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できるだけ使い捨てプラスチックを使わずに生活してみようとした時、脱プラの妨げになるのはどんなことなのでしょうか。実際に脱プラや減プラに挑戦してみて見えてきたことをレポートします。なるべくプラスチックを使わない生活のためにどんなことができるのか、一緒に考えてみましょう。

▼この記事を読むとわかること

> 使い捨てプラだらけの私たちの暮らし
> 脱プラ減プラの現実、どんなところが難しい?
> 実際に脱プラしてみてわかったこと
> 個人の努力だけに頼る脱プラには限界がある
> 「プラ条約」署名に参加して仕組みから変えよう!

使い捨てプラだらけの私たちの暮らし

環境を汚染し、温暖化を進行させる原因の一つになっているプラスチック。プラスチックの地球への悪影響を知って、不必要に使い捨てたくないと考えている人は多いと思います。しかし、私たちが生きる社会は、プラスチックのない景色を探すのが難しいほどプラだらけ。食品を買うにも、一般的なスーパーやコンビニエンスストアではプラ包装されていない商品を見つけることは容易ではありません。

ドイツの河川で回収された「スーパーマーケット」由来のプラスチックゴミ。
ドイツの河川で回収された「スーパーマーケット」由来のプラスチックゴミ。(2017年1月)

家の中を見渡してみても、歯ブラシ、洗剤やシャンプーなどの容器、スポンジ、キャップ類など、短い期間で捨ててしまうプラスチックだけでも山のようにありますよね。一度意識すると、私たちの生活のあらゆるところでプラスチックが使われていることに気がつきます。

脱プラ減プラの現実、どんなところが難しい?

脱プラ、減プラ生活をこころがけ、なるべく使い捨てプラを使わないように暮らそうとしてみて、支障になるのはどんなことなのでしょうか。実際に脱プラをしてみた時の困りごとって?  リアリティのある消費者目線の体験談からプラスチックフリーな生活のための解決策や課題が見えてくるかも知れません。

実際に脱プラ、減プラに挑戦してみたらどうなった? タイトル画像

3週間に渡って「なるべくプラスチックを使わない買い物」を試してみた都内に住むさくやさん。挑戦してみてわかった、手に入れやすい商品や、意外に見つけるのが難しいもの、困った点などをお聞きしました。

実際に脱プラしてみてわかったこと

<さくやささんのチャレンジの記録>

◯月◯日
できるだけプラスチックで包装されたものを買わないチャレンジを始めた。今日の買い物金額は合計で5,531円。プラ包装されている商品をなるべく避けるために8店舗まわって3時間かかった。3時間って……。次回はもう少し早く買い物を終わらせたい。へとへと。

野菜
八百屋を3店まわって、それぞれでプラ包装されてない野菜を買った。けど、時間がかかるうえに、買えない野菜も出てくる……。どうしたらいい? 市場か?

コーヒー屋さんで
コーヒー豆を持参した容器に入れてもらうというアイディアはよかった。でも知ってる豆と新しい豆、2種類買ってしまったので、結局片方を袋に入れてもらうことに。しかも自転車で来たのを忘れていて、いただいたカフェオレを別の袋に入れてもらうという痛恨のミス。カフェオレはとてもおいしかった。

さくやさんが「なるべくプラスチックを使わない買い物」にチャレンジ中のある日のお買い物
さくやさんが「なるべくプラスチックを使わない買い物」にチャレンジ中のある日のお買い物。これだけ買うのにかかった時間は3時間。

◯月◯日
プラスチックを減らす買い物チャレンジ3週目。3週目にしてすでに限界が見え始めている……気がする。

というのも、プラスチックなしで食料品を買いたいというチャレンジのために、食べたいものを我慢したり、不相応にお金を払ったり、人生の限られた時間を使いすぎていては、この取り組みが持続可能なものにならないからだ。

いくつか試せそうなアイディアを思いついた。けれど、好きなものを食べたいのを我慢したり、過剰な金銭的、時間的な犠牲を払ったりせずに、これ以上どうプラスチックを減らしたらいいのかわからない……。

プラスチックを減らす買い物にチャレンジするさくやさんのある日のお買い物の中身
プラスチックを減らす買い物にチャレンジするさくやさんのある日のお買い物の中身。

今日買った商品の中で、じゃがいものお菓子、納豆、豆腐、キムチ、シナモンスティック、ヨーグルト、お肉、しいたけ、長ネギ、食パン、冷凍のお魚にはプラスチックが使われていた。プラスチックを避けるために思いついたのはこんなこと。

