G7広島サミットの旗

2023年5月21日、広島市で開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)が3日間の日程を終え、閉幕を迎えました。地球温暖化が進み、世界各地で気候災害が増加・激化する中、野心的な気候変動対策が合意に至ることはありませんでした。日本は議長国として十分なリーダーシップを発揮することができたのでしょうか。G7サミットを振り返ります。

▼この記事を読むとわかること

> G7サミットの閉幕
> 日本の姿勢はどのようなものだった?
> 解決策はすでにわかっている
> 希望をともす ライトペインティングアクション

G7サミットの閉幕

2023年5月19日から広島市で開催されたG7サミットが21日に閉幕を迎えました。

20日午後に来日したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も討議に加わって討議が行われ、20日に発表されたサミットの成果をまとめた「G7広島首脳コミュニケ(公式声明)」ではウクライナへの支援、中国との安定的な関係と対応、核軍縮、安全保障などについて、取り組みの姿勢が示されました。

グランドプリンスホテル広島で行われたセッション8(G7+ウクライナ)
グランドプリンスホテル広島で行われたセッション8(G7+ウクライナ)2023年5月21日 © Ministry of Foreign Affairs of Japan

G7の2カ月前に取りまとめられたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書には、気温の上昇がもたらす世界全体への影響とリスクが、これまで評価されていたよりももっと大きくなるであろうことが明言されていました。

また、国連の世界気象機関(WMO)は、G7開催の直前5月17日に、地球の気温が今後5年で一時的に産業革命前よりも1.5℃*を超えて上昇する確率が史上初めて50%に上ったことを発表しています*1

*世界平均気温を、産業革命の前と比べて、1.5℃程度の気温上昇に抑えるパリ協定で示された目標。IPCCは、平均気温の上昇が1.5度になると人も自然も適応の限界に達すると報告している。

このように、緊急の気候対策が必要とされる今、日本、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国、そしてその他の招待国の首脳が一堂に会するまたとない機会であるはずのG7。十分といえる前進はあったのでしょうか。

日本の姿勢はどのようなものだった?

日本が特にG7他国に遅れを取っているのが、石炭火力発電に対する姿勢でした。

石炭に起因するCO2の排出量は世界のCO2排出量の約40%を占めています*2石炭の廃止は緊急かつ重要な課題です。しかし、G7の場でも日本は2030年までの石炭火力発電の廃止に反対しました。

さらに、日本がゼロエミッション車(ZEV)*の販売を加速させるための具体的な目標合意にも反対したことが指摘されています。

*排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車

ZEVの普及は、輸送部門における温室効果ガス排出削減の重要な手段です。しかし、日本はこの重要な取り組みにおいてもリーダーシップを発揮することができませんでした。

グランドプリンスホテル広島で行われたG7首脳によるセッション、ワーキングランチでの岸田首相
グランドプリンスホテル広島で行われたG7首脳によるセッション、ワーキングランチでの岸田首相。2023年5月19日 © Ministry of Foreign Affairs of Japan

途上国や新興国の支援においても、日本のアプローチには問題があります。日本は他のG6諸国からも疑問視されているアンモニア混焼やCO2回収、貯留、利用(CCSU)技術など、誤った解決策を積極的に推進しようとしています。

こうした技術には大きなコストがかかるゆえに、それ以外の選択への道筋を模索することをより難しくさせ、科学的根拠や温室効果ガス排出削減目標(NDC)とも矛盾しています。

これらのアプローチは産業界の利益をもたらすだけであり、本来の目的である気候変動への対策にはなりません。

解決策はすでにわかっている

私たちが選ぶべき気候対策がどのようなものであるか、答えはすでに出されています。

夜の広島に投影された岸田首相に対するメッセージ。
夜の広島に投影された岸田首相に対するメッセージ。

IPCC第6次評価報告書でも「大きな鍵となるのは太陽光発電と風力発電」と述べられているように、気候変動への最も効果的な対策は再生可能エネルギーと省エネルギー技術なくしては成り立ちません。技術の進展や市場の動向からも明らかです。これらの技術は、持続可能な未来を築くための命綱です。

再生可能エネルギーは、化石燃料に頼らずにエネルギーを供給することができる方法です。太陽光や風力などの再生可能なエネルギー源は豊富に存在していて、地球にも大きな負荷をかけません。

