を持ち、違法採掘への加担を止めるように求めました。

報告書の発表から約2週間後の4月28日、HD HCEは声明を発表し、アマゾンを保護するために努力することを宣言し、アマゾン採掘などの違法用途への重機の販売を中止しました。グリーンピースでも初めてとなる東アジアとブラジルとの力強い協力体制が引き出した、HD HCEの歓迎すべき決断です。

ドイツが脱原発を達成! 再エネ100%を目指して

稼働していた最後の3基が送電網から切り離され、4月15日、ついにドイツで脱原発が実現しました。

最後まで稼働していた3基のうちの1つ、エムズランド原子力発電所に投影された「シャットダウン」の文字
最後まで稼働していた3基のうちの1つ、エムズランド原子力発電所に投影された「シャットダウン」の文字。(2023年3月)

2000年には国内の発電に占める原子力の割合が30%だったドイツ。昨年2022年に6%に、そしてついに2023年4月にゼロを達成しました。また、再エネの割合も2000年の7%から45%へと大幅に伸ばしていて、2035年までに再エネ100%の電力供給を目指しています。グリーンピース・ドイツは科学的根拠に基づいて、市民とともに長く反核運動を続けてきました。この大きな勝利は、何十年も抗議を続けてきた多くの人々の努力の賜物です。

化石燃料ガスと原子力を「持続可能」とする決定に抗議の提訴

欧州委員会が、持続可能な投資先リスト「タクソノミー」に、化石燃料ガス*と原子力を含むとした決定に対して、グリーンピースが見直しを求めて提訴しました。

ルクセンブルクの裁判所の前で、グリーンウォッシュに抗議するグリーンピース・ドイツの事務局長らメンバー
グリーンピース・ドイツの事務局長らメンバーがルクセンブルクの裁判所の前で、グリーンウォッシュに抗議した。(2023年4月18日)

グリーンピースは2022年9月9日の時点で欧州委員会に決定の見直しを求めていましたが、2023年2月8日にこれが却下されたことを受けて、4月18日にドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク、中・東欧のグリーンピース事務所とグリーンピース欧州が共同で提訴へと踏み切りました。化石燃料ガスや原発を「環境に優しい」と分類することは、化石燃料への依存を強め、核の危険をひろめ、環境破壊へと繋がります。グリーンピースのほか、ClientEarth、WWF European Policy Office、BUND (Friends of the Earth Germany)、Transport and Environmentが、タクソノミーに化石燃料ガスが含まれていることに異議を唱えています*

*一般に「天然ガス」と呼ばれる炭化水素ガス。「天然」という表現が実体と乖離しているためにグリーンピースは「天然ガス」という言葉を使用していません。

アマゾン川での石油掘削許可取り消しに成功

5月17日、ブラジル環境・再生可能天然資源院(以下、IBAMA)トップのロドリゴ・アゴスティーニョ氏が、ペトロブラス社(PBR)へのアマゾン川河口で石油採掘をする認可を取り下げました。

アマゾン川河口の中層サンゴ礁
アマゾン川河口の中層サンゴ礁(2019年9月)。アマゾンのサンゴ礁を記録する史上初のダイビングを成功させたグリーンピースの調査より。

2018年、グリーンピースはアマゾン川河口に驚くほど豊かなサンゴ礁が広がっていることを調査によって確認し、国際的に報告しました。ルラ政権によって、再編成・強化されつつあるIBAMAが、石油プロジェクトを阻止し、アマゾン川河口の貴重な海洋生態系を守ったことは大きな勝利です。グリーンピースはアマゾンの森林だけでなく、サンゴを守るための活動を続けています*

深海採掘に反対! 100万人以上が署名に参加

いのちのゆりかごである海の中でも、深海は生物多様性の宝庫です。グリーンピースは資源開発のための深海採掘に反対し、現在100万人以上の賛同が世界中から寄せられています。

オタワのメープル島で行われた深海採掘に反対するアクション
オタワのメープル島で行われた深海採掘に反対するアクション。1,000個以上のLEDライトでかたちづくられたタコが「深海採掘を止めろ!」と書かれたバナーを掲げている。カナダ。(2023年6月)

5月には、鉱物資源事業を手がける企業の開発予定地とされていたクラリオン・クリッパートン地帯で5,000種以上もの新種の深海生物が発見されました*。深海は、世界最大かつもっとも壊れやすい生態系の1つです。その生態系はひとたび破壊されてしまえば、二度ともとには戻らない可能性があるものです。グリーンピースは破壊的な採掘産業の立ち上げを阻止し、深海を採掘から守るために活動しています。

