2016年4月1日の電力の小売全面自由化から7年が経過しました。

7年前の電力の小売の全面自由化で、契約する電力会社を自由に選ぶことができるようになりました。

ここで注目したいのが、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)でつくられた電力を供給する電力会社を「選んで」契約することができるようになったことです。

太陽光や風力発電は、発電時に地球温暖化の原因である二酸化炭素を排出しません。再エネ由来の電気が広まれば、気候危機の回避につながります。

でも、実際に再エネを選ぶ人は増えているのでしょうか。

再エネ由来の電力を利用する人を増やすために、国内や海外では様々な取り組みが行われています。

▼この記事を読むとわかること

> 日本の事例:電力の共同購入の呼びかけ
> 呼びかけに参加した世帯はごくわずか
> 海外の事例:再エネ電力が初期設定の「デフォルト・オプション」
> デフォルト・オプションの実際の効果
> 圧倒的に二酸化炭素排出量の少ない再生可能エネルギー

日本の事例:電力の共同購入の呼びかけ 

日本国内の取り組みの一つとして、「電力の共同購入」という制度があります。

東京都などが実施している「みんなでいっしょに自然の電気(みい電)」キャンペーンがそれで、多くの購入者を集めることで、電気の価格を安くするしくみです。

2023年4月現在までに、複数の都府県で同様のキャンペーンが計10回行われてきました。

その共同購入のキャンペーンを通して、実際にどれだけの人が再生可能エネルギー由来の電力を選ぶようになったのでしょうか。

呼びかけに参加した世帯はごくわずか

各回のキャンペーンをそれぞれA〜Jとして、キャンペーンを通しての契約世帯数を、その地域の全世帯数から算出した割合を、以下の図1にまとめました。

図1:共同購入キャンペーンを通しての契約世帯割合
出所:各都府県・実施事業者のデータ・問い合わせによりグリーンピース・ジャパンが作成

残念ながら、共同購入に参加した世帯はその地域の世帯数の0.1%にも達していません。

最も契約世帯割合が高い地域でも0.04%未満であることがわかります。

海外の事例:再エネ電力が初期設定の「デフォルト・オプション」

海外で行われている取り組みに目を向けてみましょう。

スイスやドイツには「デフォルト・オプション」と呼ばれるプランを取り入れている電力会社があります。

「デフォルト」とは、何も変更をしていない状態、初期設定のことを指します。

つまり「デフォルト・オプション」は、電力会社が、消費者にプランを提示するときに、再エネ由来の電力をデフォルト(初期設定)にすることです。

そうすることで消費者は、原子力や化石燃料由来など、再エネ以外の電力を選びたい場合に、変更の手続きを行うことになります。

デフォルト・オプションの実際の効果

スイスの研究チームによる実験では、二つの電力会社A、Bの電力提供体制を、実験開始翌年から再エネ電力を標準プランにするデフォルト・オプションを始めた結果、ほとんどの顧客が再エネ電力プランをそのまま受け入れました。

図2:顧客への電力供給割合(A社)
出所:Liebe, U., Gewinner, J. & Diekmann, A (2021) “Large and persistent effects of green energy defaults in the household and business sectors.”のデータを元にグリーンピース・ジャパンが作成

電力会社Aにおいては、以下の結果が見られました。

  • 原子力、化石燃料由来の通常電力供給が97%から15%にまで低下
  • 再エネ由来の電力供給が3%から85%まで上昇
図3:顧客への電力供給割合(B社)
出所:Liebe, U., Gewinner, J. & Diekmann, A (2021) “Large and persistent effects of green energy defaults in the household and business sectors.”のデータを元にグリーンピース・ジャパンが作成

電力会社Bにおいては、以下の結果が見られました。

  • 原子力、化石燃料由来の通常電力供給が98.8%から11%にまで低下
  • 再エネ由来の電力がが1.2%から89%に増加

また、ドイツ南部の電力会社、 Energiedienst GmbH では、新たに導入される3つの電気料金に関して、再エネ電力を基とする供給システムを同社の標準プランとして提供した際、顧客(家庭・企業)の約94%が、プランの変更を申しでず、結果、再エネを選びました。非再エネ電力の原子力、化石燃料由来の電力供給への転換を望んだのはわずか4.3%でした。

これらの結果から、再エネ由来の電力を普及させるために、「デフォルト・オプション」の効果はとても高いことがわかります。

しかし、この「デフォルト・オプション」は日本ではまったく知られていません。

日本国内でも「共同購入」に加えて「デフォルト・オプション」を参考に、どうしたらみんなが再エネ由来の電気を選ぶかを工夫していくことで、再エネ由来の電力普及、最終的には、気候変動問題の解決に貢献できるのではないでしょうか。

改めて、なぜ再生可能エネルギーが、気候変動の解決につながるかを見ていきましょう。

圧倒的に二酸化炭素排出量の少ない再生可能エネルギー

再生可能エネルギーによる発電方法と従来の発電方法で異なる点の一つとして、二酸化炭素(CO2)の排出量の違いがあります。

電力中央研究所のデータ(図4)を元に、再生可能エネルギーでつくられた電力と、従来の発電方法の一つである火力発電でつくられた電力を比べてみましょう。

図4:電源類型別平均LC-CO2排出量と2000年評価との比較
出典:電力中央研究所(2016)『日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価』p.46より

火力発電の中で最も発電量当たりのCO2排出量が少ない天然ガス(473.5g/kWh)と、再生可能エネルギー中で最も発電量当たりのCO2排出量が多い洋上設置浮体式のウィンドファーム(102.9g/kWh)を比較しても、CO2排出量の差は4倍以上に及びます。

ゼロから分かる気候変動の原因と対策

気候変動の1つの要因として、私たちの生活に不可欠な電気などのエネルギーを作るのに使われる石炭や石油といった化石燃料燃焼によるCO2排出が挙げられます。また、日本のCO2排出の40.1%を占めているのが、発電や精油などのエネルギー転換部門で、その内訳はほとんどが発電です。

出典:<a href='https://www.jccca.org/chart/chart04_04.html' target='_blank' rel=
日本の部門別CO2排出量の割合(2018年度)
出典:全国地球温暖化防止活動センター、温室効果ガスインベントリオフィス

CO2排出量が少ない再生可能エネルギーでつくられた電力を使うことが、地球の温度上昇を防ぎ、さらなる異常気象や海面上昇の防止、結果的に気候変動の解決につながります。

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