そして、省エネルギー技術はエネルギーの使用を最適化し、効率的に使うことを可能にします。省エネルギー技術はエネルギー需要の増加が見込まれる未来においても排出削減や環境負荷の軽減に貢献することができます。

G7は、再生可能エネルギーと省エネルギー技術の普及を大きく進めるべきです。

国際的な連携とリーダーシップを発揮して、これらの技術の研究開発や導入への資金投入の支援が求められています。また、途上国や新興国への支援を強化し、持続可能なエネルギーインフラの構築を促進させることも必要です。

市民として一緒に、前へ

忘れてはならないのは、G7各国は先進国として自らが積極的に脱炭素化に取り組む存在であるはずということです。

G7各国こそ、自国のエネルギー政策を見直し、石炭への依存を減らし、再生可能エネルギーへの転換を率先して進め、ZEV普及の促進、持続可能な交通システムの構築に取り組む必要があります。

G7は、地球温暖化と気候変動の脅威に真剣に取り組まなければ、存在する理由を問われます。リーダーとしての責任を果たすためには、野心的な目標を掲げ、具体的な行動を起こさなければなりません。

再生可能エネルギーと省エネルギー技術の活用は、持続可能な未来への鍵なのです。

グリーンピース・ジャパンの声明

今回のG7に残された課題は気候対策だけではありませんでした。

「広島ビジョン」として打ち出された核軍縮を含む成果文書について、2017年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は「核軍縮に向けて価値ある成果には程遠かった」とするコメントを発表*3

積み重なっている課題から目を逸らしてしまえば、G7サミットという大きな機会も、政治的なアピールに終わってしまいます。

広島平和記念公園の原爆の子の像。
広島平和記念公園の原爆の子の像。2歳の時に被爆し、白血病で亡くなった佐々木禎子さんをはじめ、原爆で犠牲となった子どもたちに捧げられている。 © Ministry of Foreign Affairs of Japan

日本からも、開催地の広島市からも、多くの市民が声を上げていました。

G7サミットに対し政策提言を行う市民の集まり「C7」の取り組み

グリーンピース・ジャパンからは、平和で安全な未来のために、気候も暮らしも救うエネルギー政策をG7に求め、約1500人の方に参加いただいた署名を岸田文雄内閣総理大臣、西村明宏環境大臣、西村康稔経済産業大臣宛に提出しています。

気候問題の今、核軍縮、命を守るための平和、これらはすべて相互につながる問題です。イタリアのメローニ首相は北部の洪水被害の対応のために会期途中での帰国を余儀なくされました。

あらゆる場所にサインは現れています。

重要であり差し迫った地球全体の命の危機に全力で向き合うことなくG7サミットが幕を閉じたのは、とても残念なことです。

しかし、私たちはただ失望して手をこまねいているわけにはいきません。

希望をともす ライトペインティングアクション

G7サミットにあわせ、広島現地を訪れたグリーンピース・ジャパンのメンバーは、持続可能で平和な未来実現のため、「ライトペインティングアクション」を行いました。

ライトペインティングアクション「G7平和なセカイ再エネで」
ライトペインティングアクション「G7平和なセカイ再エネで」

広島市中区の青少年センターの前で行なわれたこのアクションには、グリーンピース・ジャパンのスタッフをはじめ、環境だけでなく、人権・教育・福祉などのテーマで活動する、広島に集まった様々なNGOや、地元で活動する市民団体から多くの方が参加。

夜の広島でペンライトの残像を使って希望のメッセージを描き、特殊なライトで岸田首相に対するメッセージを空間に投影しました。

初めてライトペインティングに挑戦したため、漢字や長いメッセージを書くことはなかなか難しかったのですが、平和で安全な未来を求めるアクションは、この先一緒に行動できる仲間との貴重な時間となりました。

G7サミットに現地参加したグリーンピース・ジャパン政策渉外担当小池宏隆
G7サミットに現地参加したグリーンピース・ジャパン政策渉外担当 小池宏隆 ©️Greenpeace

グリーンピース・ジャパンから、G7と対話するための市民社会組織のネットワーク「C7」、そしてG7サミットに現地参加した政策渉外担当の小池宏隆は、「未来は、再エネと省エネの加速にあります。早期に化石燃料から脱却し、再エネ中心の社会を作るよう、G7のリーダーに求めたい」とコメントしています。

グリーンピースは、政治と生活の両側面から、豊かな地球を守る変化を起こすため、これからも粘り強く活動を続けます。

来年のG7サミットはイタリアで開かれる予定です。

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