スイスで市民の意志によって気候保護法が可決

6月18日、スイスで行われた国民投票によって、気候保護を目的とした「気候保護法」が有権者の59.07%の賛成票を得て可決されました*

グリーンピースによって構築されてきた国民発議「氷河イニシアチブ」が約11万2,000の署名を連邦首相官邸に提出した。スイス、ベルン
グリーンピースによって構築されてきた国民発議「氷河イニシアチブ」は4ヶ月で10万人以上の賛同を集め、最終的に自治体の認証を得た約11万2,000の署名を連邦首相官邸に提出した。スイス、ベルン。(2019年11月)

グリーンピース・スイスは2017年頃から、温室効果ガス排出を実質ゼロにするための法整備を目指して政府に戦略的な働きかけを行ってきました。スイスでは、国民によって憲法の改正提案を行うために有権者10万人以上の賛同が必要です。グリーンピースは国民発議「氷河イニシアチブ」を計画、市民団体と協力し、最終的に約11万2,000の署名に自治体の認証を得て、化石燃料の使用禁止など野心的な法案を求めました。可決された「気候保護法」は化石燃料の使用禁止を含みませんが、結果として、2050年までの温室効果ガス排出ゼロに整合するエネルギー消費削減がスイス憲法に盛り込まれるという大きな前進が達成されました。

健康的な環境の権利を求める世界連合が国連人権賞を受賞

7月に「健康的な環境の権利を求める世界連合(以下世界連合)」が2023年度の国連人権賞を受賞しました。清潔で健康で持続可能な環境を普遍的な人権として認めることを求めた取り組みの重要性が評価された結果です*

ダボスで開催された世界経済フォーラムへの抗議のために集まった人々
ダボスで開催された世界経済フォーラムへの抗議のために集まった人々。抗議が行われたマニラは、富裕層のための機関や施設が、貧困によって健康的環境へのアクセスを脅かされている居住区域に近接している。フィリピン(2019年1月)

グリーンピースは、先住民コミュニティや、地域社会、学者たちとともに世界連合に参加し、健康的な環境が人権として認められるよう声をあげ続けてきました。活動が実を結び、2022年の7月28日に国連が、地球上のすべての人が健全な環境で暮らす権利を有することを宣言*。きれいな空気、水、安定した気候といった健康的な環境が正式に人権として認められることとなりました**。清潔で健康的で持続可能な環境は人間にとって不可欠です。これらを人権としてすべての人に保障するため、世界各地の政府や為政者、企業には持続可能な環境のための選択が求められます。

イエメン沖に8年放置された老朽タンカーのオイル回収成功

中東イエメン沖の紅海に放置され、爆発などの危険が指摘されていたタンカー「セイファー」から、無事に石油が回収されました*

イエメン沖で、セイファーに接近し、石油回収作業を行う救助船
イエメン沖で、セイファーに接近し、石油回収作業を行う救助船(2023年8月)

セイファーは、1976年に日本で作られたタンカーです。1986年からはイエメンで石油の保管用に使用されていましたが、2015年に内戦が開始して以来、船体に110万バレル(約17万キロリットル)もの石油を残したまま補修等の管理がなされず放置状態にありました。船体の老朽化によって、貴重な生態系を持つ紅海への石油流出が危惧されていましたが、国連によってようやく石油回収作業が開始し、8月11日に作業の完了が報告されました*

グリーンピースは、各国政府や企業への行動要請など、問題解決のための働きかけを行ってきました。大手石油会社は、数十年にわたりセイファーを使用しておきながら、問題の解決に積極的に取り組みませんでした。グリーンピースは国際社会の団結によって史上類を見ない規模の海洋汚染が回避されたことを祝うとともに、産業界が廃棄責任を正しく負うよう求めています。

アマゾン流域の深刻な干ばつ被害への緊急支援活動

10月、猛暑のためにブラジル、アマゾン流域で深刻な干ばつが発生。干上がった川底で大量の魚が死滅、水路交通の混乱が起こり、数十万の人々に被害を与える大規模な災害となりました。グリーンピース・ブラジルは地元先住民族など干ばつの影響を受けた地域への緊急支援活動を行いました。

先住民のコミュニティに水を供給するアマゾンの川が干上がった
先住民のコミュニティに水を供給する川が干上がり、住民の多くが孤立。グリーンピースは10月初旬に被災者支援を開始した。ブラジル(2023年10月)

グリーンピース・ブラジルは10月の第1週にチームを結成し、食糧と水浄化物資を被害を受けたコミュニティに輸送し、約50トンの食料などの物資を被災者に届けました。また、交通支援や、生き残った動物への適切な治療が行われるよう研究所や生物学者、獣医師、科学者への支援を並行して行っています。グリーンピースは引き続き当局に森林伐採を止め、森林を保護する取り組みを加速させるよう求めています*

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