ブース「エラーコード:秋」内で、壁一面に投影された未来の秋の様子に見入る来場者

観測史上最も暑い夏がやっと過ぎ去りましたが、なんだか秋はすでに過ぎ去ってしまったかのように感じられます。そうかと思えば耳元では蚊の羽音……。夏が暑すぎたせいで、蚊の活動時期にずれが生じている可能性が大きいといいます。気候変動は私たちの昔ながらの慣習や暮らし方をも変化させ、その変化はこれからさらに大きくなると考えられています。暮らしを守るために、温暖化を食い止めるための大きな一歩が必要です。グリーンピースがこの10月、ローカルに国際的に展開した活動の一部を紹介します。

▼この記事を読むとわかること

>日本:『自動車環境ガイド2023』を発表
> 日本:「紅葉ない未来」体感できるデジタルアート展示
> フィリピン:気候正義を求める1000キロのクライメートウォーク
> チェコ:「自然犯罪ファイル」を公開
> 100万人の仲間と一緒に声を上げませんか?

日本:『自動車環境ガイド2023』を発表

2023年10月19日、グリーンピース・ジャパンは日本の4社を含む世界の自動車大手15社を対象に、内燃機関車から電気自動車(EV)への移行やサプライチェーンの脱炭素など気候変動への具体的な取り組み度合いを評価する『自動車環境ガイド2023』を発表しました。

過去2年の同ガイドでは、日本のメーカーの脱炭素取り組み度合いが米国、欧州、韓国のメーカーに比して軒並み低いという結果となっていました。今年の日本メーカーの結果は、15社中、ホンダが最高の10位、続いて日産が11位となりました。トヨタは13位、今年初めて対象に入ったスズキは15位でした。直前の9月末には日産自動車が2030年までに欧州で販売する乗用車を完全にEVに移行すると発表し、グリーンピースはこれを歓迎する声明を出しました。

自動車環境ガイド2023 採点表

現在、世界で排出される二酸化炭素の約2割は自家用車などの交通部門によるものです。そのため、世界の自動車メーカーには走行中、二酸化炭素を排出しないEVへ生産をシフトしていくこと、製造過程で再生可能エネルギーを使用し、鉄鋼などの材料調達において炭素を削減していくことが喫緊の課題となっています。

『自動車環境ガイド』は、国内では日経モビリティ、ブルームバーグ、オルタナ他の複数のメディアに取り上げられたほか、世界的にも大きな注目を集めました。グリーンピースは、各メーカーがガイドの発表をきっかけに、ハイブリッドを含む内燃機関車を廃止する具体的な目標やロードマップを提示すること、特に日本メーカーに地球の未来を見据えた決断と変化を呼びかけます。

2022年の報告はこちらから。

日本:「紅葉ない未来」体感できるデジタルアート展示

グリーンピース・ジャパンは、10月21、22日の2日間、代々木公園にデジタルアート鑑賞のためのブース「エラーコード:秋」を設置し、気候の変化に思いを馳せる機会づくりを行いました。

アート展示は「earth garden ”秋” 2023 Mountain High!!」の一企画として、入場無料で行われ、代々木公園のイベント広場に「鮮やかな紅葉が見られない未来」を体感してもらうことのできるボックスブースを設置、約900人の来場者が壁一面に投影される未来の秋の様子を鑑賞しました。

ブース「エラーコード:秋」内で、壁一面に投影された未来の秋の様子に見入る来場者
ブース「エラーコード:秋」内で、壁一面に投影された未来の秋の様子に見入る来場者(2023年10月)

来場者からは、「考えるきっかけになった」、「床の落ち葉や木の匂いと、デジタルの融和がよかった」といった声が寄せられています。

代々木公園に設置されたデジタルアートのブース
代々木公園に設置されたデジタルアートのブース(2023年10月)

ブース内の展示は美しい秋の紅葉と、それを失わせてしまうかもしれない気候変動を体感してもらえるよう、趣向を凝らし設計されました。不安を感じてしまうことの多いテーマですが、失いたくないものの尊さを五感に訴えるデジタルアートに、休日の代々木公園を訪れた多くの方が、笑顔と感嘆の声とともに未来に思いを馳せる光景が見られました。