おやつ → ジャガイモを買って自分で揚げる(できそう)
納豆 → 自分で作る(設備や道具がなくてたぶん無理)
豆腐 → 豆腐屋に容器を持参する(時間はかかるができそう)
キムチ(しっかりしたパックに入っているうえ、中蓋フィルムが付いていて、しかもレジで何も言わないとさらにポリ袋に入れて「もらえる」) → 自分で作る(時間かかりそう、実際どうなんだろう)
シナモンスティック → シナモンを自分で育てる(時間がかかりすぎて無理)
ヨーグルト → 自分で作る(時間がかかりそうなうえにうまくできなさそう)
肉屋で買った肉 → 熱湯消毒できる専用の容器を持参する(できそう)
シイタケ → 自分で育てる(自分で育てるキットを買うときにプラスチックが絶対についてくる)
長ネギ → テープがついてるけど量が少ないから許容範囲……?
食パン → パン屋に蜜蝋ラップ持参して、包んでもらう(挑戦できそうだけど、やってもらえるのか?)
冷凍の魚 → 釣りをする(時間かかりすぎる)

豆腐、肉、食パンに関しては来週までに容器を準備して、地元のお店に頼んでみることができそう。それ以外に関しては、今のところ我慢するか、転職するといった不本意な選択肢しか見えない。

個人の努力だけに頼る脱プラには限界がある

使い捨てプラスチックを減らすために真剣に考えるさくやさんの記録に共感を覚える方は多いのではないでしょうか。レジで気を抜いていて、ポリ袋に入れて「もらえて」しまった経験は筆者にもありました。

ポリ袋に入った地球の画像
日本では、2020年7月1日よりレジ袋有料化がスタートしているが、多くのスーパーのレジで、生肉や魚、パッケージされていない野菜や果物をビニール袋に詰めるサービスが続いている。

さくやさんは、3週間のチャレンジの後、このように記しています。
「このチャレンジを始めて気が付いたのは、プラスチックを減らして買い物しようとした時に、思ったより個人の選択肢が少ないということ。正直、ちょっと気をつければプラなしで買い物ができると思っていた。

農家直送の包装なしの有機野菜を毎週買う金銭的余裕がなかったり、包装されていない野菜を探して八百屋を何軒も訪ね、もしくは白菜を育ててキムチを自分で作るような時間的余裕がなかったりーー。そういう個人の選択ではどうしようもない部分は、『必要以上の消費をしない』というとりあえずの対応をしながら、最終的に仕組みを変えるということを目指さなければならない」

「プラ条約」署名に参加して仕組みから変えよう!

さくやさんの脱プラ、減プラの挑戦に立ちはだかったのは、その大部分が社会の仕組みでした。個人の努力や心がけだけではどうにもならないほど、プラスチックが当たり前に使われているのが今の日本……。私たちには孤独にコツコツ時間とお金を使ってプラスチックを減らすことしかできないの? いいえ、そんなことはないはずです。

実は今、使い捨てプラスチックをめぐる状況を一転させられるかも知れない大きなチャンスが巡ってきています。

https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2023/05/25/63099/#heading2

そのチャンスとは、「国際プラスチック条約」制定のこと。国際的に法的拘束力を持つ条約が、制定に向けて国連で話し合われています。このプラ条約がプラスチックにまつわる世界各国のルールを変えることになるかも知れません。

石鹸などを梱包されていない状態で購入することができるハンブルクのパッケージフリー食料品店
ハンブルクのパッケージフリー食料品店。ドライフルーツや豆類、米、パスタ、石鹸などを梱包されていない状態で購入することができる。ドイツ(2022年2月)

プラ条約の中身を決めている今、より多くの声を集め、各国の代表に届けることで、プラスチックの製造から規制する効果的な条約を実現させることができます。そうすれば、力強いプラ条約が、私たちの社会を使い捨てない社会へと大きく変える第一歩になるはず。個人の努力だけに頼らない脱プラには、使い捨てプラを規制し、プラスチックを生産から削減し、使い捨てない社会を作るためのルールが必要です。

私たちにできるのは、生活の中で使い捨てプラを減らす地道な努力だけではありません。署名を使って声をあげることも、戦略的で有効な脱プラのやり方のひとつ。多くの人が使い捨てない社会を求めていることをルールをつくる人たちに届けることができれば、大きな変化を起こすことができます。

ぜひ署名に参加して、グリーンピースと一緒にリユース中心社会を実現させましょう。

「国際プラスチック条約」で
使い捨てにさよなら

協力・写真提供/さくやさん

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