約2万7千筆の署名を文部科学大臣に手渡す「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチーム
「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチームが約2万7千筆の署名を文部科学大臣に手渡した(2023年8月23日) © 写真提供:change.org

私たちが子どもだった頃の夏の光景はすでに当たり前ではなくなり、苛烈になる暑さは子どもたちの学び場にも大きな影響を与えています。このままではいけないと大人が立ち上がり、学校教室の断熱を求める多くの声が集まりました。辛いニュースも多いですが、気候のための活動は止まっていません。2023年8月の環境にまつわるニュースをお伝えします。

▼この記事を読むとわかること

> 日本:学校教室の断熱を急げ! 約2万7千筆の署名を提出
> イエメン:8年放置された老朽タンカーのオイル回収成功
> アメリカ:気候正義を求める若者たちの勝利
> 韓国:危険な暑さを示して気候変動対策を呼びかける
> 若い世代の声と向き合い、一歩踏み出す勇気

日本:学校教室の断熱を急げ! 約2万7千筆の署名を提出

日本には断熱性が低く、エアコンが十分に効かないために、危険な暑さにさらされる教室があります。8月29日に、学校教室の断熱を求め、市民の署名と要望書が文科省に提出されました*子どもの学びの場を守る重要な一歩です!

約2万7千筆の署名を文部科学大臣に手渡す「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチーム
「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチームが仲間や専門家らとともに約2万7千筆の署名を文部科学大臣に手渡した(2023年8月23日) © 写真提供:change.org

グリーンピースが事務局を務める「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチームは、7月20日から学校断熱を求める署名活動を開始し、約2万7000人の賛同が集まりました。署名は要望書とともに永岡文部科学大臣に直接手渡されています。チームのメンバーと仲間、専門家の方で面談と記者会見を行い、断熱改修の効果を訴えました。

学校教室の断熱を求め、記者会見を行うグリーンピースが事務局を務める「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチーム
学校教室の断熱を求め、記者会見を行うグリーンピースが事務局を務める「ゼロエミッションを実現する会」の横浜のチーム(2023年8月29日) © Greenpeace

署名は引き続き募集中です。まだ参加されていない方はぜひご賛同ください。

イエメン:8年放置された老朽タンカーのオイル回収成功

中東イエメン沖の紅海に放置され、爆発などの危険が指摘されていたタンカー「セイファー」から、無事に石油が回収されました*セイファーは、1976年に日本で作られたタンカーです。1986年からはイエメンで石油の保管用に使用されていましたが、2015年に内戦が開始して以来、船体に110万バレル(約17万キロリットル)もの石油を残したまま補修等の管理がなされず放置状態にありました。船体の老朽化によって、貴重な生態系を持つ紅海への石油流出が危惧されていましたが、国連によってようやく石油回収作業が開始し、8月11日に作業の完了が報告されました*

イエメン沖で、セイファーに接近し、石油回収作業を行う救助船
イエメン沖で、セイファーに接近し、石油回収作業を行う救助船(2023年8月)

グリーンピースは、各国政府や企業への行動要請など、問題解決のための働きかけを行ってきました。大手石油会社は、数十年にわたりセイファーを使用しておきながら、問題の解決に積極的に取り組みませんでした。グリーンピースは国際社会の団結によって史上類を見ない規模の海洋汚染が回避されたことを祝うとともに、産業界が廃棄責任を正しく負うよう求めています。

アメリカ:気候正義を求める若者たちの勝利

アメリカで「清潔で健康的な環境」をめぐるモンタナ州を相手取った訴訟で、若者たちが初めて法的に勝訴しました*米裁判所が、政府が化石燃料を推進し、気候変動に有意な対策を取らないことが若者の権利をおびやかしていると認めたということです。

ニューヨークで行われた若者が主導する気候ストライキ
ニューヨークで行われた若者が主導する気候ストライキ。「あなたたちが大人として行動しないなら、私たちがそうする!」「私の未来を燃やすな」と書いたプラカードが掲げられる。アメリカ(2019年9月)

化石燃料の促進が若者の健康的な生活を危険にさらしていることを裁判所が宣言したのは米国史上初めてのこと。モンタナ州では、新しい化石燃料産業が始まる際に、温室効果ガスについて考慮することが事実上法律で禁止されていますが、裁判所判事は、この法律の違憲性を指摘しています*。アメリカではこのほかにも数件の若者による気候訴訟が起きています。

韓国:危険な暑さを示して気候変動対策を呼びかける

ソウルの学生街シンチョンで、若者たちによる化石燃料の段階的廃止を求めるパフォーマンスが行われました。このアクションは韓国のグリーンピースが、若年層の気候活動家とともにサーモグラフィで気温の上昇を示したパネルを設置し、気候変動対策の実施を呼びかけたもの。

サーモグラフィで気温の上昇を示したパネルを設置しての韓国でのアクション
サーモグラフィで気温の上昇を示したパネルを設置しての韓国でのアクションを報道陣が囲む(2023年8月21日)

アクションはエネルギー・デーにあわせてシンチョンの人気スポットで実施され、通行人にアピールしたほか、マスコミも多く集まりました。気候により大きな影響を受ける若者たちが主体となって声を上げたこのアクションに大きな注目が寄せられています。

若い世代の声と向き合い、一歩踏み出す勇気

モンタナ州の裁判では、化石燃料の推進が若者たちの健康的な生活を脅かすという内容の判決が下りました。ハワイで山火事の被害にあった女の子はこう問いかけます。

「大人たちが緊急性を理解するまでに、あと何回自然災害が起きるの?」*

今や若者たちは怒りと恐怖をもって未来に対峙しています。大人が変わるべき時です。誠実に聞き届けられるべき声はすでに上がっています。

​​バンコクで開催された気候ストライキ
​​バンコクで開催された気候ストライキ。若者たちがタイ政府に気候変動への早急な対応を求めた。タイ(2019年11月)

グリーンピースはそうした声とともにあり、大人の手によって仕組みを変えるために活動しています。グリーンピースとともに一歩を踏み出し、今この時を起点に行動を起こしましょう! 気候危機を回避するための活動に寄付でのご協力をお願いします。

来月の「3分でわかる日本と世界の環境ニュース」もぜひご覧ください。

一歩目のアクションを踏み出してみる

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▶︎<気候危機と子ども>世界の約半分の子どもが気候変動に脅かされている 

▶︎あなたはひとりじゃない─未来のために立ち上がる人たちの気候アクション

 ▶︎【2023年7月】3分でわかる日本と世界の環境ニュース