世界の海面水温のグラフ

地球が過去最も暑い月となった2023年7月。8月に入ると台風の襲来が重なり日本列島が翻弄されました。「地球沸騰化」と形容されるこれまでにない酷い暑さと予測しづらい動きをする勢力の強い台風には相関関係があります。温暖化によって、移動速度の遅い危険な台風や線状降水帯が増えています。

▼この記事を読むとわかること

> 地球が沸騰している?
> 地球に最も暑い日がやってきた理由
> 海面水温と台風の関係
> 温暖化で増える危険なのろのろ台風
> 線状降水帯、45年で2倍に増加
> 気候は私たちの行動と繋がっているから

地球が沸騰している?

2023年7月は、地球がこれまでで最も暑かった1カ月でした。世界平均気温は16.95℃、観測史上最も高温となったことを、EUの気象情報機関コペルニクス気候変動サービスが発表*。地球の平均気温の底上げに貢献したのは他ならぬ日本です。日本でも今年の7月は、観測史上最も暑い月となったことがわかっています*

異常な熱波の影響で陽炎がたつカリフォルニア州パームスプリングスの道路
異常な熱波の影響で陽炎がたつカリフォルニア州パームスプリングスの道路。アメリカ(2023年7月)

地域別に見ても、東京、仙台、横浜、千葉など25地点で過去最高の平均気温を更新。日本全体の月平均気温は25.96℃となり、特に10日以降の異常な暑さには、熱中症など大きな健康被害が出ています。雨がほとんど降らなかったため、農業への影響も甚大です。
国連のグテーレス事務総長が、「地球沸騰の時代が到来した」と表現したように、地球は温暖化を超えて、沸騰状態となってしまったのでしょうか。

地球に最も暑い日がやってきた理由

米国立環境予測センターの分析で、7月4日は観測史上地球が最も暑い日となったことが分かりました。ある気象学者は、7月4日の平均気温「17.18℃」を指して「過去12万5000年間の地球史上、最高気温と考えられる」と評しています*。どうしてこのような過去例をみない極端な暑さが訪れたのでしょう。
世界的な暑さの大きな原因の一つは、海面の異常高温が続いていることだと考えられています。7月から8月にかけて、北米、南ヨーロッパ、アジアなど、北半球が酷い熱波に襲われる間、地中海やカリブ海は海面水温の過去最高を記録していました*。太平洋東部の赤道域で続くエルニーニョ現象が海洋熱波を発生させたのです。

世界の海面水温のグラフ
世界の海面水温。2023年の海面水温が飛び抜けて高いことがわかる。
出典:Climate Reanalyzer Daily Sea Surface Temperature/NOAA OISST V2.1 | ClimateReanalyzer.org, Climate Change Institute, University of Maineより作成

海面水温の異常な高温状態は5月半ばごろから8月に入っても続いています。英公共放送BBCは世界の平均海面水温が8月1週目には20.96℃を記録し、観測記録が残る1979年以降過去最高となったことを報じました*

海面水温と台風の関係

海面水温と深い関係にあるのが台風です。台風は一定の大気の状態を満たした海面水温26.5℃以上の環境で発生します。発生した台風は、海の熱エネルギーを使って発達するため、同じ条件下であれば海面水温が高いほど、より強く勢力を増す傾向にあります。海面の高温状態は、台風を強化する可能性が高いのです*

地球上空から見た台風の様子
地球上空から見た台風の様子。NASA提供

日本でも、8月頭からお盆の期間にかけて、非常に勢力の強い台風6号、7号の接近、上陸が各地に被害や交通の混乱をもたらしました。大雨や暴風の他にも、フェーン現象*で、急な気温上昇が引き起こされるなど、台風が直撃しない地域でもさまざまな影響が出ています。

*フェーン現象とは? 台風にともなう高湿高温の空気が山を越えて吹き下りた際、風下に乾燥した高温の風を起こし、急激な温度上昇を引き起こす現象

フェーン現象のしくみイラスト
フェーン現象のしくみ 気象庁サイトより

温暖化で増える危険なのろのろ台風

台風は、発生数や勢力だけでなく、その速度にも注意が必要です。のろのろと進路を複雑に変えて移動する台風は各地に長く影響を与えるため、長時間の大雨、高潮による水害や土砂崩れなどの災害を起こしやすくし、被害の拡大を深刻にします。

大雨が降る様子
移動速度の遅いのろのろ台風は、接近・通過する地域に長時間にわたって大雨暴風などの影響を与える。

温暖化の影響で移動スピードの遅い台風が増えています。温暖化が大規模な大気の流れの変化を引き起こし、台風周辺の風を弱くすることや海水温が上昇することで、台風が衰えにくくなっていること*などが原因と考えられています*

8月頭に沖縄、西日本に大きな影響をもたらした台風6号も時速約10キロという自転車並みの速度が特徴でした*気象研究所を中心とした研究グループの調査で、地球の平均気温が工業化以前と比べて4℃上昇すると、日本を含む南北両半球の緯度30〜35度の地域で台風の移動速度が約10パーセント遅くなることが分かっています*

線状降水帯、45年で2倍以上に増加

ここ数年でよく耳にするようになった「線状降水帯」も、海面水温の上昇で増加する傾向にあり、ここ45年間で2.2倍にも頻度が増えています*線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲が線のように連なって積乱雲群となり、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することが原因となる降水域です。

線状降水帯の発生メカニズムのイラスト
線状降水帯の発生メカニズム(代表的な例) 気象庁サイトより

長時間の大雨をともなう雨域は大雨災害発生の危険度を急激に高めるため、気象庁では2021年から線状降水帯の予報発表を行っています。

気候は私たちの行動と繋がっているから

私たちは今、取り返しのつかない気候危機を防ぐための目標値、「気温上昇1.5℃*」の上限値寸前まで迫ってしまっています。

*1.5℃目標とは? 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で合意された気候変動のティッピングポイントといわれる目標値

一刻の猶予もないことは事実ですが、専門家は私たちにはまだ残された道があるということを強調します。今すぐ一人一人が行動すれば、悪い連鎖だけでなく、良い連鎖を起こせるということもまた事実なのです。

森林伐採に反対して集ったグリーンピースのメンバーが「私たちの声が重要だ (#OurVoicesAreVital)」と書かれたバナーを掲げる様子
森林伐採に反対して集ったグリーンピースのメンバーが「私たちの声が重要だ (#OurVoicesAreVital)」と書かれたバナーを掲げる。

どんな行動をするか、その答えは一つではありません。

学ぶこと、ひろめること、消費者としての選択を変えること、自治体への働きかけ、気候変動対策に積極的に取り組む政党に投票したり応援したりすること……。

できることは思いのほか多くあり、1人でやる必要もありません。誰かの気候アクションをサポートする寄付はその中でも力強い方法の一つです。できることから、今日、始めましょう。

気候を守り、いのちを守るための活動を支援する

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