フィリピン:気候正義を求める1,000キロのクライメートウォーク

2013年にフィリピンに甚大な被害をもたらした超大型台風ヨランダ(国際名ハイエン、台風30号*)。約8,000人の死者、行方不明者を出し、1,600万人以上の方が被災しました*。損害総額は120億ドルに達するとてつもない被害となり、理不尽な気候変動の影響を象徴する気候災害でした。ヨランダの襲来から10年、被害で失われた命と被災者への敬意とともに、気候のための活動を呼びかけるための「気候ウォーク」がスタートしました。

マニラからタクロバンまでの1,000キロを30日間かけて徒歩や自転車で移動する「クライメート・ジャスティス・ウォーク」のメンバーたち
マニラからタクロバンまでの1,000キロを30日間かけて徒歩や自転車で移動する「クライメート・ジャスティス・ウォーク」のメンバーたち(2023年10月)

気候ウォークの参加者たちは、マニラからヨランダの大きな被害があったタクロバン市まで、38日間をかけ、1000キロの道のりを徒歩と自転車で旅します。徒歩や自転車で移動することで、化石燃料中心社会が産んだあまりに大きな損失と損害と向き合い、変化を求めるものです。

一行は10月8日にルネタ公園を出発。「クライメート・ジャスティス・ウォーク2023:気候正義を求める人々の旅」は、グリーンピースをはじめとする気候および人権団体からなるメンバーを中心に企画され、2014年に行われたウォークと同じ道のりを移動します。現在、多くの参加者とともに、タクロバン市を目指して歩みを進め、ヨランダの上陸からちょうど10年となる2023年11月8日に国内最長のサン・ファニーコ橋を渡り、タクロバンへと到着する予定です。

チェコ:ヨーロッパの「自然犯罪ファイル」を公開

グリーンピース・チェコが、ヨーロッパ数カ国における自然破壊を調査、実態をまとめた報告書「自然犯罪ファイル」を発表しました*

EUは自然保護をリードするはずの立場にありながら、加盟国下で企業による森林破壊が横行している事例があり、グリーンピース・チェコはGPS追跡装置などを使って、数多くの珍しい植物や動物が生息するなど、保護されるべき区域で自然破壊が行われたことを明らかにしました。

グリーンピースの調査チームがルーマニアのカルパティア山脈で出会った熊
グリーンピースの調査チームがルーマニアのカルパティア山脈で出会った熊。チームは40日間をかけて5カ国を横断、原生林の保護の重要さを訴えた(2023年5月)

ヨーロッパでは、原生林は総森林面積のわずか3%にとどまります。現在、そのうち地図に記載のある原生林の87%は伐採から保護されていますが、今回の調査で、原生林はより小さなスポットとしても点在し、そこでは依然として森林破壊が行われていること、そして網の目を潜って伐採された木材の行き先や用途は把握されていないことが指摘されています。

100万人の仲間と一緒に声を上げませんか?

目の前の問題と、地球全体の問題のために想像力を働かせ、さまざまなやり方で変化を起こそうと行動する人たち。皆が私たちの仲間です。地球を守る仲間の一員として、機会あるごとに声を上げ続けましょう。残された自然環境を守る行動がより良い未来を生み出します。

現在、グリーンピースが展開する深海採掘を止めるための署名には、世界から100万人の賛同の声が寄せられています。今はまだ守られている手付かずの深い海の底を、仲間たちと一緒に企業の開発から守りませんか? 

今なら止められる。
STOP!深海採掘

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▶︎『自動車環境ガイド2023』ーー日本勢 EVシフトへの遅れ埋まらず、ハイブリッドへの過度な依存から脱却なるか

▶︎カナダ、ハワイ・マウイ島、ギリシャー森林火災はなぜ起きた? 2023年、世界中で森林破壊が記録を更新する理由

▶︎気候変動なんとかしたい…それなら、パブコメやってみよう